桿菌に分類される代表的な細菌の種類とは?②サルモネラ菌と腸炎ビブリオとセレウス菌の具体的な特徴と症状の違い
前回の記事では、桿菌(かんきん)と呼ばれる細長い棒状の形状した細菌のグループに分類される代表的な細菌の種類として、
人間や動物の腸内に生息する常在菌の一種であり、急性胃腸炎の症状を引き起こす代表的な原因菌としても位置づけられることになる大腸菌と呼ばれる細菌の具体的な特徴について考察しましたが、
一般的な細菌性胃腸炎の原因となる桿菌の代表的な種類としては、前回取り上げた大腸菌のほかにも、
サルモネラ菌、腸炎ビブリオ、セレウス菌、ボツリヌス菌、ウェルシュ菌といった桿菌の種類の名を挙げていくことができると考えられることになります。
サルモネラ菌の具体的な特徴とサルモネラ菌を原因とする食中毒や急性胃腸炎の具体的な症状
このうち、はじめに挙げた
サルモネラ菌(salmonella)とは、幅0.5マイクロメートル、長さ2マイクロメートルくらいの大きさの周毛と呼ばれる細胞の表面に複数の鞭毛が生えた構造をした棒状の形状をしたグラム陰性の嫌気性桿菌に分類される細菌の一種であり、
こうしたサルモネラ菌と呼ばれる細菌は、鶏や豚や牛といった様々な動物の腸内に常在するほか、川や下水といった自然界にも広く分布している細菌の種類として位置づけられることになると考えられることになります。
そして、
そうしたサルモネラ菌に分類される細菌のなかでも、人間に対して病原性を示す一部の細菌の種族が、加熱が不十分な状態にある肉や卵といった感染源となる食材や、汚染された食材に触れた手や指あるいは調理器具などを通じた二次汚染によって感染が広がっていくことになり、
こうしたサルモネラ菌を原因とする食中毒や急性胃腸炎においては、38℃から40℃といった高熱を伴うような腹痛や下痢といった消化器系を中心とする症状が引き起こされていくことになると考えられることになるのです。
腸炎ビブリオの具体的な特徴と腸炎ビブリオを原因とする食中毒や急性胃腸炎の具体的な症状
そして、その次に挙げた
腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus、ビブリオ・パラヘモリティカス)とは、幅0.3マイクロメートル、長さ2マイクロメートルくらいの大きさをした細胞の一端に一本の鞭毛が生えた構造をした棒状の形状をしたグラム陰性の嫌気性桿菌に分類される細菌の一種であり、
こうした腸炎ビブリオと呼ばれる細菌は、主に、海洋中を泳ぐ魚介類の体表面に付着していて、そうした海産の魚介類を人間が生で食べるような場合に、生魚に付着している細菌を真水でしっかり洗い流すといった衛生処理が十分でない場合になどに、人間に対して感染する場合があると考えられることになります。
そして、
こうした腸炎ビブリオを原因とする食中毒や急性胃腸炎においては、激しい腹痛を伴い時には血便が混じることもある水様性の下痢や嘔吐といった激しい消化器系の症状が引き起こされることになる一方で、
前述したサルモネラ菌を原因とする急性胃腸炎の場合とは異なり、発熱などの症状については、比較的高熱へと至るケースは少ないと考えられることになるのです。
セレウス菌の具体的な特徴と下痢型食中毒と嘔吐型食中毒の違い
そして、その次に挙げた
セレウス菌(Bacillus cereus、バチルス・セレウス)とは、幅1~1.5マイクロメートル、長さ3~10マイクロメートルくらいの大きさをした細胞の表面に周毛性の鞭毛が生えた構造をした棒状の形状をした比較的大型のグラム陽性の好気性桿菌に分類される細菌の一種であり、
こうしたセレウス菌と呼ばれる細菌は、土壌中などの自然環境において広く生息していて、健康な成人のうち10%の人が腸内にこの細菌を持っている常在菌の一種としても位置づけられることになるのですが、
食品中において大量に増殖したセレウス菌を汚染された食品の飲食などを通じて摂取してしまった場合や、免疫力が低下している場合などには、急性胃腸炎の症状などが引き起こされていくことになると考えられることになります。
そして、
こうしたセレウス菌を原因とする食中毒や急性胃腸炎においては、セレウス菌に分類されている個々の細菌の種類が生産していくことになる毒素のタイプの違いに応じて、
腹痛や下痢などを主症状とする下痢型食中毒と、吐き気や嘔吐などを主症状とする嘔吐型食中毒という二つのタイプに大別されることになると考えられることになるほか、
比較的稀なケースではあるものの、
免疫力が低下した患者などにおいては、衛生面の管理が不十分な場合などに、大量に増殖したセレウス菌が血管内へと侵入することによって、菌血症と呼ばれる血液中での細菌の増殖といった症状が進行していってしまうケースがあり、
そうしたセレウス菌を原因とする菌血症が悪化していってしまった場合には、セレウス菌を原因とする炎症が血液中や全身の臓器において広がっていってしまうことによって、感染性の心内膜炎や敗血症といった重篤な症状へとつながっていってしまうケースや、あるいは、そうしたセレウス菌を原因とする眼内炎によって失明へと至ってしまうケースもあると考えられることになるのです。
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次回記事:桿菌に分類される代表的な細菌の種類とは?③ボツリヌス菌とウェルシュ菌と破傷風菌というクロストリジウム属の三つの細菌
前回記事:桿菌に分類される代表的な細菌の種類とは?①大腸菌の具体的な特徴と急性胃腸炎や尿路感染症の原因菌としての位置づけ
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