D型肝炎ウイルスとB型肝炎ウイルスの関係とは?衛星ウイルスとしての位置づけと重複感染による肝炎リスクの増大

このシリーズの初回から前回までの記事で書いてきたように、ウイルス性肝炎を引き起こす危険性のある代表的なウイルスの種族は、

汚染された水や食品などを介した経口感染によって感染が広がっていくタイプのウイルスであるA型肝炎ウイルスE型肝炎ウイルス

そして、血液などの体液を介した非経口感染によって感染が広がっていくタイプのウイルスであるB型肝炎ウイルスC型肝炎ウイルスD型肝炎ウイルスという二つウイルスのグループへと分類されることになるのですが、

今回取り上げるD型肝炎ウイルスと呼ばれるウイルスの種族は、同じく非経口感染を引き起こすウイルスのグループの内に含まれるB型肝炎ウイルスC型肝炎ウイルスと比べても、かなり変わった特異的な性質を持つウイルスとして位置づけられることになります。

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増殖するために他のウイルスの働きを必要とする衛星ウイルスとしてのD型肝炎ウイルスの位置づけ

まず、

D型肝炎ウイルスは、直径36ナノメートルくらいの小さな球形の構造をしたRNAウイルスの一種として分類されることになるのですが、

こうしたD型肝炎ウイルスと呼ばれるウイルスの種族は、宿主の細胞内に寄生しても自分自身の力だけでは増殖することができず、自己増殖のために他のウイルスが同じ細胞に寄生していることが必要とするサテライトウイルス(衛星ウイルス)としても位置づけられていて、

特に、同じく非経口感染を引き起こす肝炎ウイルスのグループに含まれているB型肝炎ウイルスと協力することによって人体に対して肝炎の症状を引き起こしていくことになります。

つまり、そういった意味では、

こうしたD型肝炎ウイルスと呼ばれるウイルスの種族は、宿主となる細胞のシステムを借りること以外には他のいかなる者の助けも借りずにRNAやDNAといった自らが持つ遺伝子情報に基づいて自己複製を行うというウイルスの定義を厳密な意味においては満たしていない

生物と無生物の中間に位置するウイルスと呼ばれる病原体の種族のなかでも、さらにその存在の位置づけのあり方が不確かな半人前のウイルスの種族として位置づけられることになると考えられることになるのです。

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B型肝炎ウイルスとD型肝炎ウイルスの重複感染による肝炎リスクの増大

しかし、

このように、ウイルス自体の構造が不安定で、持続的な感染と増殖を行うためには常に他のウイルスの助けを必要とする半人前のようなのウイルスであるからとはいっても、

こうしたD型肝炎ウイルスと呼ばれるウイルスは、ウイルス性肝炎における病状の進行のあり方といった観点からは、決して無視できるような存在ではなく、

特に、こうしたサテライトウイルスとしてのD型肝炎ウイルスは、その増殖を助ける酵素を提供するヘルパーウイルスとなるB型肝炎ウイルスと協力していく形で肝細胞への感染を拡大していくことによって、

B型肝炎ウイルスによって引き起こされているウイルス性肝炎の症状を増悪させていくという作用を示していくことになります。

それでは、

こうしたB型肝炎ウイルスD型肝炎ウイルスが共存する形で肝細胞におけるウイルスの感染が拡大していく同時感染重複感染と呼ばれる感染状態が成立してしまっている場合には肝炎の病状の進行のあり方に具体的にどのような違いが生じていくことになるのか?ということについてですが、

まず、

ウイルス感染の急性期においてはB型肝炎ウイルスとD型肝炎ウイルスの同時感染によって、B型肝炎ウイルスによって引き起こされる急性肝炎の発症リスクが高まることになり、

特に、より重篤な肝炎の状態である劇症肝炎を発症するリスクも高まっていくことになるといった点が挙げられることになります。

そして、それに対して、

ウイルス感染の慢性期においては、すでにB型肝炎ウイルスのキャリア(肝炎をまだ発症していないウイルス保有者)の状態にある感染者に新たにD型肝炎ウイルスが重複感染することによって、

すでに感染者の肝細胞内に潜伏していたB型肝炎ウイルスの活動も活発化してしまうことにより、慢性肝炎の発症リスクを高めることになるほか、

その後の慢性肝炎から肝硬変そして肝臓がんといったより重篤で致命的な肝疾患への病状の進行を加速させてしまうといった点が挙げられることになり、

特に、B型肝炎ウイルスの単独感染によって引き起こされる慢性肝炎と比べた場合、B型肝炎ウイルスとD型肝炎ウイルスの重複感染によって引き起こされる慢性肝炎においては肝硬変へと至るまでの病状の進行のあり方が10年ほど加速されてしまうことになると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:ウイルス性肝炎の原因となる代表的な五つのウイルスの種類のまとめ、A型からE型までのウイルスの具体的な特徴と肝炎の症状

前回記事:B型肝炎とC型肝炎における慢性肝炎の具体的な病状の進展のあり方の違いと肝硬変および肝臓がんへの移行の仕組み

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