血清型のタイプに基づく大腸菌の1万通りの種類とは?腸管出血性大腸菌における血清型の分類とO157との関係

前々回前回の記事で書いてきたように、食中毒を引き起こす原因となる病原性大腸菌に分類される具体的な細菌の種類としては、

腸管病原性大腸菌(EPEC腸管侵入性大腸菌(EIEC毒素原性大腸菌(ETEC腸管出血性大腸菌(EHEC腸管凝集性大腸菌(EAECという五つの細菌の種族が挙げられることになります。

そして、

こうした食中毒の原因にもなり得る病原性大腸菌を含む様々な性質を持った大腸菌の種類は、血清型と呼ばれる免疫学的な識別指標の違いに応じて、

まずは、以下で述べるような全部で181種類のタイプへと区分されていくことになります。

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血清型のタイプに基づく細菌の分類のあり方とは?

そもそも、

こうした微生物学における病原体の分類の型として用いられている血清型(serotype、セロタイプ)という言葉は、

細菌の細胞ウイルス粒子の表面などに存在する抗原のタイプに基づく微生物や細菌やウイルスの分類のあり方を意味する言葉であり、

人間の体内に存在する免疫細胞は、

こうした細菌やウイルスといった病原体の表面に存在する抗原のタイプ、すなわち、血清型を識別することによって、

それぞれの病原体に対して特異的に反応して攻撃する抗体と呼ばれるタンパク質を生産していると考えられることになります。

そして、冒頭でも触れたように、

大腸菌と呼ばれる細菌の種族においては、こうした免疫細胞による識別の対象となる主要な血清型のタイプは、

細菌の本体を守る細胞壁に存在する菌体抗原のことを意味するO抗原と呼ばれる抗原のタイプの違いに応じて、

O1からO181まで全部で181種類のタイプに分類されていくことになります。

そして、

こうした細菌の本体部分に存在するO抗原に対して、菌体から外側へと伸びた鞭毛(べんもう)と呼ばれる運動性をもつ小器官の表面に存在する鞭毛抗原のことはH抗原と呼ばれることになるのですが、

こうした細胞の鞭毛部分に存在するH抗原の方は、H1からH56まで全部で56種類のタイプに分類されていくことになります。

つまり、そういった意味では、

こうした大腸菌と呼ばれる細菌の種族は、血清型という観点から分類していくと、より厳密には、上述した菌体抗原であるO抗原鞭毛抗原であるH抗原という二つの抗原のタイプの違いに応じて、

181種類のO抗原のタイプ56種類のH抗原のタイプを掛け合わせた

181×56=10136通り

すなわち、理論上は、全部でおよそ1万通り※にもおよぶ大腸菌の種類へと細分化されていくことになると考えられることになるのです。

ちなみに、上記の構造上は存在可能なO抗原のうちの7種類とHのうちの2種類については現在に至るまでその存在は確認されていないというように、実際に存在する大腸菌のタイプは、上述した理論上の数よりはある程度少なくなると考えられることになります。

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腸管出血性大腸菌における血清型の分類とO157との関係

そして、

前述したように、血清型のタイプに基づく細菌などの微生物の分類のあり方は、免疫細胞における抗原抗体反応のあり方とも深くかかわっていると考えられ、

そういった意味では、

こうした免疫細胞による識別対象となっている細菌の細胞における血清型の違いは、それぞれの血清型に対応した抗原をもつ病原体における人体に対する毒性の強さ抗生物質への耐性といった性質の違いのあり方にも直接的に関係してくることになると考えられることになります。

例えば、

冒頭で述べた五つの大腸菌の種族のなかでも最も重篤な症状を引き起こす危険性の高い細菌の種族として位置づけられている腸管出血性大腸菌(EHECに分類される大腸菌の種族のなかでも、

ベロ毒素(VT毒素)と呼ばれる人体に対する強力な毒性を持った毒素を生産する大腸菌のタイプは、

具体的には、

O1、O2、O5、O18、O25、O26、O55、O74、O91、O103O104、O105、O111、O113、O114、O115、O117、O118、O119、O121、O128、O143、O145、O153、O157、O161、O165、O172

という全部で28種類の血清型のタイプに限られることになると考えられることになるのですが、

このように、

重篤な全身症状を引き起こす危険性のある病原性大腸菌として有名なO157といった細菌の名称も、こうした微生物学における血清型のタイプの分類に基づいて名付けられた名称であると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:腸管出血性大腸菌に分類される代表的な七つの細菌の種類とは?①O26、O103、O121、O145とO104の集団感染の具体例

前回記事:病原性大腸菌の五つの種類と具体的な症状の違いとは?②腸管出血性大腸菌と腸管凝集性大腸菌

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