病原性大腸菌の五つの種類と具体的な症状の違いとは?②腸管出血性大腸菌と腸管凝集性大腸菌

前回の記事で書いたように、病原性大腸菌に分類される具体的な細菌の種類としては、腸管病原性大腸菌腸管侵入性大腸菌毒素原性大腸菌腸管出血性大腸菌腸管凝集性大腸菌という五つの細菌の種族が挙げられることになるのですが、

今回の記事では、

前回取り上げた腸管病原性大腸菌と腸管侵入性大腸菌と毒素原性大腸菌という三つの大腸菌の種族の説明に続いて、

残りの腸管出血性大腸菌腸管凝集性大腸菌という二つの病原性大腸菌の種族における病原菌に感染してから発症に至るまでの潜伏期間や、発症する食中毒における具体的な症状の違いなどについて詳しく考察していきたいと思います。

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腸管出血性大腸菌によって引き起こされる胃腸炎の特徴と細菌の性質

まず、

こうした二つの病原性大腸菌の種族のうちの前者である腸管出血性大腸菌と呼ばれる大腸菌の種族の正式な学名であるEHECenterohemorrhagic Escherichia coli、エンテロ・ヘモラジック・エシェリキア・コリ)という言葉は、

「腸管」のことを意味するentero(エンテロ)と、「出血性」を意味するhemorrhagic(ヘモラジック)、そして、「大腸菌」の正式な学名にあたるescherichia coli(エシェリキア・コリ)という三つの語が結びつくことによってできた言葉であると考えられることになります。

そして、

腸管出血性大腸菌(EHECに分類される具体的な細菌の種類としては、O157O26O111O121といった血清型の大腸菌の種類が挙げられることになるのですが、

こうした腸管出血性大腸菌に分類される細菌は、人間の大腸の内部において増殖していく際に、ベロ毒素と呼ばれる強力な毒性を持った毒素を放出していくことによって、

腸管の粘膜細胞の破壊腎臓の毛細血管の細胞破壊といった重篤な全身症状へとつながる重大な悪影響を及ぼしていくことになると考えられることになります。

また、

腸管出血性大腸菌によって引き起こされる食中毒の具体的な症状の特徴としては、

潜伏期間は3日~5くらいから長い場合には10日以上にまでおよぶことがあり、発症後には、激しい腹痛水様性の下痢といった症状が見られることになり、

その後、発症から1日~2が経過すると、腸管出血性大腸菌が生産するベロ毒素による大腸の粘膜細胞へのダメージが進行することによって、血便あるいは血性下痢と呼ばれる比較的大量の出血を伴う下痢の症状が見られるケースが現れることになります。

そして、その後は、1週間から10日ほどの間に徐々に症状が軽快して回復へと向かっていくケースが多いと考えられることになるのですが、

特に、子供や高齢者といった抵抗力が弱い患者の場合には、腸管出血性大腸菌が生産したベロ毒素が腸管粘膜から血管の内部へと侵入し、血液を介して腎臓の毛細血管の細胞を破壊していくことによって、

急性腎不全赤血球の破壊によって引き起こされる溶血性貧血血小板減少症といったより重篤な全身症状へと進行してしまうケースがあり、

そのようなケースにおいては、直接的に命にかかわるようなケースや、腎不全脳障害といった重大な後遺症が残ってしまうようなケースもあるため、

こうしたO157に代表される腸管出血性大腸菌に分類される大腸菌は、前回と今回の記事のなかで取り上げてきた五つの病原性大腸菌の種族の中でも最も注意が必要な危険な大腸菌の種族として位置づけられることになると考えられることになるのです。

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腸管凝集性大腸菌によって引き起こされる胃腸炎の特徴と細菌の性質

そして、

最後に挙げた腸管凝集性大腸菌と呼ばれる大腸菌の種族の正式な学名であるEAECenteroaggregative Escherichia coli、エンテロ・アグリゲーション・エシェリキア・コリ)という言葉は、

「腸管」のことを意味するentero(エンテロ)と、「凝集性」を意味するaggregative(アグリゲーション)、そして、「大腸菌」の正式な学名にあたるescherichia coli(エシェリキア・コリ)という三つの語が結びつくことによってできた言葉であると考えられることになります。

そして、

こうした腸管凝集性大腸菌(EAECと呼ばれる細菌の種族は、その名の通り、人間の大腸の内部へと入ったのち、大腸の壁に接着したうえで、細菌同士が互いに寄り集まって凝集していくような形で増殖していくことになると考えられることになります。

また、

腸管凝集性大腸菌によって引き起こされる食中毒の具体的な症状の特徴としては、

潜伏期間は7時間~48時間くらいと比較的短く下痢腹痛といった主症状のほかに、嘔吐発熱といった症状なども見られることが多く、

通常の場合は、だいたい3日~1週間くらいで回復へと向かっていくことになると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:血清型のタイプに基づく大腸菌の1万通りの種類とは?腸管出血性大腸菌における血清型の分類とO157との関係

前回記事:病原性大腸菌の五つの種類と具体的な症状の違いとは?①腸管病原性大腸菌と腸管侵入性大腸菌と毒素原性大腸菌

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