病原性大腸菌の五つの種類と具体的な症状の違いとは?①腸管病原性大腸菌と腸管侵入性大腸菌と毒素原性大腸菌

前回の記事で書いたように、食中毒の原因となる代表的な病原菌の種類としては、日本国内にいて発生する食中毒事件における実際の患者数が多い順に、

カンピロバクターウェルシュ菌病原性大腸菌サルモネラ菌ブドウ球菌という全部で五つの細菌の種族の名が挙げられることになるのですが、

このうち、

病原性大腸菌に分類される細菌の種類は、さらに、腸管病原性大腸菌腸管侵入性大腸菌毒素原性大腸菌腸管出血性大腸菌腸管凝集性大腸菌と呼ばれる五つの細菌の種族へ細かく分類されていくことになり、

こうした病原性大腸菌の種類の区別に応じて、病原菌に感染してから発症に至るまでの潜伏期間や、発症することになる食中毒の具体的な症状のあり方などに大きな違いが生じていくことになります。

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腸管病原性大腸菌によって引き起こされる胃腸炎の特徴と細菌の性質

まず、

こうした五つの病原性大腸菌の種類のうちの最初に挙げた腸管病原性大腸菌と呼ばれる大腸菌の種族の正式な学名であるEPEC(enteropathogenic Escherichia coli、エンテロ・パソジェニック・エシェリキア・コリ)という言葉は、

「腸管」のことを意味するentero(エンテロ)と、「病原性」を意味するpathogenic(パソジェニック)、そして、「大腸菌」の正式な学名にあたるescherichia coli(エシェリキア・コリ)という三つの語が結びつくことによってできた言葉であると考えられることになります。

そして、

こうした腸管病原性大腸菌(EPECと呼ばれる細菌の種族は、腹痛や下痢といった症状を引き起こす原因となる大腸菌の種類としては、世界で最初に発見された病原性大腸菌の種族であると考えられていて、

人間の小腸の内部に入っても、積極的に腸管の粘膜組織を破壊したり、毒素を生産したりするようなことはないのですが、細菌が増殖する際に、腸壁にへばりつくような形で微絨毛を破壊してしまうことによって腸内における栄養吸収を阻害してしまうにより、下痢などの症状を引き起こすことになると考えられることになります。

また、

腸管病原性大腸菌によって引き起こされる食中毒の具体的な症状の特徴としては、

潜伏期間は1224時間くらいとかなり短く粘液便や水様便といった下痢腹痛あるいはそうした下痢に伴う脱水症状といった急性胃腸炎の症状を引き起こすもの、

通常の場合は、1日か長くても3日くらいで回復するというように比較的軽症で治癒することになると考えられることになるのですが

その一方で、

こうした腸管病原性大腸菌によって引き起こされる急性胃腸炎は乳幼児における感染例が多いとされていて、成人と比べて抵抗力が弱い乳幼児や子供においては、急激な下痢によって引き起こされる脱水症状が直接的に命にかかわるケースもあるので、

特に、こうした乳幼児における胃腸炎においては注意が必要な病原菌として位置づけられることになると考えられることになるのです。

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腸管侵入性大腸菌によって引き起こされる胃腸炎の特徴と細菌の性質

そして、

その次に挙げた腸管侵入性大腸菌と呼ばれる大腸菌の種族の正式な学名であるEIEC(enteroinvasive Escherichia coli、エンテロ・インベイシブ・エシェリキア・コリ)という言葉は、

「腸管」のことを意味するentero(エンテロ)と、「侵入性」を意味するinvasive(インベイシブ)、そして、「大腸菌」の正式な学名にあたるescherichia coli(エシェリキア・コリ)という三つの語が結びつくことによってできた言葉であると考えられることになります。

そして、

こうした腸管侵入性大腸菌(EIECと呼ばれる細菌の種族は、毒素を生産することはないものの、人間の大腸の内部における粘膜組織の中に潜り込んで、そうした大腸の上皮細胞の内部で増殖を広げていくことにより周辺の細胞を破壊していくことによって、

大腸や直腸の組織を欠損させたり粘膜をただれさせたりする潰瘍性の炎症を引き起こすことになると考えられることになります。

また、

腸管侵入性大腸菌によって引き起こされる食中毒の具体的な症状の特徴としては、

潜伏期間は1日~5くらいと中程度で、腹痛下痢といった主症状のほかにも、発熱吐き気嘔吐けいれんといった症状が引き起こされることもあり、

こうした腸管侵入性大腸菌の感染によって引き起こされる下痢の症状においては、前述したような大腸や直腸の組織における潰瘍性の炎症による出血によって、血液や粘液などが混じった下痢の症状などが引き起こされる場合もあるものの、

多くのケースでは、だいたい2日~3日くらいで回復へと向かっていくことになると考えられることになるのです。

毒素原性大腸菌によって引き起こされる胃腸炎の特徴と細菌の性質

そして、

その次に挙げた毒素原性大腸菌と呼ばれる大腸菌の種族の正式な学名であるETEC(enterotoxigenic Escherichia coli、エンテロ・トキシジェニック・エシェリキア・コリ)という言葉は、

「腸管」のことを意味するentero(エンテロ)と、「毒素生産性」を意味するtoxigenic(トキシジェニック)、そして、「大腸菌」の正式な学名にあたるescherichia coli(エシェリキア・コリ)という三つの語が結びつくことによってできた言葉であると考えられることになります。

そして、

こうした毒素原性大腸菌(ETECと呼ばれる細菌の種族は、その名の通り、人間の小腸の内部へと入って増殖していく際に、エンテロトキシンと呼ばれる毒素を生産することによって、腸管に作用する様々な生体異常を引き起こしていくことになると考えられることになります。

また、

毒素原性大腸菌によって引き起こされる食中毒の具体的な症状の特徴としては、

潜伏期間は12時間~72時間くらいと比較的短く発熱などの症状はあまり引き起こさない一方で、下痢腹痛のほかにも嘔吐などといった激しい消化器系の症状が伴うことが多く、通常の場合は、だいたい1日~3日くらいで回復へと向かっていくことになるものの、

こうした毒素原性大腸菌の感染によって引き起こされる消化器系の症状においては、コレラ患者などに見られるような水様性の下痢の症状などが引き起こされることによって強い脱水症状が見られる場合も多く、

そのような場合には、そうした激しい消化器系の症状による体力の消耗などによって、回復までに10日以上の時間がかかってしまうケースもあると考えられることになるのです。

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次回記事:病原性大腸菌の五つの種類と具体的な症状の違いとは?②腸管出血性大腸菌と腸管凝集性大腸菌

前回記事:食中毒の原因となる代表的な五つの病原菌の種類と具体的な症状の特徴とは?②病原性大腸菌とサルモネラ菌とブドウ球菌

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