前意識と無意識の違いとは?ドイツ語の原語における意味の相違に基づく両者の具体的な特徴の違い、前意識とは何か?①
前々回の記事で書いたように、フロイトの前期の心理学理論においては、主に、意識と前意識と無意識という三層構造において人間の心のあり方が捉えられていくことになります。
そして、
こうした意識と前意識と無意識という三つの心の領域のうち、意識と無意識の両者の間に位置する前意識と呼ばれる心の領域は、一言でいうと、
自覚的な心の領域である意識と、無自覚的な心の領域である無意識の両者の間の境界領域に位置づけられる心の領域として捉えられることになるのですが、
こうした前意識と呼ばれる心の領域は、より具体的にはどのような特徴を持った心の領域であると考えられ、
それは、無意識と呼ばれる言葉の領域とはどのような点において異なった心の領域のことを意味する言葉であると考えられることになるのでしょうか?
前意識と無意識という言葉のドイツ語の原語における意味の違い
前意識(ぜんいしき)とは、1890年代後半において確立された精神分析学と呼ばれるフロイトの心理学理論においてはじめて提唱された意識と無意識の境界領域に存在する心の領域のあり方のことを意味する概念であり、
こうした前意識という言葉は、英語ではpreconscious(プレコンシャス)、ドイツ語の原語においてはVorbewusste(フォアベヴステ)と書き表されることになります。
そして、
こうしたVorbewussteという単語は、もともと、
ドイツ語において「~の前に」を意味する接頭辞であるvor(フォア)と、「意識している状態」のことを意味する形容詞であるbesusst(ベヴスト)が結びつけられることによってできた造語であると考えられるように、
それは、一義的には、人間の心の内に生じる様々な観念や情動が意識へとのぼってきて明確に自覚される前に存在している心の領域のことを意味する言葉として捉えることができると考えられることになります。
それに対して、
無意識という言葉の方は、英語ではunconscious(アンコンシャス)、ドイツ語ではUnbewusste(ウンベヴステ)と書き表され、
この言葉は、ドイツ語において否定を表す接頭辞であるun(ウン)に、「意識している状態」のことを意味するbesusst(ベヴスト)が結びついてできた言葉であると考えられることにるので、
それは文字通り、意識の内には存在しない心の領域のことを意味する言葉として捉えることができると考えられることになるのです。
前意識と無意識の違いとは?現時点では自覚されていないが意識することは可能な心の領域と、意識すること自体が不可能な心の領域
以上のように、
前意識と無意識という二つの言葉は、Vorbewusste(フォアベヴステ)とUnbewusste(ウンベヴステ)と呼ばれるドイツ語の原語における意味の違いに基づいて考えると、
前意識とは、人間の心の内に生じる様々な観念や情動が意識へとのぼって明確に自覚される前に存在する心の領域、すなわち、
現時点においては明確な形では意識されてはいないが、何かちょっとしたきっかけがあって注意が向けられると、すぐに意識の内へと直接のぼってくることができる心の領域のことを意味する言葉であるのに対して、
無意識の方は、人間の心のより深い階層にあって、その領域の内に存在する観念や情動については意識することもできなければ、その存在自体すら直接自覚することはできない心の領域、すなわち、
現時点において意識されていないだけではなく、過去や未来においても意識の内へと直接のぼってくること自体が不可能な心の領域のことを意味する言葉として捉えることができると考えられることになります。
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つまり、
こうした前意識と無意識と呼ばれる二つの心の領域のあり方の具体的な特徴の違いとしては、一言でいうと、
前意識は、現時点においてはいまだ意識されていないだけであって、注意を向ければ意識することが可能な心の領域のことを意味する言葉であるのに対して、
無意識は、現時点だけではなく過去や未来においても半永久的に自覚されることのない意識することが不可能な心の領域のことを意味する言葉であるという点に、
両者の間に存在する根本的な意味の違いを見いだすことができると考えられることになるのです。
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次回記事:前意識は意識と無意識のどちらの方により近い心の領域であると言えるのか?前意識とは何か?②
前回記事:無意識という言葉の三つの意味とは?記述的・局所的・力動的という多義的な意味を持つフロイトによる無意識の定義
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