テトラクテュス(四元数)における次元の進展
テトラクテュス(tetraktys、四元数、四数体)とは、
次の章で図示するように、
上から
点が1つ、
点が2つ、
点が3つ、
点が4つ、
の横並びの段が4段重なり、全体として
ピラミッド型になるように配列されている
図形数のことを指す概念で、
ピタゴラス学派において、
自らの学説と教義のシンボルとなる神聖なる図形であり、
この図形数において、宇宙の構成原理と、
真理のすべてが端的に示されていると考えられていました。
テトラクテュスと音階
まずは、音楽における音階の比として捉えることができます。
「ピタゴラスの哲学の概要」で書いたように、
音楽における主要な音階は、
オクターブ(完全八度)ならば1対2、
完全五度ならば2対3
完全四度ならば3対4
というように、
弦の長さのきれいな比例関係によって構成されていますが、
上記の図を見ればわかる通り、
一段目(最上段)と二段目は1:2、
二段目と三段目は2:3、
三段目と四段目は3:4、
となっています。
つまり、
テトラクテュスの隣接するそれぞれの段の関係が、
オクターブ、完全五度、完全四度という、
完全協和音(perfect consonance、同時に鳴らしたときに、最も音が互いにとけ合って調和して響く2つの音。完全一度(同音)のほかには、完全八度(オクターブ)、完全四度、完全五度のみが該当する。)
をつくり出す音の構成比に、そっくりそのまま一致しているということです。
このように、
オクターブ、完全五度、完全四度という
最も美しい調和した音の響きとされる
完全協和音に代表される音楽のすべては、
テトラクテュスに象徴される数の原理によって導き出されている
と考えることができるのです。
テトラクテュス(四元数)と次元の進展
そして、次に、
テトラクテュスと、現実の世界との関係についてですが、
テトラクテュスは、
現実の世界に存在するあらゆる事物が形成されるための前提となる、
次元(dimension)
を構成する原理にもなっています。
現代数学においては、空間における点の数ではなく、
座標軸の数(つまり、線の数)が次元の数になるので、
上記の図で示したように、
テトラクテュスの一段目(最上段)=点1個=点=0次元、
テトラクテュスの二段目=点2個=線分=1次元、
テトラクテュスの三段目=点3個=平面=2次元、
テトラクテュスの四段目=点4個=立体=3次元、
というように、
テトラクテュスの各段における点の数と、
現代数学上の概念としての次元の数は、
1個ずつ数がずれる関係となっていますが、
両者は、本質的には、全く同じ次元の進展関係を示しています。
つまり、
テトラクテュスは、
点から立体、すなわち、
0次元から我々が生きて生活している3次元へと、
事物が形成され、進展していく、
すべての事物の数学上の形成原理を示しているということです。
時間と空間を統括する原理
以上のように、
テトラクテュス(四元数)が、
事物が形成され進展していく数学上の過程である
次元を統括しているということは、
さらに、それは、
時間と空間をも統括しているということになります。
なぜならば、
空間は立体であり、三次元なので、そのまま、
テトラクテュスの最下段に位置することになりますが、
時間も、通常の客観的時間の概念としては、
過去から未来へと一直線に進む
一次元の概念として捉えられることになるので、
それは、テトラクテュスの2段目に位置することになるからです。
つまり、
テトラクテュスという数の原理が、
次元という概念を介して、
時間と空間をも統括しているという意味においても、
ピタゴラスが考えた通り、
数は万物の始原であり、
すべての存在の根本原理であると捉えることができるということです。
そして、以上のように、
ピタゴラス学派においては、
テトラクテュス(tetraktys)によって、
音楽と、数学、そして、宇宙全体の秩序が一つに結び付けられ、
一体化していると考えられるのです。
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