E型肝炎ウイルスによる食中毒の症状と感染経路、食中毒の原因となる代表的な五つのウイルスの種類と具体的な特徴とは?⑤
前回の記事では、食中毒やウイルス性の胃腸炎の原因となる代表的なウイルスの種類として挙げられることになる
ノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルス、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルスという全部で五つのウイルスの種類のうち、
ウイルス性の肝炎を引き起こすウイルスの種類として位置づけられることになるA型肝炎ウイルスとE型肝炎ウイルスと呼ばれる二つのウイルスのうちの前者であるA型肝炎ウイルスによって引き起こされる食中毒の症状の特徴やウイルスの構造などについて考察してきましたが、
今回の記事では、最後に、
もう一つの食中毒の原因となる肝炎ウイルスとして位置づけられているE型肝炎ウイルスによって引き起こされる食中毒の症状の特徴やウイルスの構造などについて詳しく考察していきたいと思います。
E型肝炎ウイルスにおけるウイルス粒子の構造と感染経路
E型肝炎ウイルス(hepatitis E virus)は、
ウイルス粒子の構造としては、大きさは直径約33ナノメートル程度の正二十面体の形をしていて、
前回取り上げたA型肝炎ウイルスと同様にエンベロープと呼ばれる脂質性の膜を持たないため、アルコールや界面活性剤などの薬品に対する耐性が強く、感染を予防するための消毒を行う場合には、
85℃以上で1分間以上加熱するといった高温による加熱処理などを行うことが必要とされることになります。
また、
こうしたE型肝炎ウイルスの感染経路としては、
A型肝炎ウイルスの場合と同様に汚染された水や食品などを介して感染が広がっていくことが多く、特に、東南アジアやインド、中央アメリカやアフリカといった暑い気候の国や地域を中心に流行が見られることになるほか、
E型肝炎ウイルスの場合には、食品のなかでも、特に、肉類の加熱が不十分なことによって感染が引き起こされるケースが数多く報告されていて、
例えば、
豚レバーの生食、あるいは、加熱が不十分な豚肉やイノシシ肉などが原因となって感染が引き起こされたケースなどが報告されています。
E型肝炎ウイルスによる食中毒の具体的な症状と妊婦における危険性
そして、
こうした汚染された水や食品などを介して人間の体内へと侵入したE型肝炎ウイルスは、消化器官から吸収されて血管内へと侵入したのち肝臓へと到達して増殖をはじめていくことになり、
肝細胞内で増殖していくE型肝炎ウイルスに対抗して、人体の側の免疫細胞が抗体をつくって肝細胞ごと攻撃してしまうことによって、
3~8週間という比較的長い潜伏期間ののちに、
腹痛や発熱、吐き気や嘔吐といった消化器系を中心とする症状に加えて、黄疸や肝腫大といった肝炎に特有の症状などが現れていくことになります。
そして、
こうしたE型肝炎ウイルスによる食中毒および肝炎の症状は、通常の場合、4~6週間程度で回復していくことになる一方で、
比較的稀なケースではあるもののこうしたウイルス性の肝炎の症状が悪化することによって劇症肝炎あるいは肝不全と呼ばれるようなより重篤な症状へと進行していってしまうケースもあり、
E型肝炎の場合には、妊娠中の女性において肝炎の症状の重症化しやすいことが知られていて、特に、妊娠後期の女性が感染した場合には、劇症肝炎に移行するリスクが高まることによって死亡率が20%にもおよぶことがあるといった報告もなされています。
このように、
A型肝炎ウイルスとE型肝炎ウイルスによる食中毒においては、互いにかなり似通った消化器系の症状や肝炎の症状が引き起こされることになるのですが、
E型肝炎ウイルスの場合には、妊婦における死亡率が高く、通常の成人における死亡率の場合でも、だいたいA型肝炎の10倍くらい死亡率が高くなると考えられているので、
そういった意味では、
こうしたE型肝炎ウイルスと呼ばれるウイルスは、前回取り上げたA型肝炎ウイルスよりも、より危険性の高いウイルスの種族として位置づけられることになると考えられることになるのです。
・・・
次回記事:A型肝炎ウイルスとE型肝炎ウイルスの特徴の違いとは?感染源の違いと具体的な肝炎の症状と危険性の比較
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