宇宙人の存在を否定する根拠となる三つの科学的な理論とは?「人間原理」と「レアアース仮説」と「インテリジェントデザイン説」
以前の記事では、宇宙人の存在を肯定する根拠となる三つの科学的な理論について紹介しましたが、
その一方で、それとは反対に、宇宙人の存在を否定する主張についてもその根拠となるいくつかの科学理論のあり方を同様に提示することができると考えられ、
具体的には、「レアアース仮説」と「インテリジェントデザイン説」と「人間原理」といった三つの科学理論のあり方を、そうした宇宙人の存在を否定する根拠となる代表的な学説として挙げることができると考えられることになります。
「レアアース仮説」における希少な存在としての地球と人類の位置づけ
まず、
宇宙人すなわち地球外知的生命体の存在可能性を低く見積もる科学的な仮説としては、レアアース仮説(rare Earth hypothesis)と呼ばれる仮説が挙げられることになりますが、
この仮説においては、地球上における生命の誕生から人類のような知的生命体の進化へと至るまでの過程全体が、銀河系全体においても極めて確率の低い事象として捉えられていくことによって、
生命を育む惑星である地球やその上で知的生命体へと進化した人類といった存在が極めてrare(希少な)存在として捉えられていくことになります。
冒頭で挙げた宇宙人の存在を肯定する科学的な理論についての記事でも取り上げたように、宇宙物理学における地球外知的生命体の存在可能性についての論理的な議論のなかでは、
「一年間に誕生する恒星の数」や「生命の存在が可能な惑星の平均数」といった項目を意味する方程式の各項に適切な数値が代入していくことによって地球外知的生命体の存在確率の論理的な推定を行うドレイクの方程式と呼ばれる数式が用いられることが多いのですが、
レアアース仮説においては、こうしたドレイクの方程式に対して、生命の誕生や知的生命体への進化が進展していくために必要なより細やかな条件が付け加えられていくことによって、
そうした生命誕生の確率や知的生命体への進化の確率などがより少ない数値として見積もられていくことになり、
それによって、地球外文明や地球外知的生命体の存在を否定する傾向を持った科学的な仮説が組み上げられていくことになると考えられることになるのです。
「インテリジェントデザイン説」における偉大なる知性による設計
また、
こうしたレアアース仮説と同様に、生命の誕生や知的生命体の存在を希少で稀な存在として捉える学説のなかで有名な議論としては、インテリジェントデザイン(intelligent design)と呼ばれる考え方が挙げられることになります。
この考え方においては、生命の誕生は、偶然によってはなく、偉大なる知性(intelligence)を持った存在の意志の力に基づく意図的な設計(design)によって必然的にもたらされたものであり、
その後の原始的な生命からの動物や植物、そして、人類へと至る複雑な生命の展開のあり方も、偶発的な変異の積み重ねとしての進化ではなく、そうした偉大なる知性を持った存在による意図的な操作や介入によって必然的に導かれることによって生じていったと説明されることになります。
そして、
こうしたインテリジェントデザイン説における生命を育む星である地球や知的生命体としての人間の存在を偉大なる知性の意志の力と永遠なる計画によって選ばれた唯一無二の存在である捉える考え方からは、通常の場合は、
この宇宙の内において人類以外の知的生命体が偶然に誕生してしまうということを許容しない宇宙人の存在を否定する議論が生じていくことになると考えられることになるのです。
「人間原理」における観測者としての人間の側を原理とする宇宙観
そして、
さらにもう一つ宇宙人の存在可能性を否定する議論へとつながる可能性のある科学理論の存在を挙げるとするならば、
現代物理学の宇宙論における二つの対極的な宇宙の捉え方である宇宙原理と人間原理と呼ばれる二つの基本原理のあり方のうちの後者である人間原理(anthropic principle)の存在が挙げられることになります。
人間原理においては、人間という存在を一つの原理として位置づけることによって、現実の宇宙の構造のあり方は、そうした人間の存在を生み出すような適切な条件を満たす形に限定される必要があるといった考え方が示されたうえで、
そうした観測者としての人間や地球といった特別な存在の側からそのほかのあらゆる存在を含む宇宙全体の構造のあり方が規定されていくことになるので、
そこにおいては、もはや、宇宙の内に知的生命体が存在する確率の計算といった物理的な存在としての宇宙の側から見た単純な統計学的な議論は成立せず、
むしろ、この宇宙が観測可能な宇宙として現に存在している以上、そうした現在の宇宙は人間という一つの知的生命体の種族生み出すのに適切な条件を満たすことによって現実化したと捉えられることによって、
こうした人間原理の宇宙観に基づく一連の議論も、宇宙人の存在を否定する考え方へとつながっていくことになると考えられることになるのです。
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次回記事:人間原理の宇宙観によって地球外知的生命体の存在が否定される理由とは?観測者を生み出す条件が整った瞬間に現実化する宇宙
前回記事:UFOの正体とは何か?②四つの分類と12の区分に基づくUFO現象の合理的な説明のまとめ
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