青竜と黄竜の違いとは?①東方を司る緑色の竜と皇帝を象徴する金色に輝く竜

前回書いたように、

中国神話においては、天の四方の方角を司る神獣のことを意味する四神(しじん)として、

東の青竜(せいりゅう)、西の白虎(びゃっこ)、南の朱雀(すざく)、北の玄武(げんぶ)という四つの霊獣の名が挙げられていくことになるのですが、

その一方で、

中国神話においては、こうした東の方位を司る神獣である青竜とは別に、黄竜(おうりゅう)と呼ばれる存在も、こうした四神と呼ばれる存在に深い関わりを持つ神獣として位置づけられていくことになります。

それでは、

こうした青竜黄竜と呼ばれる存在は、それぞれ具体的にどのような特徴や性質を持つ存在であり、両者の間にはどのような共通点と相違点があると考えられることになるのでしょうか?

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東方を司る方位神としての青竜と中央に座して皇帝の権威を象徴する黄竜

冒頭で述べたように、中国神話における四神の概念においては、一般的に、

東西南北という四つの方位に対して、青竜・白虎・朱雀・玄武という四つの神獣と、青・白・赤・黒という四つの色の概念がそれぞれ結びつけられていくことになると考えられることになるのですが、

こうした四神の概念の大本に存在する陰陽五行説の思想においては、青・白・赤・黒という四つの色に加えて、五つ目の色としてさらにの色が付け足されることになり、

それに伴って、

東西南北という四つの方位の中心、すなわち、中央に座する四神の長とも言える存在として、黄竜(おうりゅう)と呼ばれる存在が位置づけられていくことになります。

詳しくは、以前に皇帝を表す色は何色なのか?②中国と日本における陰陽五行説に基づく皇族専用の色としての黄色の位置づけの記事で書いたように、

こうした陰陽五行説の思想においては、黄色万物の中心に位置する色として、最も序列の高い色へと位置づけられていくことになるのですが、

それによって、こうした黄竜と呼ばれる存在も、最も序列の高い高貴な存在である皇帝の権威を象徴する神獣として位置づけられるようになっていったと考えられることになるのです。

青竜の青は緑色で、黄竜の黄色は金色なのか?

それでは、次に、

こうした青竜と黄竜と呼ばれる神獣たちは、それぞれ具体的にどのような姿をしていたとされているのか?ということについてですが、

まず、

はじめに挙げた青竜については、一般的には、その名の通り、青い色をした竜が大きく口を開いて、長い舌を前に伸ばすような形で描かれているケースが多いと考えられることになります。

しかし、その一方で、

例えば、

唐の時代の中国の詩人である李白の漢詩の中にも、

青山(せいざん)北郭に横たわり、白水(はくすい)東城を遶(めぐ)る」(町の北側には青々とした山々が広がっていて、東側には清らかに澄んだ川の流れが城壁に沿って巡っている)

といった記述があるように、

この場合の、とは、山々に生い茂る木々の葉の色、そして、とは、清らかな川の透き通った水の色のことを指してこうした表現が用いられていると考えられることになります。

つまり、

古代から近世にかけての中国においては、こうしたという漢字が表す色は、もともとは、晴れた日の青空や青い海といった真っ青な色というよりは、どちらかというと緑色に近い色のことを表していたと考えられることになり、

そうしたことを踏まえると、

青竜の体の色も、それは、古代中国における青、すなわち、現代の日本人にとっては、どちらかというと緑色に近い色をした存在として捉えられていたとも考えられることになるのです。

そして、それに対して、

黄竜の方は、その名の通り、黄色または黄土色をした竜であるとされる場合のほかに、

皇帝を象徴する色としての黄色黄金へと連なる色として位置づけられることがあるのと同様に、黄竜金色(こんじき)に輝く竜として描かれているケースも散見されることになります。

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以上のように、

四神に関わる神獣として位置づけられている青竜黄竜と呼ばれる二つの竜の存在の具体的な特徴と、両者の間の性質の違いとしては、

青竜(せいりゅう)は、東方の方角を司る方位神にして、東の方角を守る守護神としても位置づけられているのに対して、

黄竜(おうりゅう)は、四つの方位の中央に座する四神の長とされていて、陰陽五行説との関係から、最も高貴な存在である皇帝の権威を象徴する神獣としても位置づけられるようになっていったと考えられることになります。

そして、

こうした青竜と黄竜のそれぞれの姿については、

青竜は、古代中国における青、すなわち、現代の緑色に近い体の色をしていたとされるのに対して、

黄竜は、黄色黄土色の体の色をした竜、または、金色に輝く竜として描かれているといった点にも、こうした二つの竜の間の具体的な特徴の違いを見いだすことができると考えられることになるのです。

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次回記事:武神と水神としての青竜と黄竜の位置づけのあり方とは?関羽と青竜の関係と黄帝と黄竜との関係、青竜と黄竜の違い②

前回記事:四神と四霊の関係とは?方位を司る四神と吉兆を表す四霊の違いと霊獣や四霊における「霊」の意味

関連記事:皇帝を表す色は何色なのか?②中国と日本における陰陽五行説に基づく皇族専用の色としての黄色の位置づけ

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