レアアース仮説とドレイクの方程式の関係とは?生命誕生の確率と知的生命体への進化の確率を低く見積もる数式の捉え方

前々回の記事で書いたように、地球上における生命の誕生から人類のような知的生命体の進化へと至るまでの過程を銀河系全体においても極めて稀な確率の低い事象として捉えるレアアース仮説は、

地球外知的生命体の存在を肯定する根拠として用いられることが多いドレイクの方程式の考案者として有名なアメリカの天文学者であるフランク・ドレイクらによって主導されたSETI(地球外知的生命体探査)のプロジェクトが頓挫していくなかで生まれた新たな科学的な仮説であると考えられることになるのですが、

それでは、こうしたレアアース仮説と呼ばれる科学理論と、以前の記事でも取り上げた現在の銀河系において存在する人類がコンタクトをとることが可能な地球外文明の数を推定する数式であるドレイクの方程式との間には、

具体的にどのような関係が成立していると考えられることになるのでしょうか?

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ピーター・ウォードとドナルド・ブラウンリーによるドレイクの方程式に対する新たな要素の追加

以前に「ドレイクの方程式の七つの項の具体的な意味」と、地球外文明の存在を肯定する論理的な根拠となる推定の記事などで詳しく考察したように、

NR×f p×n e×f l×f i×f c×L

というドレイクの方程式においては、

N=銀河系内に現存する人類とコンタクトをとることが可能な地球外文明の数
R=銀河系内において一年間に誕生する恒星の数
f p=そうして誕生した恒星のうちの一つが惑星を持つ確率
n e=そうした惑星を持つ恒星系の内に存在する生命の存在が可能な惑星の平均数
f l=生命の存在が可能な条件を備えた惑星において実際に生命が誕生する確率
f i=そうして誕生した生命体が知性を備えた知的生命体にまで進化する確率
f c=そのような知的生命体へと進化した生物が宇宙空間に自らの存在を示す信号を送るような高度な通信技術を持った文明を築き上げる確率
L=そのような高度な通信技術を持った地球外文明が存続し続ける年数

という数式の各項のそれぞれに適切な数値が代入されることによって、銀河系内に現存する人類とコンタクトをとることが可能な地球外文明の数であるNの推定を行うことができると考えられることになるのですが、

例えば、そうした地球外文明の存在を肯定する立場にあったドレイク博士自身は、こうしたRからLまでの数式の各項の数値のそれぞれを、

R11f p0.20.5n e15f l1f i1f c0.10.2L1000100000000と算定することによって、

NR×f p×n e×f l×f i×f c×L

(11)×(0.20.5)×(15)×1×1×(0.10.2)×(1000100000000)

2050000000

すなわち、銀河系内に現存する人類とコンタクトをとることが可能な地球外文明の数20個から多ければ5千万個にもおよぶと結論づけているように、

上記の方程式の各項に代入する具体的な数値を比較的大きく見積もることによって、地球外文明の存在を肯定する議論を展開していると考えられることになります。

そして、それに対して、

冒頭で述べたレアアース仮説(rare Earth hypothesisと呼ばれる新たな概念の提唱者として知られているアメリカの古生物学者であるピーター・ウォード(Peter D. Ward)と、同じくアメリカの天文学者であるドナルド・ブラウンリー(Donald E. Brownlee)自身は、

地球外文明を築き上げることができるような生命の誕生知的生命体への進化が進展していくためには、上記のドレイクの方程式における条件の他にもさらに細かい条件をクリアしていくことが必要であると考え、

例えば、

惑星のなかでもガス状ではなく地球のような岩石を中心として構成される惑星の割合や、地球における月に相当するような大きな衛星を持っている惑星の割合

あるいは、一度生命の存在が可能となる条件を整えた惑星がその後その惑星系の中心に位置する恒星が赤色巨星などへと変化することによって生命の生存条件がキャンセルされてしまう割合なども考慮に入れること必要であると主張していくことになります。

つまり、彼らは、

ドレイクの方程式において挙げられている七つの項にさらにプラスして、知的生命体が誕生するために必要な条件となる新たな要素を追加していくことによって、

そうした地球外文明の担い手となる地球外知的生命体の存在確率をより低く見積もる考え方を提示していると考えられることになるのです。

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生命誕生の確率と知的生命体への進化の確率を低く見積もることによって導かれるレアアース仮説の理論

そして、その一方で、

こうしたレアアース仮説の立場に立つ科学者たちのなかには、上記のドレイクの方程式における七つの項の枠組み自体は保持したままで、そうした地球外文明の存在確率をより低く見積もる議論を提示しているグループもあり、

例えば、

 ドイツの生化学者であるエルンスト・マイヤーや、アメリカの科学史家であるマイケル・シャーマーなどによって提示されているドレイクの方程式のそれぞれの各項に代入されるべき数値の算定に基づくと、

低い推定値の例としては、

R1.51f p×n e×f l10-5f i10-9f c0.2L304と算定することによって、

NR×f p×n e×f l×f i×f c×L

(1.51)×10-5×10-9×0.2×(304)

9.12×10-13

0.000000000000912

となり、銀河系内に現存する人類とコンタクトをとることが可能な地球外文明の数0.000000000000912、すなわち、限りなくゼロに近いとする推定がなされていくことになるのですが、

このように、レアアース仮説に基づくドレイクの方程式への数値の代入においては、

一般的に、特に、f lf iといった部分を含む項目、すなわち、生命誕生の確率や、知的生命体への進化に関わる項目に代入されるべき数値がかなり低く見積もられていくことになると考えられることになります。

つまり、そういった意味では、

こうしたレアアース仮説と呼ばれる地球外文明や地球外知的生命体の存在を否定する傾向を持った科学的な仮説は、

ドレイクの方程式を構成する各項の値のなかでも、特に、生命誕生の確率知的生命体への進化の確率などの部分を少ない数値として見積もることによって導かれる仮説理論として捉えることができると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:フェルミ推定とは何か?論理的推論に基づく統計学的な概算法を用いる様々な問題の具体例と原子爆弾の爆発のエネルギーの算定

前回記事:地質学におけるレアアースと宇宙論におけるレアアース仮説の意味の違いとは?英語のearthの意味の違いに基づく両者の区別

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