地質学におけるレアアースと宇宙論におけるレアアースの違いとは?英語のearthの意味の違いに基づく両者の区別
前回書いたように、レアアース仮説とは、地球外知的生命体の探査計画の失敗などから逆説的な形で人類や地球といった存在の銀河系全体における希少性が証明されていくことによって生まれた一つの科学理論であり、
それは、一言でいうと、宇宙論的視点から人類とその生命を育んだ星である地球の存在を極めて稀な存在として捉え直していく考え方のことを意味する言葉であると考えられることになるのですが、
こうした宇宙物理学や天文学の文脈におけるレアアース仮説という言葉との間で誤解が生じやすい言葉としては、地質学や鉱物学などの分野におけるレアアース(希土類元素)という言葉が挙げられることになります。
それでは、具体的にはいったいどのような経緯から、こうした天文学と鉱物学という互いにまったく異なる学問分野において、同じレアアースという言葉が用いられるようになったと考えられることになるのでしょうか?
地質学にけるレアアース(希土類元素)の具体的な定義とは?
まず、こうした「二つのレアアース」のうちの後者である地質学や鉱物学の意味におけるレアアース(rare earth)とは、
日本語においては希土類元素(きどるいげんそ)、すなわち、地中に含まれるそれらの元素の含有量が比較的希少であると考えられてきた一連の金属系の元素群のことを意味する言葉であり、
具体的には、互いにその化学的性質がよく似た元素として知られている
スカンジウムとイットリウム、そして、ランタノイド元素に分類されるランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム
という全部で17種類の元素がこうした希土類元素すなわち地質学におけるレアアースに分類されることになります。
そして、その後の地質学的な調査の進展によって、
上記の元素のうちの大部分は、実際には地殻の内の一部の領域には比較的多量に存在するそこまで希少価値は高くはない元素であることが明らかとなってしまうのですが、
その一方で、
こうしたレアアースが多く含まれる地層は一部の地域や海底などの採掘自体は困難な領域に位置していることが多く、
それらの元素の一部は半導体レーザーや発光ダイオードあるいは燃料電池といった現代の先進技術を用いた電子産業などにおいて不可欠な金属ともなっていて、
こうしたことから、
レアアースは、チタン、バナジウム、ニオブなどの他の希少な金属の種類と並んで、産業界での流通量や使用量が少ない希少な金属のことを意味するいわゆるレアメタルのうちにも含まれる金属元素としても位置づけられることになるのです。
英語のearth(アース)という単語の意味の違いに基づく地質学におけるレアアースと天文学におけるレアアース仮説の区別
それでは、どうしてこうした地質学におけるレアアースという言葉と同じ「レアアース」と呼ばれる表現が冒頭で述べた天文学におけるレアアース仮説という言葉のうちにも用いられているのか?ということについてですが、
それについては、一言でいうと、
こうした「レアアース」という言葉に含まれているearth(アース)という英単語の具体的な意味の違いのうちにその理由を求めることができると考えられることになります。
正確に言うと、こうした地質学と天文学の両方の学問分野における「レアアース」の表記のあり方は、英語においては若干の違いが見られ、
通常の場合、地質学における希土類元素のことを意味する「レアアース」は、rare earthあるいは rare earth elements(レア・アース・エレメンツ)と総称されるのに対して、
天文学におけるレアアース仮説のことを意味する「レアアース」は、rare Earth あるいはthe rare Earth hypothesis(ザ・レア・アース・ハイポセシス)と表記されることになります。
そして、
こうした英語におけるearth(アース)は、頭文字のeが小文字で書かれている場合には、「地面」や「陸地」や「土」、
さらには、化学などの分野において水に溶けず還元しにくい金属酸化物のことを意味する「土類」(どるい)といった意味を表す言葉としても用いられることになるのですが、
それに対して、
頭文字のeが大文字で書かれてEarth(アース)あるいはさらにそこに定冠詞がついたthe Earth(ディ・アース)といった表記となっている場合には、
それは、天体の一つとしての地球や、人類が住む場所としての地球といった「地球」という意味に限定された表現としてこうした言葉が用いられることになると考えられることになります。
つまり、
地質学におけるレアアース(rare earth)は、earthのeが小文字で書かれているがゆえに、それは地質学や化学における希少な土類すなわち希土類元素のことを意味する言葉として用いられていると考えられることになるのに対して、
天文学におけるレアアース仮説(the rare Earth hypothesis)は、earthのeが大文字で書かれているがゆえに、それは天文学や宇宙物理学における地球という天体の位置づけのあり方に関わる科学理論のことを意味する言葉として用いられているという形で、
こうした二つの学問分野におけるレアアースの意味を区別していくことができると考えられることになるのです。
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次回記事:レアアース仮説とドレイクの方程式の関係とは?生命誕生の確率と知的生命体への進化の確率を低く見積もる数式の捉え方
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