レアアース仮説とは何か?地球外知的生命体の探査計画の失敗の中で生まれた地球の存在を宇宙論的視点から捉え直す新たな理論
前回書いたように、人類にとってはじめての大規模な地球外知的生命体探査のプロジェクトであったオズマ計画においては、
1960年の「オズマⅠ」と1972年の「オズマⅡ」の二回にわたる大型の電波望遠鏡を用いた大規模な電波観測実験を通じても、
地球外知的生命体の存在を立証する人工的な電波の兆候の探知はできないまま観測実験の期間は終了してしまうことになるのですが、
こうした地球外知的生命体の探査を通じて得られた科学的な知見からは、そうした一連のプロジェクトを立案した当時の科学者たちの思惑とはまったく異なる新たな考え方が生じていくことになります。
オズマ計画後のSETIの発展と地球外知的生命体の存在を証明する成果の有無
地球外知的生命体探査(Search for Extraterrestrial Intelligence)すなわちSETIという名称で語られることが多いこうした一連のプロジェクトは、
1972年~1976年の「オズマⅡ」の終了後も、世界各地の天文学者たちの手によって断続的な形ではあるものの引き継がれていくことになり、
オズマ計画以降も、アメリカだけではなく、ロシアや中国、日本なども含めた世界各国において、そうした地球外知的生命体に由来する人工的な電波の観測の試みが続けられていくことになります。
そして、こうしたSETIに関する一連のプロジェクトにおいては、
電波の観測だけではなく、レーザー光線や、放射線の一種であるガンマ線、さらには、カプセルのような人工物の漂流などにも対象を広げて、そうした地球外知的生命体の活動の痕跡についての探査が進められていくことになり、
こうしたSETIのプロジェクト自体は現在においても進行し続けているのですが、いずれにしてもそうした一連の地球外知的生命体についての大規模な探査活動においては、
地球外知的生命体の存在を証明するような明確な成果は得ることができないまま、現在に至っていると考えられることになるのです。
地球外知的生命体の探査計画の失敗のなかで生まれたレアアース仮説
以上のように、
SETIと呼ばれる地球外知的生命体の探査を目的とした一連のプロジェクトは、現在に至るまで明確な成果は得ることができないまま基本的には失敗に近い状態で終わってきたと考えられることになるのですが、
このことは、逆に言えば、この広大な銀河系においても地球外知的生命体の存在を見つけ出すことは極めて困難であり、宇宙全体においても人類のような知的生命体の存在は唯一無二であるか、そうでなくとも極めて希少な存在であるということを示しているとも考えられることになり、
そうした科学的な知見のあり方からは、新たにレアアース仮説と呼ばれる考え方が説得力を持つ議論として提唱されていくことになります。
レアアース仮説(rare Earth hypothesis)とは、その用語自体は、2000年にアメリカの古生物学者であるピーター・ウォード(Peter D. Ward)と、同じくアメリカの天文学者であるドナルド・ブラウンリー(Donald E. Brownlee)が発表した共著の中に出てくる言葉に由来する用語であり、
それは、一言でいうと、
地球上における生命の誕生から人類のような知的生命体の進化へと至るまでの過程を広大な銀河系全体においても極めて確率の低い事象として捉えたうえで、
そうした稀有な存在である人類と、その生命を育んだ星である地球の存在自体を極めて稀な存在、すなわち、レア(rare、稀な)・アース(Earth、地球)として位置づけていく考え方を意味する概念であると考えられることになります。
つまり、
こうしたオズマ計画に始まるSETIすなわち地球外知的生命体探査のプロジェクトにおいては、そうした一連の計画に携わっていた科学者たちの当初の予見とは裏腹に、
広大な銀河系全体においても人類のような知的生命体存在は唯一無二であるか、少なくとも極めて希少な存在であるということが間接的に示されていくことによって、
地球において生命が現れてその生命が人類のような知的生命体に進化するに至るまでの地球上における生命の誕生とその複雑な進化のあり方を宇宙論的な視点から銀河系全体にとっても極めて稀な事象として捉え直していく
レアアース仮説と呼ばれる新たな宇宙物理学の理論が生み出されていくことになったと考えられることになるのです。
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次回記事:地質学におけるレアアースと宇宙論におけるレアアースの違いとは?英語のearthの意味の違いに基づく両者の区別
前回記事:オズマ計画とは何か?その名称の具体的な由来と「オズマⅠ」と「オズマⅡ」の二回におよぶ地球外知的生命体の観測実験
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