心房細動と心房粗動の違いとは?具体的な頻脈の回数の基準と心室への電気的刺激の伝達のされ方の違い

前々回までのシリーズで書いたように、

一般的な不整脈の種類には、頻脈性不整脈徐脈性不整脈、そして期外収縮という三つのタイプがあると考えられることになるのですが、

このうちの頻脈性不整脈のなかでも、全身から血液が流れ込んでくる器官である心房で発生する代表的な頻脈性不整脈としては、心房細動と心房粗動という二つの不整脈の種類が挙げられることになります。

こうした心房細動と心房粗動という二つの不整脈は、それぞれ具体的にどのような不整脈の状態を表す言葉であり、それぞれの不整脈の形態は、互いにどのような点で異なっていると考えられることになるのでしょうか?

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心房細動と心房粗動の違いと具体的な頻脈の回数の基準

前回書いたように、

心房細動の場合は、全身から血液が流れ込んでくる部分である心房部分において高度の頻脈状態が発生し、それによって心房の心筋が細かく震えるようなけいれん状態が引き起こされることになります。

それに対して、

心房粗動の場合も心房細動の場合と同様に、心房部分で頻脈性不整脈が発生することになるのですが、

心房粗動における頻脈の速度は心房細動の頻脈ほどは速くなく、心房の心筋はけいれん状態にまでは至らずに、かなり急速な頻拍ではあるものの、ある程度規則正しい拍動を維持し続けることになります。

具体的に言うと、

心房細動における心房の興奮は一分間に350回から600回程度にも達することになるのですが、

それに対して、

心房粗動における心房の興奮は一分間に250回から350回程度までに抑えられることになります。

したがって、

心房細動では、心房の心筋が伝達される電気的刺激の速度に追いつくことができなくなり、心筋が十分に収縮しきることができずけいれん状態へと陥ってしまうのに対して、

心房粗動においては、心房の心筋は伝達される電気的刺激に追いつくことができなくなるけいれん状態にまでは至らず、かなりの頻拍ではあるものの心房における心筋の収縮自体は維持されると考えられることになるのです。

つまり、

心房細動も心房粗動も共に、全身から血液が流れ込んでくる部分である心房部分において生じる頻脈性不整脈の一種であるものの、

心房細動の場合は、心房部分一分間に350回から600回程度にも達する電気的興奮が伝達される高度の頻脈状態が発生し、それによって心房の心筋が細かく震えるけいれん状態が発生してしまうのに対して、

心房粗動の場合は、心房部分への電気的興奮の伝達は一分間に250回から350回程度までに抑えられ、心房の心筋はけいれん状態にまでは至らずに、頻拍ではあるものの心房における心筋の収縮自体は維持されるという点に、両者の性質の違いがあるということです。

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心房細動と心房粗動における電気的刺激の心室への伝達のされ方の違い

そして、前回も書いたように、

心房細動においては、心房で発生した高頻度の電気的刺激が、心房と心室の境目である房室結節を通過する際に、適当に間引かれる形で伝達されることになるので、

それによって、心房における心筋のけいれん状態が、直接的に、心室における心筋のけいれん状態である心室細動へと陥ってしまう事態は事前に回避されることになるのですが、

それと同様に、心房粗動においても、通常の場合は、心房で発生した電気的刺激が房室結節を通過する際に、一定の割合で電気的刺激の伝達がブロックされることになります。

ただし、心房粗動の場合は、心房細動の場合とは異なり、心室への電気的刺激の伝達のブロックはランダムに発生するわけではなく、より規則的な形で発生することになります。

心房細動の場合は、心房における電気的興奮の発生があまりに高頻度で無秩序な状態に陥ってしまうため、心室への電気的刺激の伝達のブロックもほぼランダムな形となり、心室はやや頻脈傾向になりながら不規則な拍動を繰り返すことになるのですが、

それに対して、

心房粗動の場合は、心房における電気的興奮は高頻度ではあるもの一定の規則的なリズムが保たれた状態で心房結節を通過することになるので、

心室への電気的刺激の伝達がブロックされる頻度も、2回に1回や、4回に1回などと、規則的な形でブロックされていくことになるのです。

そして、

心房粗動の種類は、こうした心房結節を通過して心室へと直接伝わる電気的刺激の割合に応じて、21伝導型心房粗動(心房の電気的興奮が2回に1回の割合で心室へ伝わる心房粗動)や41伝導型心房粗動(心房の電気的興奮が4回に1回の割合で心室へ伝わる心房粗動)などと呼ばれることになるのです。

・・・

以上のように、

心房細動と心房粗動の最大の違いは、一分間に350回~600回程度と、一分間に250回~350回程度という心房部分で生じる電気的興奮の回数の違いにあると考えられることになるのですが、

それでは、心房粗動は心房細動における頻脈の回数が少なくなった不整脈の形態であり、心房粗動は、言うなれば、単に軽度の心房細動の状態であるにすぎないのか?というと、必ずしもそう言い切れるわけではなく、

比較的少ないケースではあるものの、心房で発生した電気的興奮が心室に対して1:1の比率で伝達される11伝導型心房粗動においては、心房細胞の場合とはまた別のリスクが生じる可能性がでてきてしまうことになるのです。

・・・

次回記事1:1伝導型の心房粗動が心房細動よりも危険性が高い理由とは?1:1伝導型心房粗動における心室細動への移行の危険性

前回記事:心室細動と心房細動の違いとは?心房から心室への高頻度の電気的刺激の伝達が回避される仕組み

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