自分の子供を飲み込むクロノスとゼウスによる兄弟姉妹の救出、オリュンポスの神々のクロノスの腹の中からの第二の誕生

このシリーズの前回の記事で書いたように、古代ギリシア神話の物語においては、

カオス(空隙、混沌)から生まれた原初の宇宙において、すべての神々を総べる最初の天界の王位の座についた天空を司る神であるウラノスは、

その後、大地を司る女神であるガイアとの間に生まれた自分の息子であるクロノスを盟主とするティターン十二神と呼ばれる巨神族たちによって王位を奪われ、タルタロスと呼ばれる地の底の牢獄へと幽閉されてしまうことになります。

そして、その後のギリシア神話の物語においては、

こうしたガイア(大地)ウラノス(天空)の間に生まれたティターン神族と呼ばれる古代の神々の盟主であるクロノスが、大地と天空、すなわち、この宇宙全体を総べる第二代の天界の王の座につくことになり、

こうして新たに神々の王の座についたクロノスと、クロノスと同じくティターン十二神のうちの一柱として位置づけられ女神レアとの間にはゼウスポセイドンといった、のちにオリュンポスの神々と呼ばれていくことになるギリシア神話における主要な神々が生まれていくことになるのですが、

こうした神々の王であるクロノスと、その子孫たちにあるオリュンポスの神々との間には、生まれた時、あるいは、生まれる以前から、すでに互いの間に大きな不和と隔たりが生じていってしまうことになります。

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自分の子供たちを飲み込むクロノスとゼウスの命を救った母なる女神レアの機転

ギリシア神話の物語のなかでは、

王位を奪われて地底の牢獄であるタルタロスへと堕とされることになったウラノスが、自分の息子であるクロノスに対して残したとされている「おまえも同じように自分の息子によって自らの王位を奪われることになるだろう」という予言の言葉を恐れたクロノスは、

自分の妻であるレアとの間に生まれたヘスティアデメテルヘラハデスポセイドンといった、のちに、オリュンポスの神々と呼ばれることになる自分の子供たちを生まれた先から次々に飲み込んでいってしまうことになります。

そして、

このことを見て嘆き悲しんだ女神レアは、せめて、自分が最後に身ごもっていた末息子にあたるゼウスのことだけでも守ろうとして、洞窟の中に隠れてゼウスを生み

ギリシア本土の東、エーゲ海の南に浮かぶクレタ島に住んでいたアドラステアイーデーという名の二人姉妹のニンフすなわち精霊や妖精たちのもとにゼウスのことを預けて、

自分の夫であるクロノスには、産着にくるんだ石を赤子と偽って渡して代わりに飲み込ませることによって、自分の息子であるゼウスの命を救うことになるのです。

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ゼウスの最初の妻であるメティスとの出会いとゼウスの兄弟姉妹たちのクロノスの腹の中からの第二の誕生

そして、その後、

地上の世界におけるクレタの地において、ニンフと呼ばれる精霊や妖精たちのもとで成年に達するまでに成長したゼウスは、

自らの父ではあるものの、生まれたばかりの自分の子供たちを飲み込むという非道な行いに手を染めたクロノスの腹の中から、自分のまだ見ぬ兄弟姉妹たちを救い出すために、父と戦うことを心に決め

そのために必要な戦略を練るために、

自分の伯父にあたるオケアノスの娘であり、のちに、ゼウスの最初の妻となることになる知恵に優れた女神として名高い泉の女神であったメティスのもとを訪れることになります。

そして、その後、ゼウスは、

自分の将来の妻となるメティスと協力して、自分の父であるクロノスが飲むネクタルの蜜酒眠り薬を混ぜて飲ませてから、クロノスの背中をたたいて、腹の中に入っていた子供たちを吐き出させることによって、

自分の兄弟姉妹にあたるヘスティアデメテルヘラハデスポセイドンといったのちにオリュンポスの神々と呼ばれる神や女神たちをクロノスの腹の中から救い出すことに成功することになります。

そして、その際、

クロノスの腹の中からは、はじめに、クロノスの妻であったレアが最後に飲ませたゼウスと偽って渡した石が飛び出したのち、クロノスが飲み込んだのと逆の順番、すなわち、子供たちが誕生した順番とは逆に、

ポセイドンハデスヘラデメテルヘスティアという順番で、オリュンポスの神々がクロノス腹の中から飛び出していくことになったため、

この時に、

誕生の順番という意味での兄弟姉妹の序列関係も逆転してしまい、

もともとクロノスに飲み込まれなかった末息子のゼウス天空を司る神としてオリュンポスの神々の頂点に君臨して、

その前に生まれた海を司る神であるポセイドンと、冥界を司る神であるハデスがそうしたゼウスに次ぐ力と権威を持つという、

その後のギリシア神話における神々の序列関係が改めて形づくられていくことになっていったとも考えられることになるのです。

・・・

次回記事:ティタノマキアにおけるティターン神族とオリュンポスの神々の戦いと大地の女神ガイアと巨人たちの加勢によるゼウスの勝利

このシリーズの前回記事:クロノスによるウラノスの王位の簒奪とギリシア神話におけるアダマスの鎌から滴る血から生じた三人の復讐の女神

前回記事:ギリシア神話における季節を司る三女神と運命を司る三女神の関係とは?法と秩序を司る女神テミスを母とする六人姉妹の女神

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