ギリシア神話における季節を司る三女神と運命を司る三女神の関係とは?法と秩序を司る女神テミスを母とする六人姉妹の女神
前々回と前回の記事で書いてきたように、ギリシア神話における法の女神テミスと主神ゼウスとの間には、
季節を司る三女神として位置づけられているディケーとエウノミアーとエイレーネーと呼ばれる三姉妹の女神たちと、
運命を司る三女神として位置づけられているクロートーとラケシスとアトロポスと呼ばれる三姉妹の女神たちが順番に生まれていくことになります。
それでは、
ギリシア神話の物語のなかでは、こうした法と秩序を司る女神として位置づけられるテミスから生まれたとされている、それぞれに三人で一組となった二組の姉妹の女神たちは、
それぞれ具体的にどのような特徴を持った女神たちとして描かれていて、そうした二組の女神たちは互いにどのような関係性のうちに位置づけられていくことになると考えられることになるのでしょうか?
ギリシア神話における季節を司る三女神と運命を司る三女神の具体的な特徴のまとめ
そうすると、まず、こうしたギリシア神話の物語のなかでは、
季節を司る三女神として位置づけられているディケーとエウノミアーとエイレーネーと呼ばれる三姉妹の女神たちは、
自然界における季節の循環と秩序を司る女神として位置づけられている一方で、人間界における社会的あるいは道徳的な秩序のあり方を司る女神としても位置づけられていて、
具体的には、こうしたディケーとエウノミアーとエイレーネーと呼ばれる三姉妹の女神たちは、それぞれ、
ディケー(Dike)は、人間や社会にとって何が正しい行為であり何が悪い行為であるかを決める道徳的な基準となる正義を司る女神、
エウノミアー(Eunomia)は、そうした正義の理念に基づいて人間が暮らす社会の内に築かれていくことになる秩序を司る女神、
エイレーネー(Eirene)は、そうした正義と秩序とに満たされた社会のうちにおいて実現されていくことになる平和を司る女神としても位置づけられていると考えられることになります。
そして、それに対して、
運命を司る三女神として位置づけられているクロートーとラケシスとアトロポスと呼ばれる三姉妹の女神たちは、
そうした運命あるいは宿命と呼ばれる人間の人生の流れのなかにおいて定められているとされている当人の意志によっては変えることのできない一定の秩序のあり方のなかでも、特に、人間の生き死にをめぐる運命、すなわち、人間の寿命や人生の長さを司る女神として位置づけられていて、
具体的には、こうしたクロートーとラケシスとアトロポスと呼ばれる三姉妹の女神たちは、それぞれ、
クロートー(Klotho)は、そうした一人一人の人間の人生の長さを決める運命の糸を紡ぎ出していく役割を担う女神、
ラケシス(Lachesis)は、自分の姉にあたるクロートーが紡いだ運命の糸の長さを測っていくことによって、それぞれの人間の人生にふさわしい適切な運命の糸の長さを決めていく役割を担う女神、
アトロポス(Atropos)は、自分の姉にあたるラケシスによって適切な長さが測られた運命の糸を定められた長さで切り落とすという運命の糸を切る役割を担う女神として位置づけられていると考えられることになるのです。
法と秩序を司る女神テミスと運命と季節を司る六人姉妹の女神との関係
以上のように、
ギリシア神話において、法と秩序を司る女神テミスから生まれたとされる二組の姉妹の女神たちがそれぞれに持っている具体的な特徴としては、
季節を司る三女神として位置づけられているディケーとエウノミアーとエイレーネーと呼ばれる三姉妹の女神たちは、
春夏秋冬といった季節の循環と秩序を司る女神であると同時に、正義と秩序と平和といった道徳的な秩序を司る女神としても位置づけられているのに対して、
運命を司る三女神として位置づけられているクロートーとラケシスとアトロポスと呼ばれる三姉妹の女神たちは、
人間の寿命や人生の長さを定める運命の糸を紡いで、測って、切るという役割を担う運命あるいは宿命と呼ばれる一人一人の人生あるいは生命全体や世界全体における秩序のあり方を司る女神として位置づけられていると考えられることになります。
そして、そういった意味では、
こうしたギリシア神話において季節を司る三女神および運命を司る三女神として位置づけられている二組の姉妹の女神たちは、
後者の運命を司る三姉妹の女神たちが、人間の人生のように、有限で明確な終わりを持つものについて定められた秩序を司る女神たちとして位置づけられているのに対して、
前者の季節を司る三女神たちは、季節の流れのように明確な終わりを持たずに永続的に続いていく、あるいは、際限なく繰り返していくものたちについての秩序を司る女神たちとして位置づけられているといった点において、
こうした二組の姉妹の女神たちは、両方とも、彼女たちにとっての母なる女神として位置づけられているギリシア神話における法と秩序を司る女神テミスと、
互いに深い関わりを持つ女神たちとして位置づけられていると解釈していくことができると考えられることになるのです。
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次回記事:自分の子供を飲み込むクロノスとゼウスによる兄弟姉妹の救出、オリュンポスの神々のクロノスの腹の中からの第二の誕生
前回記事:ギリシア神話における運命を司る三人の女神の具体的な特徴は?クロートーとラケシスとアトロポスが司る人間の寿命と運命の糸
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