ライム病の具体的な特徴と病名の由来とは?スピロヘータに分類されるその他の代表的な細菌の種類①、らせん菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑦
前回の記事では、らせん菌と呼ばれる細菌のグループに区分されることになるスピロヘータと呼ばれる細菌の種族のなかでも、最も有名な細菌の種類にあたる梅毒トレポネーマと呼ばれる細菌の具体的な特徴について詳しく考察してきましたが、
こうしたスピロヘータと呼ばれるらせん菌の種族に分類されることになる代表的な細菌の種類としては、その他にも、
ライム病や回帰熱といった熱病の病原体となるボレリアや、ワイル病の病原体となるレプトスピラ、腸管スピロヘータ症の病原体となるブラキスピラといったらせん菌の種類の名が挙げられることになると考えられることになります。
ボレリアの具体的な特徴とライム病という病名の由来
まず、こうしたボレリアやレプトスピラ、ブラキスピラといったトレポネーマ以外に分類されるスピロヘータの種類のうち、最初に挙げた
ボレリア(Borrelia)とは、幅0.2~0.3マイクロメートル、長さ10マイクロメートルほどの大きさをした細長い螺旋状の形状をしたグラム陰性の嫌気性らせん菌に分類される細菌の種族であり、
こうしたボレリアと呼ばれる細菌の種族によって引き起こされる細菌感染症としては、冒頭でも述べたように、ライム病や回帰熱といった細菌感染症の名が挙げられることになると考えられることになります。
そして、このうちの前者にあたる
ライム病(Lyme disease)とは、北アメリカやヨーロッパ、日本列島の東北部などの地域において、夏から初秋にかけて、山地などの樹木の多い地域において生息するマダニを媒介として感染する細菌感染症であり、
日本国内においては、特に、北海道や長野県といった比較的寒冷な地域の標高の高い山岳地域などで発生が見られる感染症として位置づけられることになります。
そして、
こうしたライム病と呼ばれる感染症の原因菌となるボレリア属に分類されるスピロヘータの種類は、この感染症の名称を冠してライム病ボレリアとも呼ばれることになるのですが、
ちなみに、
こうしたライム病という病名自体の由来は、この感染症を引き起こす原因となる病原体がスピロヘータと呼ばれる細菌の一種であることが明確に判明してから、
アメリカのコネチカット州に位置するライムの町において、この感染症の最初の大きな流行が発生したため、そうしたライムの町の名前をとって「ライム病」という病名がつけられることになったと考えられることになるのです。
ライム病の具体的な症状と流行地域における予防対策の指針
そして、
こうしたライム病と呼ばれる細菌感染症においては、病原体を保有しているマダニに咬まれてから数日から数週間ほどの潜伏期間をおいて、ダニに咬まれた箇所を中心に、遊走性紅斑と呼ばれる環状の紅班が皮膚上に広がっていくことになり、
その後、頭痛や発熱、悪寒や倦怠感、さらには、筋肉痛や関節痛、リンパ節の腫れなどといったインフルエンザなどに似た症状が数週間にわたって続いていくことになります。
そして、その後も放置していると、
全身に広がったライム病ボレリアによって、重度の皮膚症状や関節炎、角膜炎などの眼疾患などのほかに、
心血管系の病変や不整脈、髄膜炎など神経系の病変といった症状が引き起こされることによって命に関わるようなケースもあると考えられることになります。
そして、
こうしたライム病と呼ばれる細菌感染症は、現代においても、
アメリカでは年間30万人、ヨーロッパにおいても年間6~7万人ほどの患者が新たに罹患していると推定されている先進国においても比較的感染者数が多い感染症としても位置づけられることになるため、
特に、こうした地域に旅行などで滞在する場合や、マダニが多く生息している山岳地帯や森林地帯などを訪れる際には、
長袖のシャツや長ズボン、帽子などを着用して、しっかりと肌の露出を防いだうえで、ズボンの裾(すそ)の部分をとめる、あるいは、靴下の中に入れ込んでしまうことによって、衣服の内部へのダニの侵入を防ぐといった予防対策をとるなど、
十分に注意を払うこと必要な細菌感染症の種類として位置づけられることになると考えられることになるのです。
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次回記事:回帰熱の具体的な特徴と病名の由来とは?スピロヘータに分類されるその他の代表的な細菌の種類②、らせん菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑧
前回記事:梅毒トレポネーマの具体的な特徴とラテン語における学名と梅毒という呼称の由来、らせん菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑥
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