桿菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑦レジオネラ菌とジフテリア菌の具体的な特徴と三種混合ワクチン
前回の記事では、桿菌と呼ばれる細菌のグループに分類されることになる代表的な細菌の種類のなかでも、
インフルエンザ菌と軟性下疳菌というヘモフィルス属に分類されることになる二つの桿菌の種類の具体的な特徴について詳しく考察してきましたが、
今回の記事では、それに引き続いて、
レジオネラ菌とジフテリア菌という主に呼吸器系の症状を中心とする細菌感染症の原因となる二つの桿菌の種類の具体的な特徴と、それぞれの桿菌によって引き起こされることになる細菌感染症の具体的な症状のあり方について、順番に考察していきたいと思います。
レジオネラ菌の具体的な特徴と浴槽や加湿器の清掃による予防対策
まず、はじめに挙げた
レジオネラ菌(Legionella)とは、幅1マイクロメートル、長さ2~5マイクロメートルほどの大きさをした鞭毛を持つ棒状の形状をしたグラム陰性の好気性桿菌の一種であり、
こうしたレジオネラ菌と呼ばれる細菌は、自然界においては土壌や水中などに存在するアメーバなどの原生生物や藻類などの細胞内に寄生することによって、多様な環境において生息することができるようになっていると考えられることになります。
そして、
こうしたレジオネラ菌と呼ばれる桿菌は、免疫力が高い通常の健康状態にある人間に対しては、通常の場合は病原性を示すことはないと考えられることになるものの、
乳幼児や高齢者あるいは病人といった免疫力が低下している人などに対しては、浴槽や加湿器の中などにためられたまま長期間放置されている水やお湯の中で繁殖したレジオネラ菌がエアロゾルと呼ばれる微小な水滴などを介して感染を広げていってしまうケースがあると考えられることになります。
そして、
そうしたレジオネラ菌を原因とする細菌感染症においては、主に、レジオネラ肺炎と呼ばれる咳や胸痛、高熱や呼吸困難といった呼吸器系を中心とする症状が引き起こされていくことになり、
日本国内においても毎年50~60人程度の死亡例も確認されている感染予防のための注意が必要な細菌の種類として位置づけられることになるのですが、
こうしたレジオネラ菌による細菌感染症を予防するためには、
定期的に浴槽や加湿器などの内部にためられている水やお湯の入れ替えを行ったうえで、細菌の繁殖の温床となっている汚れやぬめりなどをしっかりこそぎ落としていくように清掃を行っていくことが必要となると考えられることになるのです。
ジフテリア菌の具体的な特徴と三種混合ワクチンによる乳幼児期の予防接種
そして、その次に挙げた
ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae、コリネバクテリウム・ジフテリア)とは、幅0.5~1マイクロメートル、長さ2~5マイクロメートルほどの大きさをした鞭毛を持たない細胞の一端が膨らんだ棒状の形状をしたグラム陽性の好気性桿菌の一種であり、
こうしたジフテリア菌と呼ばれる細菌は、飛沫感染によって扁桃や咽頭や喉頭などといった上気道の粘膜に感染することで呼吸器系を中心とする症状を引き起こしていくことになる、主に、2~6歳くらいの小児に感染することが多い病原菌の種類として位置づけられることになります。
そして、
こうしたジフテリア菌によって引き起こされるジフテリアと呼ばれる細菌感染症においては、ジフテリア菌が産出するジフテリア毒素によって上気道を中心とする粘膜に対して急性の炎症が引き起こされていくことになり、
犬が吠えるような音を特徴とする咳や38度以上の高熱、喉頭部の腫大や気道狭窄といった呼吸器系を中心とする症状が引き起こされていくことになると考えられるのですが、
こうしたジフテリア菌が産出するジフテリア毒素がそうした上気道の領域だけにとどまらずに、全身へと広がっていってしまう場合には、心臓や腎臓や脳、眼の結膜や中耳といった人体の多様な部位に炎症が引き起こされてしまうケースもあると考えられることになります。
そして、特に、
こうしたジフテリア毒素の影響が心臓にまでおよぶジフテリア心筋炎は、不整脈や血圧の降下、顔面蒼白といった症状が引き起こされたのちに、呼吸困難や失神といった症状が現れて心臓麻痺によって死に至るケースもある非常に重篤な症状が引き起こされる危険性のある細菌感染症として位置づけられることになるため、
日本においては、こうしたジフテリア菌と呼ばれる細菌は、百日咳菌と破傷風菌と並んで、三種混合ワクチンなどによる乳幼児期におけるワクチンの予防接種が定められていると考えられることになるのです。
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次回記事:桿菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑧リステリア菌とブルセラ菌の具体的な特徴と「ブルセラ」という名称の由来
前回記事:桿菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑥インフルエンザ菌と軟性下疳菌というヘモフィルス属に属する細菌の具体的な特徴
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