線虫に分類される32種類の代表的な寄生虫の種類のまとめ
人間や動物に対する寄生虫感染症の原因となる様々な線虫の種類や、それぞれの線虫の大きさや形状といった具体的な特徴、さらには、引き起こされることになる寄生虫感染症の具体的な症状といったことについて詳しく考察してきましたが、
今回の記事では、こうした寄生虫性の線虫に分類される代表的な線虫の種類に関する一連の記事の総まとめとして、
回虫・蟯虫・鞭虫・鉤虫・糸状虫という五つの線虫の種族、そして、そのいずれにも分類されないその他の線虫の種族に分類されることになる32種類の代表的な寄生虫の種類について改めてまとめていく形で、体系的に記述していきたいと思います。
線虫に分類される32種類の代表的な寄生虫の種類のまとめ
まず、上記の図において示したように、
線虫と呼ばれる生物の種族のなかでも、人間や動物などの他の生物の体内において寄生生活を営むことによって生きている寄生性の線虫の種族は、病原体としての観点からは、
回虫・蟯虫・鞭虫・鉤虫・糸状虫という五つの線虫の種族と、
そうした五つの線虫の種族のうちのいずれにも分類されていてない広東住血線虫や東洋毛様線虫といったその他の線虫の種族へと区分していくことができると考えられることになります。
回虫に分類される8種類の代表的な寄生虫の種類
そして、詳しくは「回虫に分類される代表的な寄生虫の種類」の記事で書いたように、
こうした五つの線虫の種族のうちの筆頭に挙げられている回虫(かいちゅう)に分類される寄生虫の種類としては、
ヒト回虫やブタ回虫、牛回虫、馬回虫、鶏回虫、犬回虫、猫回虫、そして、クジラ回虫の一種であるアニサキスといった寄生虫の種類の名が挙げられることになります。
そして、このうち、例えば、
ヒト回虫と呼ばれる線虫の場合には、人間の小腸に寄生している回虫によって腸管内の栄養物が奪われてしまうことで腹痛や栄養不良といった症状が引き起こされる場合があると考えられ、
アニサキスと呼ばれる線虫の場合には、本来の宿主ではない人間の体内においてうまく適応することができないアニサキスが人間の胃の中で死滅していく際に、激しい腹痛やおう吐といった症状を特徴とする胃アニサキス症と呼ばれるような急性胃腸炎が引き起こされてしまうケースがあると考えられることになります。
蟯虫に分類される4種類の代表的な寄生虫の種類
そして、次に挙げた蟯虫(ぎょうちゅう)に分類される寄生虫の種類としては、例えば、ヒト蟯虫や馬蟯虫、ネズミ蟯虫、ウサギ蟯虫といった寄生虫の種類の名が挙げられることになります。
そして、
詳しくは「蟯虫と鞭虫の具体的な特徴」の記事で書いたように、蟯虫とは、卵を産むメスの成虫の体長でも8~13ミリメートルくらいまでにしか成長しない乳白色で細長い紡錘形の形状をした小型の線虫の種族であり、
人間に感染するヒト蟯虫の場合には、メスの蟯虫が産卵する際に分泌する粘液性の物質によって、肛門周囲の激しいかゆみなどを特徴とするぎょう虫感染症と呼ばれる寄生虫感染症の症状が引き起こされていくことになると考えられることになるのです。
鞭虫に分類される4種類の代表的な寄生虫の種類
また、その次に挙げた鞭虫(べんちゅう)に分類される寄生虫の種類としては、例えば、ヒト鞭虫やブタ鞭虫、犬鞭虫、ネズミ鞭虫といった寄生虫の種類の名が挙げられることになります。
そして、
詳しくは先ほどと同じ「蟯虫と鞭虫の具体的な特徴」の記事で書いたように、鞭虫とは、成虫が体長3~5センチメートルほどの大きさに成長する細長いムチ状の形状をした線虫の種族であり、
人間に感染するヒト鞭虫の場合には、多数の鞭虫が体内において寄生している場合などには、鞭虫症と呼ばれる腹痛や下痢といった消化器系の症状や、虫垂炎や腸管出血などの症状が引き起こされるケースもあると考えられることになります。
鉤虫に分類される2種類の代表的な寄生虫の種類
そして、詳しくは「鉤虫の名前の由来とズビニ鉤虫とアメリカ鉤虫の具体的な特徴」の記事で書いたように、
その次に挙げた鉤虫(こうちゅう)に分類される寄生虫の種類としては、ズビニ鉤虫やアメリカ鉤虫といった寄生虫の種類の名が挙げられることになります。
そして、このうち、
ズビニ鉤虫の場合は、幼虫が付着した生野菜などを摂取することによって経口的に感染していくのに対して、
アメリカ鉤虫の場合は、土壌中に生息している幼虫が畑仕事などの際に皮膚に付着することなどによって経皮的に感染していくことになり、
どちらの鉤虫によって引き起こされる鉤虫症の場合においても、人間の小腸に寄生した鉤虫が腸内の粘膜に咬着して吸血を行うことによって、栄養不良や鉄欠乏性貧血といった症状が引き起こされていくことになると考えられることになるのです。
糸状虫に分類される5種類の代表的な寄生虫の種類
そして、詳しくは「糸状虫あるいはフィラリアに分類される五つの線虫の種類の具体的な特徴と症状」の記事で書いたように、
その次に挙げた糸状虫(しじょうちゅう)に分類される寄生虫の種類としては、犬糸状虫やバンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、回旋糸状虫、ロア糸状虫といった寄生虫の種類の名が挙げられることになります。
そして、このうち、例えば、
犬糸状虫は、中間宿主である蚊の吸血行為などを介してイヌの心臓に寄生していく犬のフィラリアとしても知られている線虫であり、
成虫となったフィラリアが心臓を圧迫することなどによって血液循環を阻害していくことによって、発作性の咳や胸痛、呼吸困難といった症状が引き起こされるケースがあると考えられ、
バンクロフト糸状虫やマレー糸状虫の場合は、同じく蚊の吸血行為などを介して幼虫が人間のリンパ管やリンパ節を中心とする部位に寄生することよって、リンパ管の閉塞や破壊を引き起こしていくことになり、
それによって、下肢などの部位においてリンパ液の滞留が生じることにより、そうした下肢を中心とする体の末端部分において皮膚や皮下組織が厚くなってゴワゴワとしたゾウの皮膚のようになる象皮病(ぞうひびょう)と呼ばれる症状が引き起こされることになると考えられることになるのです。
動物や植物に寄生するその他の9種類の代表的な寄生虫の種類
そして、詳しくは「広東住血線虫や東洋毛様線虫といったその他の代表的な線虫の具体的な特徴と症状」と「植物に寄生する線虫と豚肺虫や牛肺虫や腎虫などの人間以外の動物に寄生する線虫」の記事で書いたように、
こうした五つの線虫の種族のうちのいずれの種族にも分類されないものの、人間あるいはそれ以外の動物や植物に対する寄生虫感染症の原因となるその他の代表的な線虫の種類としては、
さらに、広東住血線虫、東洋毛様線虫、有棘顎口虫、糞線虫、豚肺虫、牛肺虫、腎虫、根腐れ線虫、根瘤線虫といった寄生性の線虫の名が挙げられることになると考えられることになります。
そして、このうち、例えば、
広東住血線虫(かんとんじゅうけつせんちゅう)は、中間宿主であるナメクジやカタツムリを非加熱の状態で食べた場合などに経口感染する場合があり、
人体の内部へと侵入した広東住血線虫の幼虫が腸壁から血管内へと侵入し、血流を介して中枢神経へと移動していくことによって、寄生虫性の髄膜炎や脳炎といった症状が引き起こされるケースがあると考えられるのに対して、
東洋毛様線虫(とうようもうようせんちゅう)の場合は、消化管に寄生していた線虫の卵が、排泄物などを介して経口感染することがあり、
人体の内部へと侵入した東洋毛様線虫は、小腸の上部に寄生することによって、腹痛や下痢といった消化器系の症状や、全身的な倦怠感などを引き起こするケースがあると考えられることになります。
また、
最後に挙げた根腐れ線虫や根瘤線虫といった線虫のように、動物ではなく植物に対して寄生するタイプの寄生虫の種類もあり、
こうした根腐れ線虫や根瘤線虫といった線虫は、根の細胞自体の壊死や、コブ状の変形が多数生じることによる根の機能低下などを招くことによって、宿主となる植物を枯死させていってしまうことになると考えられることになるのです。
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以上のように、
こうした線虫に分類される32種類の代表的な寄生虫の種類について、一言でまとめると、まずは、回虫・蟯虫・鞭虫・鉤虫・糸状虫という五つの線虫の種族の分類のあり方において、
回虫には、ヒト回虫、ブタ回虫、牛回虫、馬回虫、鶏回虫、犬回虫、猫回虫、アニサキスといった寄生虫の種類が分類され、
蟯虫には、ヒト蟯虫、馬蟯虫、ネズミ蟯虫、ウサギ蟯虫といった寄生虫の種類が分類され、
鞭虫には、ヒト鞭虫、ブタ鞭虫、犬鞭虫、ネズミ鞭虫といった寄生虫の種類が分類され、
鉤虫には、ズビニ鉤虫、アメリカ鉤虫といった寄生虫の種類が分類され、
糸状虫には、犬糸状虫、バンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、回旋糸状虫、ロア糸状虫といった寄生虫の種類が分類されていくことになり、
こうした五つの線虫の種族のいずれにも分類されないその他の代表的な線虫の種類としては、広東住血線虫、東洋毛様線虫、有棘顎口虫、糞線虫、豚肺虫、牛肺虫、腎虫、根腐れ線虫、根瘤線虫といった寄生性の線虫の名が挙げられることになると考えられることになるのです。
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次回記事:フィラリアとフィロウイルスの共通点とは?同じラテン語の語源をもつ寄生虫とウイルスという二つの異なる病原体の種族
前回記事:植物に寄生する線虫と豚肺虫や牛肺虫や腎虫などの人間以外の動物に寄生する線虫、線虫に分類される代表的な寄生虫の種類⑥
このシリーズの初回記事:回虫に分類される代表的な寄生虫とは?ヒト回虫とブタ回虫の関係とアニサキス、線虫に分類される代表的な寄生虫の種類①
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