蟯虫と鞭虫の具体的な特徴とは?線虫に分類される代表的な寄生虫の種類②
前回の記事で書いたように、線虫に分類される多様な寄生虫のなかでも最も一般的な寄生虫の種族としては、ヒト回虫やブタ回虫、あるいは、アニサキスなどに代表されるような回虫と呼ばれる寄生虫の種族の名が挙げられることになるのですが、
線虫に分類されることになる代表的な寄生虫の種族としては、それぞれの寄生虫がもつ全体的な形状や器官の特徴の違いなどに応じて、
そのほかにも、蟯虫と鞭虫と鉤虫そして糸状虫といった寄生虫の種族の名が挙げられることになると考えられることになります。
蟯虫の具体的な特徴と、ぎょう虫感染症の具体的な症状
まず、はじめに挙げた
蟯虫(ぎょうちゅう)とは、オスの成虫の体長は2~5ミリメートル、卵を産むメスの成虫の体長でも8~13ミリメートルくらいまでにしか成長しない乳白色で細長い紡錘形(円柱形の両端が細くなった糸巻きの心棒の形)の形状をした小型の線虫の種族であり、
こうした蟯虫という名称に使われている「蟯」(ぎょう)という漢字は、もともと、「弱い」あるいは「柔らかい」といった意味を表す漢字であるように、
一言でいうと、人間のお腹の中に寄生する柔らかい虫といった意味で、こうした蟯虫という名称が用いられていると考えられることになります。
そして、
こうした蟯虫、より正確には、ヒト蟯虫と呼ばれる寄生虫の種族は、人間に対してのみ感染するヒトに固有の寄生虫の種族であり、
蟯虫の卵が付着した手や汚染された食品などを介して虫卵を飲み込んでしまうことによって、特に、人間の幼児の腸内に寄生していくことになります。
そして、
体内へと侵入した蟯虫の卵は、十二指腸において幼虫へと孵化したのち、小腸から大腸へと続く盲腸の部分の周辺で成虫へと成長していくことになり、
産卵できる状態になったメスの蟯虫が、宿主となる人間が眠っている間に結腸から直腸を下って肛門の外へと這い出してきて、肛門周囲に卵を産み付けることによって増殖していくことになるのですが、
このとき、メスの蟯虫が産卵する際に分泌する粘液性の物質によって、肛門周囲の激しいかゆみなどを特徴とするぎょう虫感染症と呼ばれる寄生虫感染症の症状が引き起こされていくことになると考えられることになるのです。
鞭虫の具体的な特徴と、鞭虫症の具体的な症状
そして、それに対して、次に挙げた
鞭虫(べんちゅう)とは、成虫が体長3~5センチメートルほどの大きさに成長する細長いムチ状の形状をした線虫の種族であり、
こうしたと鞭虫呼ばれる寄生虫の種族は、主に、熱帯や亜熱帯の多雨地帯に広く生息していて、虫卵によって汚染された食品などを介して経口的に感染を広げていくことになると考えられることになります。
そして、
人間の体内へと侵入した鞭虫の卵は、小腸において幼虫へと孵化したのち、盲腸へと移動したうえで、
細長い糸状の形状をした自分の体の先端部分をムチのようにしならせて腸壁の粘膜の間に差し込むことによって寄生生活を営んでいくことになると考えられることになります。
そして、
こうした鞭虫と呼ばれる寄生虫が体内に寄生している状態でも、通常の場合は無症状のまま経過していくケースが多いと考えられることになるのですが、
その一方で、
同時に多数の鞭虫が体内において寄生している場合などには、鞭虫症と呼ばれる寄生虫感染症の症状が引き起こされることによって、腹痛や下痢といった消化器系の症状や、
場合によっては、虫垂炎などの症状や、腸壁に差し込まれた鞭虫の先端部分が腸管粘膜を傷つけることによって腸管出血などの症状が引き起こされるケースもあると考えられることになるのです。
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次回記事:鉤虫の名前の由来とズビニ鉤虫とアメリカ鉤虫の具体的な特徴、線虫に分類される代表的な寄生虫の種類③
前回記事:回虫に分類される代表的な寄生虫とは?ヒト回虫とブタ回虫の関係とアニサキス、線虫に分類される代表的な寄生虫の種類①
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