フィラリアとフィロウイルスの共通点とは?同じラテン語の語源をもつ寄生虫とウイルスという二つの異なる病原体の種族

以前に「糸状虫あるいはフィラリアに分類される五つの線虫の種族」の記事で詳しく書いたように、線虫に分類される生物の種族の中には、糸状虫あるいはフィラリアと呼ばれる細長い糸状の形状をした寄生虫の種族の名が挙げられることになります。

そして、その一方で、こうしたフィラリアと似通った名称で呼ばれている病原体の種族としては、そのほかにも、フィロウイルスと呼ばれるウイルスの種族の名も挙げられることになるのですが、

こうしたフィラリアフィロウイルスと呼ばれる二つの病原体の種族は、寄生虫ウイルスという互いに性質の大きく異なったまったく別々の病原体の種族として位置づけられている一方で、

こうした二つの病原体の種族は、その独特の形態的な特徴といった類似点から、同じラテン語の語源をもつ名称によって呼び表されている病原体の種族としても位置づけられることになると考えられることになります。

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フィラリアとフィロウイルスの語源となったラテン語の言葉とローマ神話の女神がつむぐ運命の糸

まず、

こうしたフィラリア(filariaフィロウイルス(filovirusという病原体の名称は、

どちらもラテン語におけるfila(フィーラ)あるいはfilo(フィーロー)という単語に語源を持つ言葉であると考えられることになります。

そして、ラテン語において、

filo(フィーロー)という言葉は、「糸をつむぐ」という意味を表す動詞であるのに対して、

fila(フィーラ)という言葉は、こうしたラテン語におけるfiloという動詞の名詞形にあたるfilum(フィールム)という単語の複数形にあたる言葉であり、

ラテン語において、こうしたfilumあるいはその複数形にあたるfila(フィーラ)という言葉は、「ひも」「糸状のもの」あるいは「楽器の弦」

さらには、ローマ神話における運命の女神であるパルカがつむぐ「運命の糸」「人間の天命」のことを意味する言葉としても位置づけられていくことになります。

そして、つまりは、

こうしたラテン語において「糸をつむぐ」あるいは「糸状のもの」ことを意味するfilo(フィーロー)やfila(フィーラ)といった言葉が直接的な語源となることによって、

糸やひものような非常に細く長い形状をした病原体のことを意味する呼び名として、こうしたフィラリア(filariaフィロウイルス(filovirusという名称が用いられるようになったと考えられることになるのです。

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フィラリアとフィロウイルスの語源となったラテン語の言葉とローマ神話の女神がつむぐ運命の糸

それでは、

こうしたフィラリアフィロウイルスと呼ばれる二つの病原体の種族は、それぞれ具体的にはどのような特徴をもつ病原体であり、それぞれの病原体によって具体的にどのような感染症の症状が引き起こされることになるのか?ということについてですが、

前者のフィラリアあるいは糸状虫と呼ばれる寄生虫の種族に分類される病原体のうち、最も有名なものとしては、

犬フィラリアあるいは犬糸状虫と呼ばれる犬の心臓に寄生することで有名な成虫の大きさ体幅が11.5ミリメートルほど体長が1230センチメートルくらいに成長する線虫の種類が挙げられることになります。

そして、こうした犬フィラリアと呼ばれる寄生虫は、ヤブカ(藪蚊)イエカ(家蚊)といった蚊を媒介として、犬だけではなく人間に対して感染するケースもあり、

そうしたケースでは、フィラリアが心臓やその周囲の血管へと寄生することによって、末梢血管の閉塞などを引き起こしてしまうことがあり、

そうしたフィラリアが引き起こす血管の閉塞によって、胸痛、あるいは、血痰喀血呼吸困難といった症状が引き起こされることになるほか、心臓の近くで形成された血栓が肺や脳といった部位に運ばれていってしまうことによって、肺塞栓脳梗塞といった重篤な症状が引き起こされてしまうケースもあると考えられることになるのです。

そして、それに対して、

後者のフィロウイルスと呼ばれるウイルスの種族に分類される病原体のうち、最も有名なものとしては、

エボラウイルスと呼ばれる致死率が高い凶悪な感染症の代表格として有名なエボラ出血熱の原因となるウイルスの名が挙げられることになるのですが、

こうしたエボラウイルスの感染においては、ウイルスの感染が血管の内皮細胞や、単球マクロファージといった免疫細胞も含む全身の細胞へとおよんでいくことによって、血管内の炎症血液凝固反応などを含む免疫反応の異常な亢進が進んでいってしまうことになり、

そうした血管内における血液凝固反応の亢進によって、全身の血管において微小な血栓の形成血管の閉塞が引き起こされていくことによって、

口腔歯肉結膜皮膚そして消化管などといった全身において出血や下血といった症状が現れる出血熱に特有の症状が引き起こされていくことになると考えられることになるのです。

そして、

こうしたエボラウイルスを含むフィロウイルス科に属するウイルスの大きさは、ウイルスの幅にあたる直径は80ナノメートルであるのに対して、ウイルス全体の長さは14000ナノメートルもの長さにおよぶことになるのですが、

ちなみに、1ナノメートルとは100万分の1ミリメートルにあたる長さの単位であり、フィロウイルスの体幅である80ナノメートルはミリメートルに直すと0.00008mmとなるので、

こうしたフィラリアフィロウイルスと呼ばれる二つの病原体の種族は、それぞれの病原体の幅や太さといった点で比べると、

直径0.00008mmのウイルスであるフィロウイルスの大きさは、直径1mmの寄生虫であるフィラリアの1万分の1ほどの大きさ非常に微小な構造をした病原体であると考えられることになるのです。

ミクロの世界とマクロの世界に生きる二つの糸状の病原体の種族

以上のように、

こうしたフィラリアフィロウイルスと呼ばれる二つの病原体の種族は、

前者のフィラリア直径1mmという肉眼でも十分に判別可能なマクロの世界で生きている病原体であるのに対して、

後者のフィロウイルス直径0.00008mmという電子顕微鏡でなければ判別の難しいミクロの世界に存在する病原体であるというように、両者にはその大きさや病原体としての構造自体に大きな違いがあるとはいえ、

こうしたフィラリアフィロウイルスという二つの病原体の種族のことを意味する名称は、両方とも、

ラテン語においてローマ神話の女神がつむぐ運命の糸にも通じる「糸をつむぐ」あるいは「糸状のもの」ことを意味するfilo(フィーロー)やfila(フィーラ)といった言葉を共通の語源としていて、

こうした二つの病原体の種族は、どちらも人間の体内において、血管の閉塞といった現象を引き起こすことによって、血痰や喀血あるいは出血熱といった出血性の症状を含むような人間にとって致命的な症状を引き起こすことになるといった点などにおいて、

互いに不思議と似通った特徴をもつ病原体の種族としても捉えることができると考えられることになるのです。

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次回記事:鉤虫(カギムシ)と鉤虫(コウチュウ)の違いとは?肉食性の有爪動物と寄生性の線形動物の具体的な特徴と両者の名前の由来

前回記事:線虫に分類される32種類の代表的な寄生虫の種類のまとめ

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