植物に寄生する線虫と豚肺虫や牛肺虫や腎虫などの人間以外の動物に寄生する線虫、線虫に分類される代表的な寄生虫の種類⑥
前回までの一連の記事では、回虫・蟯虫・鞭虫・鉤虫・糸状虫に分類されることになる代表的な寄生性の線虫の種類と、
広東住血線虫、東洋毛様線虫、有棘顎口虫、糞線虫といった人間に対する寄生虫感染症の原因となるそのほかの代表的な線虫の種類について順番に取り上げてきましたが、
今回の記事では、こうした寄生性の線虫の種類やその具体的な特徴や症状について考察してきた一連のシリーズの最後として、
豚肺虫と牛肺虫と腎虫といった豚や牛、馬や犬といった動物に寄生する線虫の種族のなかでも、比較的人間との関係性が深い線虫の種類、
あるいは、根腐れ線虫や根瘤線虫といった植物に寄生する線虫の種族についても、そのなかの代表的な線虫の種類について取り上げていきたいと思います。
豚肺虫と牛肺虫と腎虫の具体的な特徴と寄生虫感染症の具体的な症状
まず、はじめに挙げた豚肺虫と牛肺虫と呼ばれる二つの寄生虫の種類は、
豚肺虫(ぶたはいちゅう)は、豚の気管支に寄生する成虫の大きさが体長1~6センチメートルくらいの線虫の一種であるのに対して、
牛肺虫(うしはいちゅう)は、牛の気管支に寄生する成虫の大きさが体長3~5センチメートルくらいの線虫の一種であり、
どちらの線虫の場合も、消化管に寄生していた線虫の卵が、排泄物などを介して経口感染することによって感染を広げていくことになると考えられることになります。
そして、
宿主となる動物の体内において卵から孵化した豚肺虫や牛肺虫の幼虫は、腸壁から血管内へと侵入したうえで、血流を介して肺の毛細血管から気管内へと侵入して多数の卵を産み付けていくことによって、
咳や発熱、さらには、気管支炎や肺炎といった症状を引き起こしていくことになると考えられることになるのですが、
このうち、前者の豚肺虫については、
豚と人間の間では、内臓の配置なども含めた体内の構造は非常によく似通っているため、比較的まれなケースではあるもの人間に対して寄生してしまうケースもあると考えられ、
そうした場合には、人間に対しても、そうした豚肺虫を原因とする寄生虫性の気管支炎や肺炎の症状が引き起こされてしまうケースもあると考えられることになるのです。
・・・
そして、
こうした豚や牛、馬や犬といった家畜や人間と近しい関係にある動物の体内に寄生する代表的な線虫の種類としては、
上述した豚肺虫と牛肺虫と呼ばれる牛や豚の気管や肺に寄生する線虫の種族や、このシリーズの第四回の記事でも取り上げた犬糸状虫または犬のフィラリアとしても知られている犬の心臓に寄生する線虫の種族のほかに、腎虫と呼ばれる線虫の種類の名も挙げられることになります。
腎虫(じんちゅう)とは、犬やイタチなどの動物の腎臓に寄生する成虫の大きさが体長15~100センチメートルくらいに成長する線虫の一種であり、
こうしたと腎虫呼ばれる寄生虫は、中間宿主にあたるナマズ(鯰)やカジカ(鰍)といった淡水魚やカエルなどの両生類をこれらの動物が捕食した場合に経口感染する場合があると考えられることになります。
こうした犬などの動物の体内へと侵入した腎虫の幼虫は、これらの動物の腎臓のなかでも尿管との接続部分にあたる腎盂(じんう)と呼ばれる部位を好んで寄生していくことになり、
そのまま無症状のままの状態で成虫へと成長していくケースも多いものの、そうした腎虫呼ばれる寄生虫が成虫へと成長していく過程において、寄生部位が破壊されてしまうことによって出血性あるいは化膿性の腎炎などの症状が引き起こされるケースなどもあると考えられることになるのですが、
こうした腎虫呼ばれる寄生虫は、比較的まれなケースではあるものの、上述したナマズやカエルといった腎虫の中間宿主となる動物の肉を非加熱の状態で食べた場合などには人間に対しても感染する場合もあると考えられ、
その場合には、人間における寄生虫性の腎炎や腎盂炎などの原因となるケースもあると考えられることになるのです。
根腐れ線虫や根瘤線虫などの植物に寄生する線虫の種族
また、こうした線虫に分類される寄生虫の種族のなかには、
最後に挙げた根腐れ線虫や根瘤線虫といった線虫のように、動物ではなく植物に対して寄生するタイプの寄生虫の種類も挙げられることになり、
このうち、
根腐れ線虫(ねぐされせんちゅう)は、サツマイモやジャガイモ、カブ、ダイコン、ゴボウ、ニンジン、レタス、イチゴといった数多くの作物の種類に幅広くに寄生する成虫の大きさが体長0.5~0.8ミリメートルくらいの微細な線虫であり、
こうした根腐れ線虫と呼ばれる寄生虫は、宿主となる植物の根の組織内を移動しながら産卵と増殖を繰り返していくことによって、
最終的には、根の細胞を壊死させて崩壊させていき、植物を枯死させていってしまうことになると考えられることになります。
また、もう一方の
根瘤線虫(ねこぶせんちゅう)の方は、キュウリやトマト、ナス、ピーマン、ニンジン、インゲン、メロンといったイネ科を除く多くの作物の種類に寄生する成虫の大きさが体長1~1.5ミリメートルくらいの微小な線虫であり、
こうした根瘤線虫と呼ばれる寄生虫は、宿主となる植物の根の表皮から侵入して、そうした植物の根の内部に定着して寄生生活を営むことによって、寄生された植物の根の組織細胞をコブ状に肥大化させていくことになり、
そうした根瘤線虫を原因とするコブ状の変形が多数生じていく場合には、根の機能低下により宿主となる植物体の生育が阻害されていくことによって、植物が枯死していってしまうケースもあると考えられることになるのです。
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次回記事:線虫に分類される32種類の代表的な寄生虫の種類のまとめ
前回記事:広東住血線虫や東洋毛様線虫といったその他の代表的な線虫の具体的な特徴と症状、線虫に分類される代表的な寄生虫の種類⑤
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