ヒスタミンによる食中毒が起こる具体的な仕組みと症状の特徴とは?ヒスタミン生成菌によるアミノ酸からのヒスタミンの合成
前回の記事で書いたように、人体にとって有害な化学物質によって引き起こされることになる化学性食中毒の原因となる代表的な原因物質の種類としては、
食品が腐敗していく際に生成されるヒスタミンやアミンといった化学物質の存在が挙げられることになるのですが、
それでは、
こうしたヒスタミンやアミンといった化学物質によって引き起こされる食中毒においては、具体的にどのような仕組みによって食中毒の原因物質が生成されていくことになると考えられ、そうした食中毒における症状の特徴としてはどのような点が挙げられることになると考えられるのでしょうか?
食品の腐敗においてヒスタミンやアミンなどの化学物質が生成されていく具体的な仕組み
まず、
食品の鮮度が低下していって、やがて腐敗が生じていくことになる際には、
そうした食品の表面や内部にもともと存在している様々な細菌の活動によって、食品中に存在しているアミノ酸から、メチルアミンやヒスタミン、チラミン、プトレシン、トリプタミン、カダベリンといった腐敗臭などの原因となる様々な物質が生成されていくことになり、
こうした食品が腐敗していく際の細菌の活動によってアミノ酸から生成されることになる様々な化合物は、アミン(amine)と呼ばれる化学物質として総称されることになります。
そして、
こうした食品が腐敗していく際にアミノ酸から生成されるアミンと呼ばれる化合物のグループのなかでも、特に、食中毒の症状を引き起こす代表的な化学物質の種類としては、ヒスタミン(histamine)と呼ばれる化学物質の名が挙げられることになるのですが、
こうしたヒスタミンと呼ばれる化学物質は、必須アミノ酸の一種であるヒスチジンから合成されることになるため、
もとからこうしたヒスチジンと呼ばれるアミノ酸の量が多く含まれている生魚などの生鮮食品、そのなかでも特に、マグロやカツオ、サバやイワシ、ブリやアジといった赤身魚などにおいて、そうしたヒスタミンの生成が早く進みやすくなると考えられることになります。
そして、具体的には、
そうしたマグロやサバといった魚の切り身などの内にもともと存在していた腸内細菌や海洋由来の細菌などがヒスタミン生成菌としての役割を担うことによって、
時間の経過と共に、そうした食品の内部においてヒスタミン生成菌によるヒスタミンの生産と蓄積が進行していくことになり、
そうした食品中におけるヒスタミンの蓄積が一定量を超えてしまうと、そうしたヒスタミンが多く含まれる食品を摂取した際に、ヒスタミンを原因物質とする食中毒の症状が引き起こされてしまうことになると考えられることになるのです。
ヒスタミンを原因とする食中毒の具体的な症状と予防方法
そして、
こうしたヒスタミンと呼ばれる化学物質は、食中毒だけではなく、アレルギー反応やアナフィラキシーショックの直接的な原因となる化学物質の一つでもあるため、
ヒスタミンを原因とする食中毒においては、通常の場合、
下痢や腹痛、嘔吐や発熱といった一般的な食中毒の症状のほかにも、頭痛や舌や顔面の腫れ、蕁麻疹(じんましん)といったアレルギー反応のような症状が引き起こされることになると考えられることになります。
また、
こうしたヒスタミンと呼ばれる化学物質は、比較的熱に強い構造をしていて、通常の調理程度の加熱では分解することができないと考えられることになるので、
ヒスタミンを原因とする食中毒の発生を未然に防止するためには、
毒素型の細菌性食中毒における感染予防の場合と同様に、まずは、そうしたヒスタミンといった化学物質を産出する原因菌となるヒスタミン生成菌の増殖を予防していくことが重要と考えられることになり、
そのためには、
生魚を中心とする生鮮食品を保管しておく際には、常温ではなく低温状態、できれば、あらゆるヒスタミン生成菌の活動がほぼ停止することになるマイナス20℃以下の冷凍状態で保管しておくことが望ましいと考えられることになるのです。
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次回記事:ヒスタミンによる食中毒が細菌性食中毒ではなく化学性食中毒に分類される理由とは?毒素型の細菌性食中毒との特徴の違い
前回記事:化学物質による食中毒の原因となる代表的な原因物質の種類とは?有害な化学物質の混入を原因とする食中毒の代表的な事例
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