食中毒の原因となる寄生虫の代表的な種類とは?②クリプトスポリジウムとサイクロスポラとランブル鞭毛虫の特徴と予防方法
前回の記事で書いたように、食中毒の原因となる寄生虫の代表的な種類としては、まずは、厚生労働省の食中毒統計の病因物質の項目のなかでも挙げられている
アニサキスとクドアとサルコシスティスという三種類の寄生虫の名が挙げられることになるのですが、
こうした食中毒の原因となる寄生虫の種類としては、その他にも、クリプトスポリジウムやサイクロスポラといった原虫や、ランブル鞭毛虫などに代表されるような寄生虫の種族の名も挙げることができると考えられることになります。
クリプトスポリジウムが原因となる食中毒の症状の特徴と感染の予防方法
まず、
最初に挙げたクリプトスポリジウム(Cryptosporidium)とは、直径5マイクロメートル(1000分の5ミリメートル)ほどの楕円形の形状をした原虫(げんちゅう)の一種に分類される寄生虫の種族ということになるのですが、
ここで述べられている原虫とは、一般的に、細菌などとは異なり核や細胞質といった構造を持った真核細胞生物に分類される単細胞性の微生物のことを指す言葉であり、
現代においては、特に、そうした真核生物に分類される単細胞生物のなかでも寄生性や病原性を示す微生物の種類として、こうした原虫という言葉が用いられることになると考えられることになります。
そして、
こうしたクリプトスポリジウムと呼ばれる原虫の種族は、人間や動物の小腸を中心とする消化器官に寄生して増殖していくことによって、クリプトスポリジウム症と呼ばれる感染症を引き起こすことになるのですが、
こうしたクリプトスポリジウム症においては、原虫が体内に寄生してから3~10日ほどの潜伏期間をおいて、激しい水様性の下痢や腹痛といった消化器系を中心とする症状が引き起こされることになり、
通常の場合は、数日~2週間くらいで自然に治癒していくことになると考えられることになります。
また、
こうしたクリプトスポリジウムと呼ばれる原虫は、汚染された水や食品などを介して感染を広げていくことになり、特に、水道水などの水源が汚染されることによって集団感染を引き起こしてしまうケースがあるため、
予防方法としては、水道施設や水源となる河川の衛生的な管理や、そうした衛生上の懸念のある地域において水を飲用として用いる必要がある場合には、いったん沸騰させてから飲むといった処理を行うことによって、原虫を完全に死滅させることができると考えられることになるのです。
サイクロスポラが原因となる食中毒の症状の特徴と感染の予防方法
そして、
その次に挙げたサイクロスポラ(Cyclospora)とは、直径8~15マイクロメートルほどの球形をした原虫の一種であり、
こうしたサイクロスポラと呼ばれる原虫の種族は、前述したクリプトスポリジウムの場合と同様に、人間の小腸を中心とする消化器官に寄生して増殖していくことになります。
そして、
こうしたサイクロスポラと呼ばれる原虫によって引き起こされるサイクロスポラ症においては、原虫が体内に寄生してから1週間ほどの潜伏期間をおいて、下痢や腹部不快感、軽度の発熱、体重減少といった消化器系を中心とする症状が引き起こされることになると考えられることになります。
また、
こうしたサイクロスポラと呼ばれる原虫の種族も、汚染された水や食品などを介して感染を広げていくことになるので、
予防方法としては、生水の飲用を避けることや、衛生上の懸念のある地域において水や食品を利用する必要がある場合には十分に加熱してから摂取するといった処置を行う必要があると考えられることになるのです。
ランブル鞭毛虫が原因となる食中毒の症状の特徴と感染の予防方法
そして、
最後に挙げたランブル鞭毛虫(Giardia lamblia、ジアルジア・ランブリア)とは、体長10~15マイクロメートルほどの洋梨形をした鞭毛虫(べんもうちゅう)の一種であり、
ここで述べられている鞭毛虫とは、一般的に、鞭毛と呼ばれる糸状の細胞小器官を使って水中を遊泳するタイプの原生動物すなわち動物性の単細胞生物として定義されることになります。
そして、
こうしたランブル鞭毛虫と呼ばれる鞭毛虫の種族は、人間の小腸や十二指腸を中心とする消化器官に寄生して増殖していくことによって、ジアルジア症と呼ばれる感染症を引き起こすことになるのですが、
こうしたジアルジア症においては、鞭毛虫が体内に寄生してから7~10日ほどの潜伏期間をおいて、下痢や腹部の痙攣などを特徴とする胃腸炎の症状が引き起こされることになるほか、その他にも、腹部の膨満感や疲労、吐き気や嘔吐、体重減少といった症状が現れることになると考えられることになります。
また、
こうしたランブル鞭毛虫も、汚染された水や食品、そのなかでも特に、生水や生野菜、生ジュースなどなどを介して感染を広げていくことになるので、
予防方法としては、衛生上の懸念のある地域において水や食品を利用する必要がある場合には、生水の飲用を避けたうえで、食品や飲料水については沸騰した状態で一分間程度煮立たせる煮沸(しゃふつ)などの十分な加熱処理を行ってから摂取するといった処置を行うことが必要であると考えられることになるのです。
・・・
以上のように、
日本国内で発生する食中毒のなかでも食中毒の原因となる寄生虫の代表的な種類としては、今回と前回の記事のなかで詳しく取り上げてきた
アニサキス、クドア、サルコシスティス、クリプトスポリジウム、サイクロスポラ、ランブル鞭毛虫
といった全部で六つの種類の寄生虫の種族の名を挙げることができると考えられることになるのです。
・・・
次回記事:クリプトコッカス症とクリプトスポリジウム症の違いとは?真菌と原虫という病原体の種類の違いと具体的な症状の違い
前回記事:食中毒の原因となる寄生虫の代表的な種類とは?①アニサキスとクドアとサルコシスティスの特徴と感染の予防方法
「医学」のカテゴリーへ
「生物学」のカテゴリーへ