クリプトコッカス症とクリプトスポリジウム症の違いとは?真菌と原虫という病原体の種類の違いと具体的な症状の違い
加齢などによる体力の低下や、臓器移植等や自己免疫疾患などにおける免疫抑制剤の使用、あるいは、エイズ(AIDS、後天性免疫不全症候群)に代表されるような免疫不全を起こす疾患などによって免疫力が低下した状態にある場合に感染することが多い日和見感染症に分類される代表的な感染症の種類のなかには、
クリプトコッカス症とクリプトスポリジウム症という互いによく似た名前がつけられている感染症の種類が挙げられることになりますが、
こうしたクリプトコッカス症とクリプトスポリジウム症と呼ばれる二つの感染症は、それぞれ具体的どのような特徴を持った病原体によって引き起こされる感染症であり、両者は、互いにどのような点において異なっていると考えられることになるのでしょうか?
クリプトコッカス症の具体的な症状と真菌としての病原体の特徴
まず、
こうした二つの日和見感染症のうちの前者であるクリプトコッカス症とは、クリプトコッカス(Cryptococcus)と呼ばれる真菌すなわちカビや酵母の仲間によって引き起こされる感染症の一種であり、
クリプトコッカスは、直径1~5マイクロメートル(1000分の1~5ミリメートル)ほどの球形の形状をした真菌の種類として位置づけられることになります。
こうしたクリプトコッカスと呼ばれる酵母状の形態をした真菌は、人間が日常的に生活している空気中や土壌などに広く生息している常在微生物の一種であり、
免疫力が健全な状態にある場合には人間が感染することは極めてまれであると考えられることになるのですが、
冒頭でも述べたように、何らかの原因によって病原体を排除するための免疫力が低下した状態にある場合には、クリプトコッカス症と呼ばれる日和見感染症を引き起こしてしまうことがあると考えられることになります。
そして、
こうしたクリプトコッカス症と呼ばれる感染症においては、通常の場合、空気中や地面から舞い上がった土ぼこりのうちに含まれているクリプトコッカスが鼻や口を介して肺の内部へと入り込むことによって、
乾いた咳や発熱、疲労感などを特徴とする呼吸器系の疾患を引き起こすケースが多いと考えられることになるのですが、
こうした病原体としてのクリプトコッカスがさらに患者の体内を移動して感染範囲を拡大していく場合には、最終的には髄膜炎や脳炎などといったより危険性の高い致命的な疾患を引き起こされてしまうこともあり、
クリプトコッカス症を発症した場合の全体としての致死率は10~20%にもおよぶことになるとされています。
このように、
こうしたクリプトコッカス症と呼ばれる真菌を原因とする感染症は、病原体の感染力自体は非常に低いものの、実際に感染してしまった場合には致命的な疾患へとつながってしまう危険性の高い感染症の種類として位置づけられることになると考えられることになるのです。
クリプトスポリジウム症の具体的な症状と原虫としての病原体の特徴
それに対して、
後者にあたるクリプトスポリジウム症とは、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)と呼ばれる原虫すなわち寄生性や病原性をもった真核細胞性の単細胞生物によって引き起こされる感染症の一種であり、
クリプトスポリジウムは、直径5マイクロメートル(1000分の5ミリメートル)ほどの楕円形の形状をした原虫の種類として位置づけられることになります。
こうしたクリプトスポリジウムと呼ばれる原虫は、土壌や水中などに広く生息していて、特に、衛生管理が不十分な地域において水道水などの水源が汚染されている場合などには、
免疫力が低下した患者だけではなく、免疫力が健全な状態にある人に対しても集団感染を引き起こしていく場合もある食中毒の原因となる病原体の種類としても位置づけられることになります。
そして、
こうしたクリプトスポリジウム症と呼ばれる感染症においては、原虫が体内に寄生してから3~10日ほどの潜伏期間をおいて、激しい水様性の下痢や腹痛といった消化器系を中心とする症状を引き起こされることになり、
通常の場合は、数日~2週間くらいで自然に治癒していくことになると考えられることになるのですが、
免疫不全の患者の場合には、こうしたクリプトスポリジウム症の感染が長引いて慢性的な下痢などの消化器系の症状が持続することによって、
脱水症状や電解質異常、栄養不良や体力消耗といった症状が進行していってしまうことになり、最終的には命に関わるような状態へと陥ってしまうこともあると考えられることになるのです。
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以上のように、
こうしたクリプトコッカス症とクリプトスポリジウム症と呼ばれる二つの感染症における具体的な特徴の違いについて、一言でまとめると、
前者のクリプトコッカス症は、真菌を病原体とする乾いた咳や発熱、疲労感といった呼吸器系の症状を中心とする日和見感染症であるのに対して、
後者のクリプトスポリジウム症は、原虫を病原体とする水様性の下痢や腹痛といった消化器系の症状を中心とする日和見感染症および感染性胃腸炎である
という点において、
こうした二つの感性症は、互いにまったく異なる特徴を持った互いに似て非なる感染症の種類として位置づけられることになると考えられることになるのです。
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