ウイロイドに分類される代表的な病原体の種類と具体的な特徴とは?植物の成長を阻害し作物の生産性を低下させる最小の病原体
前回の記事で書いたように、ウイロイドとは、200~400個程度の塩基数のゲノム(遺伝情報)によって形作られている短い環状の一本鎖RNAのみによって構成される不完全なウイルスあるいはサブウイルス粒子の一種として分類される病原体として定義されることになり、
こうしたウイロイドと呼ばれる病原体は、現在までに人類によってその存在が確認された病原体のなかでは最小の感染性病原体にして、植物細胞に対して感染性を示す病原体として位置づけられることになります。
それでは、
こうしたウイロイドに分類される代表的な病原体の種類としては、具体的にどのような病原体の名が挙げられることになると考えられることになるのでしょうか?
植物細胞に感染するウイロイドの代表的な種類と農業生産などへの影響
冒頭で述べたように、
ウイロイド(Viroid)と呼ばれる病原体は、植物細胞、しかもその中でも基本的には、被子植物や裸子植物あるいはシダ植物といった維管束と呼ばれる組織を持つ高等植物の細胞に対してのみ感染性を示すことになるのですが、
こうした植物細胞に感染するウイロイドの具体的な種類としては、
例えば、
アボカドサンブロッチウイロイド(Avocado sunblotch viroid)
ジャガイモやせいもウイロイド(Potato spindle tuber viroid)
トマト退緑萎縮ウイロイド (Tomato chlorotic dwarf viroid)
ココナッツカダンカダンウイロイド (Coconut cadang-cadang viroid)
といったウイロイドの種類が代表的なものとして挙げられることになります。
このうち、
はじめに挙げたアボカドサンブロッチウイロイドとは、アブサンウイロイド科に属するウイロイドの種類であり、アボカドの木に重大な病変を引き起こす病原体として位置づけられることになります。
このウイロイドは、アボカドの植物細胞の中でも、特に、葉緑体の部分を中心に感染を広げていくことで植物体の成長を阻害していってしまうことになり、
アボカドサンブロッチウイロイドによる感染を受けたアボカドの木においては、果実の収穫量が30%以上低下し、果肉の質も悪くなるといった悪影響がおよぼされてしまうことになります。
このように、
一般的に、ウイロイドによる感染を受けた植物においては、このサブウイルス粒子の作用のみによって感染を受けた植物体自体がすぐに死滅してしまうようなことはあまりないと考えられることになるのですが、
その一方で、
こうしたウイロイドが感染した植物体においては、ウイロイドの増殖にともなって、成長の阻害や組織の萎縮といった現象が現れていくことになるので、
そういった意味では、
こうしたウイロイドと呼ばれる病原体は、大規模な植物栽培を行っている場合などに作物の生産に大打撃を与えてしまうことになるというように、
農業生産などにおける経済的な面において特に重大な影響をおよぼす病原体として位置づけられることになると考えられることになるのです。
ナス科の植物に感染するウイロイドの種類と致死性の病気の原因となる例
そして、それに対して、
残りの三つのウイロイドの種類は、どれもポスピウイロイド科に属するウイロイドの種類であり、
そのうちのはじめに挙げたジャガイモやせいもウイロイドは、ジャガイモやトマトや唐辛子といったナス科の植物を中心に感染を広げていくことになり、
例えば、このウイロイドにジャガイモが感染してしまった場合には、植物体の成長が阻害されることによって生育不良となり、ジャガイモの形が細長い形になるといった症状が現れていくことになります。
そして、
その次に挙げたトマト退緑萎縮ウイロイドも同様に、トマトやジャガイモやタバコといったナス科の植物を中心に感染を広げていくウイロイドの種類であり、前述したジャガイモやせいもウイロイドの近縁種としても位置づけられることになります。
そして、こうしたトマト退緑萎縮ウイロイドに感染したトマトの株は、植物体の萎縮や花の奇形、結実不良といった症状を引き起こすことによって、生産性が大きく低下していってしまうことになると考えられることになります。
それに対して、
最後に挙げたココナッツカダンカダンウイロイドは、ココヤシやナツメヤシやビンロウ(檳榔、中国を中心に種子が噛みタバコのような嗜好品として利用される)といったヤシ科の植物に対して感染を広げていくことになり、
この病原体は、ウイロイドの種族としては比較的珍しい致死性の病気を引き起こす病原体として知られていて、
ココナッツカダンカダンウイロイドに感染してカダンカダン病を発症したヤシの木は、まずは、葉に黄色い斑点が現れ、その後、種子の生産が停止していくことになるといった形で徐々に植物体としての構造の劣化が進んでいってしまうことになり、
発症してからだいたい8年から16年ほどの時間をかけて枯れていってしまうことになると考えられることになるのです。
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