扁桃体と扁桃腺の違いとは?恐怖の感情を司る脳の部位と病原体の侵入に対する門番の役割を担う喉と口蓋の組織

人体の部位を表す様々な言葉のなかには、扁桃体(へんとうたい)扁桃腺(へんとうせん)と呼ばれる互いに似通った表記を持つ言葉が出てきますが、

こうした扁桃体と扁桃腺という言葉は、それぞれ具体的に体の中のどのような位置にあるどのような機能を持った組織のことを意味する言葉であり、

こうした二つの言葉の大本の語源はどのようなところに求められることになると考えられることになるのでしょうか?

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扁桃体という言葉の語源と脳の組織としての具体的な位置と機能

まず、

こうした扁桃体と扁桃腺という二つの言葉のうちの前者である扁桃体は、一言でいうと、脳の部位のことを表す言葉であり、英語においてはamygdala(アミグダラ)と表記されることになるのですが、

こうした英語におけるamygdalaという単語は、もともとギリシア語やラテン語における同じ表記の単語であるamygdala(アミグダラ)すなわち、木の実のアーモンドのことを意味する単語を語源とする言葉であり、

こうした扁桃体と呼ばれる脳の組織アーモンドの種に似た形状をしていることから、こうした名称がつけられることになったと考えられることになります。

そして、

こうしたギリシア語やラテン語においてアーモンドを意味する言葉であったamygdala(アミグダラ)という言葉が、さらに、

日本語におけるアーモンドの別名である扁桃(へんとう)という言葉として訳されることによって、日本語における扁桃体あるいは扁桃腺といった言葉が形づくられていくことになったと考えられることになるのです。

また、

こうした扁桃体と呼ばれる脳の組織は、人間の脳の部位のなかでも大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)と呼ばれる大脳の中心部から底面へとのびていく弓状の領域の底面の部分に左右対称に二つ並んで存在しているのですが、

こうした扁桃体と呼ばれる脳の部位のより具体的な位置は、

両目の奥からさらにずっと後ろへと進んでいったちょうど頭蓋骨の中心部分にあたる大脳の下部の両側に位置づけられることになります。

そして、

扁桃体が位置している大脳辺縁系と呼ばれる脳の領域は、爬虫類の脳などとも言われることがあるように、大脳のなかでも進化の過程において比較的古くから存在していた情動や本能的欲求あるいは記憶や自律神経の制御といった原始的な心の働きを司る脳の領域であると考えられていて、

そのなかでも、

こうした扁桃体と呼ばれる脳の組織が担う具体的な機能としては、記憶と情動反応の結びつきを司る働き、その中でも特に、人間の心における恐怖の感情を司る働きなどが挙げられることになるのです。

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扁桃腺という言葉の語源と喉や口蓋の組織としての具体的な位置と機能

そして、それに対して、

後者である扁桃腺は、一言でいうと、喉や口蓋の部位のことを表す言葉であり、英語においてはtonsil(トンスィル)と表記されることになるのですが、

日本語においては、こうした扁桃腺と呼ばれる言葉も前述した扁桃体という言葉と同様に、その組織の形状がアーモンドすなわち扁桃の形状に似ているためにこうした扁桃腺という言葉が用いられるようになったと考えられることになるのですが、

それに対して、

英語におけるtonsil(トンスィル)という単語は、もともとはラテン語におけるtonsilla(トンスィラ)といった単語に由来する言葉であると考えられていて、

こうしたラテン語におけるtonsilla(トンスィラ)といった単語は、船をつなぎとめておく際に用いられる係留杭や停泊地のことを意味する言葉であったと考えられることになります。

また、

こうした扁桃腺と呼ばれる喉や口蓋の組織は、汗腺や涙腺などのように何らかの液体成分を分泌するような機能をもった組織ではなく、それは厳密な意味においては腺としての定義を満たしてはいないため、

現代医学の分野においては、扁桃腺ではなく単に扁桃(へんとう)という言葉として表記されることが多くなってきているのですが、

こうした扁桃腺あるいは扁桃と呼ばれる組織は、より正確に言うと、口の中の上側の壁の部分に位置する口蓋扁桃や、舌の付け根の部分の両側にある舌扁桃、さらには、咽頭扁桃耳管扁桃といった各部位へと点在する形で存在していて、

一般的には、こうした扁桃組織のなかでも、

特に、口の中の上側の壁の両側の部分に左右対称に位置する口蓋扁桃のことを指して、こうした扁桃腺あるいは扁桃と呼ばれる言葉が用いられることになると考えられることになります。

そして、

こうした扁桃腺あるいは扁桃と呼ばれる組織の具体的な機能としては、口や鼻から入ってきた異物や病原体に対して、いち早く免疫反応を示すという喉や気管といったさらに奥の部位を外敵から守る門番のような役割をしていると考えられ、

扁桃腺を形成しているリンパ節の内部にリンパ球や顆粒球やマクロファージといった免疫細胞たちが集まってくることによって素早い免疫反応が可能となると考えられることになるのですが、

その一方で、

病原体の勢力の方が強く、こうした扁桃腺と呼ばれる組織が逆に細菌やウイルスの増殖の拠点となってしまう場合には、化膿性の炎症高熱といった重篤な症状を引き起こす原因ともなってしまうため、

そういったケースでは、こうした扁桃腺と呼ばれる喉や口蓋の組織のなかでも、特に、アデノイドとも呼ばれる咽頭扁桃の部位を対象とした切除術などが治療の一環として行われる場合もあると考えられることになるのです。

・・・

以上のように、

こうした扁桃体と扁桃腺と呼ばれる人体の部位を表す言葉は、どちらも日本語においては、その組織の形状がアーモンドの種の形に似ていることから名付けられた言葉であり、

前者の扁桃体は、人間の心における記憶と情動反応の結びつき、その中でも特に、恐怖の感情を司る脳の部位として位置づけられることになるのに対して、

後者の扁桃腺あるいは扁桃は、口や鼻から入ってきた病原体に対していち早く免疫反応を示すという門番のような役割を担う喉や口蓋の組織として位置づけられるといった点に、

こうした扁桃体と扁桃腺の両者における人体における具体的な位置と機能の違いがあると考えられることになるのです。

・・・

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