すべての感染症を地球上から根絶する三つの方法とは?③遺伝子組み換え技術を利用した病原体に対する先天的な耐性の獲得
前々回と前回の記事で書いたようにすべての感染症を地球上から根絶するための具体的な方法としては、
バクテリオファージといった特定の細菌の種族を選択的に捕食していくウイルスの種族の働きを利用することによって、人体にとって有害となるあらゆる病原菌を地球上から撲滅してしまうといった方法や、
母親から胎児への先天的な受動免疫の継承を拡張していくことによって、最終的には、全人類のすべての免疫細胞がすべての病原体についての普遍的で網羅的な免疫記憶を共有するといった方法が考えられることになるのですが、
こうした先天的な免疫による感染症の予防といった観点からは、よりシンプルな考え方として、人間の細胞が持つ遺伝子自体の配列を改変することによって、そうした様々な病原体に対する先天的な耐性を持たせるといった手法も提示していくことができると考えられることになります。
遺伝子組み換え技術を利用した病原体に対する先天的な耐性の獲得
まず、
人間が持つ様々な遺伝子のなかには、先天的に特定の病原体に対する耐性を示すような遺伝子の種類も数多く発見されていて、
例えば、
エイズ(後天性免疫不全症候群)の原因となるHIVウイルスや、エボラ出血熱の原因となるエボラウイルスといった致死率の高い凶悪なウイルスについても、
そうしたウイルスに対して先天的な免疫耐性を持つことによって、そのウイルスによる感染を免れることができるか、たとえ感染しても感染症を発症することなくウイルスの働きを完全に封じ込めることができるような特異的な遺伝的体質を持つ人間が存在するということが知られています。
そして、
そうした特定のウイルスなどの病原体に対する先天的な耐性を持つ人々の細胞における遺伝子の働きを詳しく解析して、その仕組みをすべて解明していくことができるとするならば、
倫理的には大きな問題をはらんではいるものの、遺伝子組み換えの技術などを用いることによって、そうした病原体に対する耐性を示す遺伝子を人工的にすべての人間の遺伝子のなかに組み入れていき、
そうした特定の病原体に対する耐性を人類全体のレベルにおいて共有していくことも理論上は可能であると考えられることになります。
そして、最終的には、
こうした特定のウイルスに対して先天的な耐性を示す遺伝子の配列を一つ一つ丁寧に解き明かしていくことによって、
人体に対して病原性をもつすべてのウイルスに対する先天的な耐性を示す究極の遺伝子の配列を組み上げていくといったこともある程度は可能となるとも考えられることになるのです。
人類にとって諸刃の剣となりうる病原体に対する耐性遺伝子の性質
しかし、その一方で、
そうした特定の病原体に対する耐性を与えてくれるような遺伝子の特性は、人体にとって必ずしもそうした恩恵のみを与えてくれるだけではなく、それと同時に、様々な弊害や害悪をもたらしてしまうケースもあると考えられ、
例えば、
アフリカなどの熱帯地域において広く見られるマラリアに対する耐性を示す遺伝子は、それと同時に、かま状赤血球症と呼ばれる遺伝性の深刻な貧血病を引き起こす原因となる遺伝子でもあるということが知られています。
このように、
人間自身の細胞自体の人工的な遺伝子の組み換えを行うことによって、そうした病原体に対する先天的な耐性を身につけるという考え方は、
人間の細胞をあらゆる病原体に対する耐性をもった無敵の存在にする可能性があると同時に、そうした遺伝子の働きが暴走することによって人間自身の生存自体をも危うくする可能性があるという諸刃の剣ともなりうる究極の選択であるとも考えられることになるため、
こうした人工的な遺伝子の組み換えという倫理的な問題も極めて大きい究極の科学技術のみに頼ることによって、地球上からの病原体の駆逐を目指すというのはかなり危険な試みであるとも考えられることになるのです。
三つのアプローチの方法を複合的に用いていくことによる地球上からのすべての感染症の根絶の可能性
そして、以上のように、
これまでの記事で取り上げてきた
①バクテリオファージといった特定の細菌の種族を選択的に捕食していくウイルスの種族の働きを利用することによる地球上における病原菌の根絶
②胎児から母親への先天的な受動免疫の継承を拡張していくことによって得られる全人類のすべての免疫細胞における病原体についての免疫記憶の共有
③人間自身の遺伝子を人工的に組み替えていくことによる特定の病原体に対する先天的な耐性の獲得
といった三つのアプローチの方法などを複合的に用いていくことによって、将来的には、すべての感染症を地球上から根絶するといった大それた試みを実現していくも理論的には十分可能となり得ると考えられることになるのです。
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