すべての感染症を地球上から根絶する三つの方法とは?②母親から胎児への先天的な受動免疫の継承と細胞における免疫記憶
前回の記事で書いたようにすべての感染症を地球上から根絶するための具体的な方法としては、
まずは、バクテリオファージと呼ばれる特定の細菌の種族を選択的に捕食していくためのウイルスの種族を利用することによって、
そうした人体にとって有害となるあらゆる病原菌の地球上から撲滅してしまうといった方法が考えられることになるのですが、
こうしたバクテリオファージを用いた病原体の撃退法は、バクテリオファージと同じ種族にあたるウイルス自身には用いることができないと考えられることになるので、
こうしたウイルスが病原体となる感染症を地球上から完全に根絶していくためには、前回取り上げたバクテリオファージを用いた病原体そのものの撲滅といった手法とはまったく別のアプローチの仕方が必要となると考えられることになります。
胎児における母親の免疫系からの先天的な受動免疫の継承
そうするとまず、
こうしたウイルスと呼ばれる病原体は厳密な意味においては生物とは言えないほどの微小で単純な構造をもった病原体の種族であり、
そうした微小で単純な構造をもったウイルス自体にさらに寄生してこれを内側から破壊してしまうような新たな微生物やウイルスのような存在を見つけ出すことは不可能であると考えられる以上、
こうしたウイルスが原因となる感染症を完全に撲滅していくためには、
病原体となるウイルスの側ではなく、そうした病原性のウイルスに反応してこれを排除していく働きをもった免疫細胞といった人体における免疫システムの側に何らかの抜本的な対策を講じることが必要となると考えられることになります。
そして、
実際に病原体となるウイルスによる攻撃を受ける前に、そうした数多くの病原体に対応していくことができる力を持った人体における生得的な免疫システムのあり方としては、
赤ん坊が生まれながらにして母親の免疫系から直接的に継承していくことになる先天的な受動免疫と呼ばれる免疫システムの存在が挙げられることになります。
こうした先天性免疫、あるいは、自然免疫や生得免疫などの一種として分類される赤ん坊が生まれながらにしてもっている先天的な受動免疫の存在は、胎児がまだ母親のお腹のなかにいる時に、母親の胎盤を通して与えられることになり、
こうした自分自身の母親の免疫系に由来する先天的な受動免疫の存在によって、誕生直後の赤ちゃんは、すでに自分の母親がもつ免疫システムとほぼ同程度の病原体への対応力をもった免疫システムを与えられていると考えられることになります。
しかし、
こうした母親の免疫系から受け継がれることになる先天的な受動免疫においては、
実際には、
B細胞やT細胞に代表されるような免疫を担うリンパ球において共有されている病原体に対する免疫記憶自体は受け継がれずに、
そうした母親自身のリンパ球によって生産された抗体といった免疫系による生産物だけが継承されていくことになるので、
こうした母親の免疫系から直接的に受け継がれることになる先天的な受動免疫の効力はだいたい長くても生後数か月程度で寿命を迎えて、赤ちゃんの体内のなかからは徐々に消え去っていってしまうことになると考えられることになるのです。
全人類の免疫細胞における普遍的で網羅的な病原体の知識の共有
しかし、
このことは、逆に言えば、
何らかの方法によって、胎児が自分の母親の免疫システムから免疫系による生産物だけではなく、その大本にある免疫記憶自体の存在を受け継ぐことができるような方法を見つけ出すことができるとするならば、
そのような先天的な受動免疫だけではなく免疫細胞の記憶に基づいて自ら能動的に新たな抗体といった免疫生産物をつくり出すことができるような先天的な能動免疫をも備えた人間とその子孫たちにおいては、
自らの免疫システムのうちに、最終的には、自分自身の母親、さらには、その母親へとさかのぼっていく自分の祖先たちが病原体との闘いのなかですでに獲得してきたすべての免疫的な知識が組み込まれていくことになると考えられることになります。
・・・
つまり、
こうした母親から胎児への先天的な受動免疫の継承を拡張していくことによって、自らの母親や祖先からの免疫記憶を直接的に受け継いでいく先天的な能動免疫の継承が可能となるとするならば、
人類がこれまでに経験してきた病原体との闘いにおいて獲得してきた免疫記憶のすべてが世代を超えて自らの子孫たちへと受け継がれていくことによって、
最終的には、
全人類の体内に存在するすべての免疫細胞がそうした一つの普遍的で網羅的なすべての病原体についての知識を共有するに至ると考えられることになるのです。
そして、このように、
全人類がこれまでに獲得してきた免疫記憶のすべてを自らの免疫システムの内に生得的に受け継いでいくことによって、
事実上、人類がこれまでに遭遇してしたあらゆる病原体に対する免疫を生まれながらにして獲得している人間を誕生させることができるとするならば、
そのような人間にとっては、現在そして過去においてこの地球上に存在してきたすべての病原体に対する脅威が一切なくなると考えられることになり、
これまで人類への大きな脅威となってきたすべての細菌やウイルスたちは、もはやその人物にとっては感染症を引き起こす危険があるような病原体ではなくなるという意味において、
その時点において、そうした細菌やウイルスといった病原体によって引き起こされてきたすべて感染症は地球上から完全に根絶さることになると考えられることになるのです。
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次回記事:すべての感染症を地球上から根絶する三つの方法とは?③遺伝子組み換え技術を利用した病原体に対する先天的な耐性の獲得
前回記事:すべての感染症を地球上から根絶する三つの方法とは?①バクテリオファージを用いたすべての病原菌の地球上からの根絶
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