灰色植物とは何か?②あらゆる植物の祖先にあたる原始的な植物細胞に最も近い構造をした生物の種族、藻類とは何か?⑫
前回書いたように、灰色植物や灰色藻と呼ばれる生物は、もともとは、そのラテン語における正式な学名であるGlaucophyta(グラウコフィタ)という言葉自体の語源が、
古代ギリシア語やラテン語において地中海の海の色のような青緑色や青灰色といった色合いのことを意味するglaucus(グラウクス)という単語に求められることになるように、
実際には青みがかった緑色をした体色をしていると考えられることになります。
そこで、今回は、
こうした灰色植物と呼ばれる微細な単細胞性の藻類の種族が、通常の植物のような単なる緑色ではなく、なぜ、青緑色の体色をしているのか?ということについて考えていく中で、
植物における光合成の能力の獲得と、生物としての進化の歴史についても少し考えてみたいと思います。
シアノバクテリアに由来する原始的な葉緑体の内に含まれる二色の色素
まず、
灰色植物と呼ばれる藻類の種族が、こうした青みがかった緑色をした体色をしている直接的な理由としては、
こうした生物が、自らの体内に、シアネル(cyanelle)と呼ばれるもともとはシアノバクテリアに由来する原始的な葉緑体をもっていることがその理由として挙げられることになると考えられることになります。
そして、
「藍藻(シアノバクテリア)とは何か?」の記事でも書いたように、
シアノバクテリア(藍藻)は、体内に光合成色素として、緑色の色素であるクロロフィル(葉緑素)の他に、フィコシアニン(藍藻素)と呼ばれる青色の色素も持っている光合成細菌の一種であると考えられることになるため、
そうしたシアノバクテリアに由来する原始的な葉緑体をもっている灰色植物に分類される単細胞性の藻類も、シアノバクテリアと同様に、クロロフィルとフィコシアニンが混合された青緑色の体色をしていると考えられることになるのです。
すべての植物の祖先にあたる原始的な植物細胞に最も近い構造をした生物
そもそも、
現在、地球上に存在する植物が光合成を行うようになったきっかけは、こうしたシアノバクテリアのような核膜や細胞小器官を持たない原核生物に分類される光合成細菌の一種が、
細胞内に核膜によって細胞質から明確に区分された核を持つ真核生物に分類される別の単細胞生物の体内に取り込まれ、共生関係を営むようになったということに求められると考えられることになるのですが、
灰色植物は、今から20億年以上前の太古の昔に、こうしたシアノバクテリアを自らの体内に取り込み、共生関係を営むことによって光合成の能力を獲得した単細胞性の藻類の一種であると考えられることになります。
つまり、そういう意味では、
灰色植物は、自らの体内に取り込まれたシアノバクテリアを細胞小器官として利用することによって、細胞内に葉緑体と呼ばれる光合成に特化した器官を有するをようになった最初期の真核藻類のグループに分類されることになると考えられることになるのです。
・・・
以上のように、
灰色植物や灰色藻と呼ばれる微細な単細胞性の藻類の種族が青緑色の体色をしている理由としては、
灰色植物の細胞内に含まれているシアネルと呼ばれる原始的な葉緑体の内に、
もともとは、シアノバクテリアと呼ばれる光合成細菌に由来すると考えられるクロロフィル(葉緑素)とフィコシアニン(藍藻素)という緑色と青色の両方の色素が含まれているという点が挙げられると考えられることになります。
そして、
灰色植物は、そうした原核生物であるシアノバクテリアを太古の昔に自らの体内に取り込み、共生関係を営むことによって光合成の能力を獲得した最初期の真核藻類のグループに分類されることになると考えられることになるのですが、
以前に「植物の起源はシアノバクテリアなのか?」の記事でも書いたように、
そもそも、
シアノバクテリア(藍藻)と呼ばれる生物は、地球上ではじめて酸素発生型の光合成を行うようになった生物であり、言わば、葉緑体の祖先にあたる生物の種族でもあると考えられることになるので、
そういう意味では、
こうした灰色植物と呼ばれる生物の種族は、
シアノバクテリアを自らの体内に取り込み、体内に共生させることによって、誕生したと考えられる最初期の植物細胞に極めて近い細胞構造をしていると考えられるという意味において、
それは言わば、あらゆる植物の祖先にあたる原始的な植物細胞に最も近い構造をした生物の種族であるとも捉えることができると考えられることになるのです。
・・・
次回記事:クロララクニオン植物とは何か?、アメーバや粘菌のような生態を営みながら光合成を行う異形の藻類の種族、藻類とは何か?⑬
前回記事:灰色植物とは何か?①灰色藻が灰色ではなく青緑色をしている理由とは?、藻類とは何か?⑪
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