狭義と広義における藻類の定義の違いとは?海藻に含まれる植物の種類とユーグレナとクロララクニオン植物、藻類とは何か?④
前回書いたように、藻類と一般的な陸上植物とを区別する具体的な特徴の違いとしては、
藻類が行う光合成においては、紅藻素や藍藻素といった葉緑素以外の多様な色素が光合成の働きに大きく関与していることが多い点や、
陸生植物である種子植物やシダ植物において見られる水や養分の通路が束状になった維管束と呼ばれる組織が藻類の場合には存在しないという点、
その他にも、藻類の形態は、葉状、樹枝状、糸状、単細胞、細胞群体といった極めて多様な生物体の形態へと分かれるという点や、生殖方法のあり方も胞子や細胞分裂、出芽といった多様な生殖方法に分かれるといった点が挙げられることになります。
それでは、
こうした一般的な陸上植物とは異なる特徴を持った植物の種族である藻類と呼ばれる生物のグループには、具体的にどのような種類の植物が分類されることになると考えられることになるのでしょうか?
狭義における藻類の定義と、海藻に含まれる植物の種類
藻類と呼ばれる生物のグループに含まれる植物の種類の範囲は、藻類という概念の定義のあり方に応じて多少異なってくることになり、
まず、
狭義における藻類の定義においては、冒頭で挙げたような藻類の特徴を持った植物のうち、主に、葉状や樹枝状といった一般的な植物のイメージと合致する形態をした肉眼で判別できる大きさを持った植物の種類が数多く含まれる生物の種族が藻類に分類されることになり、
具体的に、こうした狭義における藻類には、
緑藻類(りょくそうるい)と、紅藻類(こうそうるい)、そして、褐藻類(かっそうるい)と呼ばれる三つの植物の種族が藻類に分類されることになります。
そして、
こうした狭義における藻類に分類される植物の種族のうち、
例えば、
緑藻類にはアオサやアオノリ(青海苔)といった植物の種類などが、
紅藻類にはアサクサノリ(浅草海苔)やテングサ(天草)などが、
褐藻類にはワカメ(若布)、コンブ(昆布)、ヒジキ(鹿尾菜)、モズク(水雲)
といった植物の種類が分類されることになるのですが、
こうした狭義の意味の藻類に分類される代表的な植物の種類の顔ぶれを見ても分かるように、
狭義における藻類には、主に、日常的な表現としては、海藻などとして認識されることが多い植物の種類が分類されることになると考えられることになるです。
広義における藻類の定義とユーグレナ植物とクロララクニオン植物
それに対して、
広義における藻類の定義においては、冒頭で挙げたような藻類の特徴を持つすべての生物が藻類として捉えられることになり、
具体的には、こうした広義における藻類には、
前述した緑藻類と紅藻類と褐藻類の三種族に、珪藻類(けいそうるい)と、藍藻類(らんそうるい)と呼ばれる植物の種族が加わるほか、
渦鞭毛藻(うずべんもうそう)や、クリプト藻、ラフィド藻、灰色藻(かいしょくそう)、ユーグレナ植物、クロララクニオン植物
といったあまり聞き慣れない数多くの生物の種類が分類されることになります。
そして、例えば、
こうした広義の意味における藻類に含まれる生物の種族のうち、
渦鞭毛藻とクリプト藻とラフィド藻は、三種とも鞭毛と呼ばれる運動性を持った小器官を有する単細胞の生物であり、
ユーグレナ植物は、動物と植物の境界に位置する生物として取り上げられることの多いミドリムシが分類される生物の種族ということになります。
また、最後に挙げたクロララクニオン植物も、糸状の仮足を持って移動するアメーバ状の生物でありながら光合成も行うことによって一般的には植物に分類されることになるというように、
こうした広義における藻類には、一見すると植物とも動物とも判別のつかないような奇妙な生態をもった一般的には海藻などとして認識されることのない多様な形態を持った生物の種類が分類されることになると考えられることになるのです。
・・・
以上のように、
藻類に分類される生物の種類の範囲は、藻類という言葉自体の狭義と広義における定義のあり方の違いに応じて変化していくことになり、具体的には、
狭義における藻類には、一般的には海藻として認識されることが多い緑藻類・紅藻類・褐藻類という三つの植物の種族が分類されるのに対して、
広義における藻類には、上記の三つの植物の種族のほかに、珪藻類と藍藻類、さらには、渦鞭毛藻、クリプト藻、ラフィド藻、灰色藻、ユーグレナ植物、クロララクニオン植物といった多様な形態を持った生物の種類が分類されることになるのです。
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次回記事:緑藻類・紅藻類・褐藻類の違いとは?光合成色素と水深などの生息域の違いと分類される代表的な藻類の種類、藻類とは何か?⑤
前回記事:藻類と一般的な陸上植物とを区別する四つの具体的な特徴の違いとは?藻類とは何か?③
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