十二星座の由来におけるバビロニア神話とギリシア神話との関係とは?二つの神話をつなぐ星座の由来となる物語の系譜
前回の記事で書いたように、十二星座に含まれるような夜空に輝く代表的な星座のうちのほぼすべての星座は、何らかの形でギリシア神話の物語のうちに起源を持つ星座として位置づけられることになると考えられることになるのですが、
その一方で、
こうした星座の由来となる神話的な物語の存在としては、ギリシア神話と並んで、それよりもさらに起源の古い神話にあたるバビロニア神話を中心とする古代メソポタミアにおける神話の存在も挙げられることになると考えられることとなります。
十二星座の大本の起源となったバビロニア神話における物語
例えば、前回の記事でも書いたように、
十二星座のうちの最初の星座として位置づけられているおひつじ座の由来については、ギリシア神話の物語においては、
ギリシアの古代都市の一つにあたるボイオティアの王子と王女であったプリクソスとヘレーという名の二人の兄妹たちのことを助けて彼らを遠い東の異国の地へと導いていったとされている空飛ぶ黄金の羊の姿がこの星座のギリシア神話における由来となった物語として挙げられることになるのですが、
その一方で、
こうした現在ではおひつじ座として知られている星座は、古代ギリシア人が生きていた時代よりもさらに昔の古代メソポタミアにおいては、農具を使う農夫の姿を象徴とする鉤型の形状をした星座の姿として捉えられていて、
そうした古代メソポタミアにおいてすでに成立していたおひつじ座の原型となる星座の姿が、農具や農耕といったイメージが、
その後のシュメール神話やそれに続くバビロニア神話において、牧羊の神ドゥムジやタンムーズの姿と結びつけられていくことによって、前述したギリシア神話におけるおひつじ座のイメージへとつながっていくことになっていったと考えられることになります。
また、
十二星座のうちの最後の星座として位置づけられているうお座の由来についても、ギリシア神話の物語においては、その姿は、
怪物テュポーンから逃れるために二匹の魚の姿へと変身して川へと飛び込んだとされている美の女神アフロディテとその息子にあたる愛の神エロースの姿に由来していると語られていくことになるのですが、
その一方で、
こうしたギリシア神話よりもさらに起源の古いバビロニア神話においては、この星座はメソポタミアの地を流れるチグリス川とユーフラテス川の二つの川の結びつきを示していて、
そうした二本の川が合流する姿が、「互いの尾」が「ひも」によって結びつけられた二匹の魚の姿として描かれていくことによって、前述したギリシア神話におけるうお座のイメージへとつながっていくことになっていったと考えられることになるのです。
バビロニア神話からギリシア神話へと続く星座の由来となる物語の系譜
そして、以上のように、
こうした十二星座に代表されるような夜空に輝く様々な星座たちの姿の由来は、必ずしもギリシア神話だけをその大本となる唯一の源流として位置づけることができるというわけではなく、
それらの星座のなかには、前述したバビロニア神話に代表されるような古代メソポタミアの神話のうちにもそのさらに古い起源を持つ星座も数多く存在すると考えられることになります。
そして、
こうしたバビロニア神話の段階において、すでに原型となる星座の形のうちのいくつかのものが形づくられていったうえで、
その後のギリシア神話の段階において、それまでに形づくられていた様々な星座における個々の星座同士の関係が互いに解き明かされていくような形でそれぞれの星座についてのより詳細な神話的な意味づけがなされていくことになっていったと考えられることになるのですが、
そういった意味では、
こうした十二星座に代表されるような夜空に輝く大部分の星座たちの姿の具体的な由来のあり方が体系化された神話の物語の内に位置づけられていくという明確な形で確立されていくことになったのは、
やはり、古代ギリシア人が生み出したギリシア神話と彼らの言語である古代ギリシア語においてであったと考えられることになるのです。
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次回記事:星座の由来のほとんどがギリシア神話に求められる理由とは?古代ギリシアにおける幾何学と天文学の発展と星座との対応関係
前回記事:十二星座の由来となったギリシア神話の物語のまとめ、黄道十二星座の由来となった十二の動物や人物たちの一つ一つの物語
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