藻類と一般的な陸上植物とを区別する四つの具体的な特徴の違いとは?藻類とは何か?③
前回書いたように、藻類は、根と茎と葉の明確な区分が存在せず、全体が葉っぱのように広がった葉状の生物体を形成することが多い点や、胞子生殖によって増殖するものが多いといった点においては、陸上植物のなかのコケ植物と共通する特徴が見られるのに対して、
樹枝状、糸状、単細胞体や細胞群体といった多様な生物体を形成する種類が見られることや、胞子生殖のほかにも細胞分裂や出芽といった多様な生殖方法を持つという点では、むしろ菌類と共通する性質を持っていて、そういう意味では、藻類とはコケ植物と菌類の中間に位置する生物として捉えることができると考えられることになります。
それでは、こうした観点を踏まえたうえで、
こうした藻類に分類される植物と、一般的な陸上植物との間には、より具体的にはどのような特徴の違いが存在すると考えられることになるのでしょうか?
藻類と陸上植物の光合成において用いられる色素の種類の違い
まず、
藻類と一般的な陸上植物とを区別する主要な生物学的な特徴の違いとしては、第一に、
光合成に用いられることになる色素の種類の違いといった点を挙げることができると考えられることになります。
種子植物やシダ植物、コケ植物といった陸上植物の場合、光合成において光のエネルギーを吸収する働きを担う色素としては、葉緑素(クロロフィル)と呼ばれる緑色の色素が主体として用いられることになりますが、
それに対して、藻類の場合は、
例えば、
紅藻植物においては、こうした葉緑素の他に、紅藻素(フィコエリトリン)と呼ばれる赤色の色素や、藍藻素(フィコシアニン)と呼ばれる青色の色素も光エネルギーの吸収を担う色素として利用されているように、
藻類においては、葉緑素以外にも、多様な色素が光合成の働きに大きく関与しているケースが数多く存在すると考えられることになります。
藻類と陸上植物における生物体の構造や生殖方法のあり方の違い
また、
生物体としての構造の違いとしては、前回の記事でも書いたように、
陸上植物の場合は、種子植物やシダ植物といった根と茎と葉の明確な区別を持つ維管束植物と、コケ植物のように茎と葉がつながった茎葉体か、全体が葉っぱのように広がっている葉状体を形成する非維管束植物とに分かれるのに対して、
藻類には、種子植物やシダ植物のように根と茎と葉の明確な区別を持つ種族は一切存在せず、すべての種類が非維管束植物に分類されることになり、
生物体の具体的な構造も、コケ植物のように葉状の生物体が形成されるケースから、樹枝状、糸状、さらには、単細胞の場合や、複数の細胞が寄り集まった細胞群体が形成されるケースなど、極めて多様な生物体の形態へと分かれることになると考えられることになります。
そして、
生殖方法のあり方についても、
陸上植物においては、種子植物のように胚珠から花粉の受粉を経て形成される種子によって生殖が行われる場合と、シダ植物やコケ植物のように胞子と呼ばれる生殖細胞によって生殖が行われるケースに二分されるのに対して、
藻類の場合は、シダ植物やコケ植物と同様に胞子によって生殖が行われるケースの他に、細胞分裂によって増殖していくケース、細胞の一部分にできた芽状の突起が次第に大きくなっていって新しい個体が形成される出芽と呼ばれる生殖方法を用いるケースなど、多様な生殖方法へと分かれることになります。
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以上のように、
藻類と一般的な陸上植物とを区別する具体的な特徴の違いとしては、
①陸上植物が光合成に用いる色素は葉緑素(クロロフィル)が主体となるのに対して、藻類の場合は紅藻素や藍藻素といった葉緑素以外の多様な色素が光合成の働きに大きく関与している。
②陸上植物のうち種子植物とシダ植物においては道管や師管といった水や養分の通路が束状になった維管束と呼ばれる組織が形成されるのに対して、藻類の場合はそうした維管束と呼ばれる組織が存在しない。
③陸上植物の形態は茎と葉の区別のある茎葉体か全体が一様に葉っぱ状に広がった葉状体のいずれか一方の形態を持つのに対して、藻類の形態は葉状や樹枝状、糸状、単細胞体や細胞群体といった極めて多様な生物体の形態へと分かれる。
④陸上植物の場合は種子または胞子によって生殖が行われるのに対して、藻類の場合は胞子や細胞分裂、出芽によって生殖が行われる。
といった全部で四つの具体的な特徴の違いが挙げられることになると考えられることになるのです。
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次回記事:狭義と広義における藻類の定義の違いとは?海藻に含まれる植物の種類とユーグレナとクロララクニオン植物、藻類とは何か?④
前回記事:コケ植物と菌類の中間に位置する生物としての藻類の定義、コケ植物および菌類との間の共通点と相違点、藻類とは何か?②
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