コケ植物と菌類の中間に位置する生物としての藻類の定義、コケ植物および菌類との間の共通点と相違点、藻類とは何か?②

前回書いたように、本来、水中で生活する植物であるはずの藻類のなかにも、その一部には陸上で生活する藻類の種類も存在し、

その反対に、本来、陸上植物に分類される種子植物とシダ植物、コケ植物といった植物の種族のなかにも、水草など、水中で生活する植物の種類が存在すると考えられるように、

一般的な陸上植物藻類とを区別する具体的な定義のあり方は、厳密な生物学的な意味においては、陸上で生活する植物と水中で生活する植物といった植物が生育する場所の違いによってだけでは定義づけることはできないと考えられることになります。

そして、

こうした陸上植物に分類される植物の種族のなかで、藻類に最も近い性質を持っていると考えられる植物の種族としてはコケ植物が挙げられると考えられることになるのですが、

それに対して、

植物以外の生物の種族のなかで、最も藻類に近い性質を持った生物の種族としては、キノコやカビなどを形成する菌類が挙げられることになると考えられることになります。

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コケ植物と藻類の共通点とは?根・茎・葉の区分と葉状体と胞子生殖

詳しくは、以前にシダ植物とコケ植物の違いの記事で書いたように、コケ植物と呼ばれる植物の種族の主な特徴としては、

種子植物やシダ植物などの他の陸上植物に見られるような道管や師管といった水や養分の通路が束状になった維管束(いかんそく)と呼ばれる組織がコケ植物には存在しないことや、

コケ植物の場合は、根と茎と葉の明確な区分が存在せず、茎と葉がつながった構造をした茎葉体(けいようたい)や、茎と葉の分化すら見られずに全体が葉っぱのように平らに広がっている葉状体(ようじょうたい)と呼ばれる生物体の構造を形成すること、

また、生殖においても、種子植物のように胚珠から花粉の受粉を経て種子が形成されることによってふえるのではなく、胞子と呼ばれる生殖細胞を形成することによって、無性生殖によっても繁殖する期間が存在するといった点が挙げられることになります。

そして、それに対して、

藻類の場合も、コケ植物と同様に、維管束と呼ばれる通道組織の構造は見られず、根と茎と葉の明確な区分も存在せずに、

生物体の構造についても、コケ植物と同様に葉状体のような構造を形成する場合のほかに、樹枝状糸状、さらには、単細胞体や、複数の細胞が寄り集まって細胞群体など非常に多様な形状をした生物体の構造を形成するケースがあると考えられることになります。

また、

生殖方法についても、藻類には、コケ植物と同様に胞子生殖を行うものも多いほか、細胞分裂や、細胞の一部分にできた芽状の突起が次第に大きくなってやがて分離していくことによって新しい個体が形成される出芽と呼ばれる生殖の形式を営むケースなどが見られることになります。

このように、藻類コケ植物は、

維管束を形成せず、根と茎と葉の明確な区分が存在しないという点や、全体が葉っぱのような構造をしている葉状体のような生物体を形成する場合が多い点、胞子生殖によって繁殖するケースが多いといった

多くの点において、互いに共通する性質を持った植物の種族であると考えられることになるのです。

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キノコやカビなどの菌類と藻類との共通点とは?多様な生物体の構造と多様な生殖方法のあり方

その一方で、

上述した性質のなかで、藻類とコケ植物の間に存在する性質の差異の方に目を向けてみると、

コケ植物の生物体の構造は、通常の場合、茎葉体葉状体かのいずれか一方に分類されることになるのに対して、

藻類の生物体の構造は、葉状体のほかにも、樹枝状や、糸状単細胞細胞群体といった多様な構造を持つ種類に分かれるほか、

藻類の生殖方法は、コケ植物におけるような胞子生殖だけではなく、細胞分裂出芽といった多様な生殖方法が営まれることになるといった点に、

両者の間の性質の違いが存在すると考えられることになります。

そして、

こうした藻類における多様な生物体の構造と、多様な生殖方法のあり方は、

植物という生物のグループの枠組みを超えて、今度は、菌類と呼ばれる別の生物の種族との間に大きな共通点を見出すことができると考えられることになります。

例えば、

菌類の一種であるキノコは、胞子を形成するために特化した子実体を形成するまでは、通常の場合、葉状に広がっていく形で成長していくことになりますし、

そうしたキノコが形成する多様な子実体の構造のなかには、ホウキタケ(箒茸)のように、樹枝状の子実体の構造を形成するものもあると考えられることになります。

そして、

菌類は、その成長の過程において、一般的に、菌糸と呼ばれる糸状の細胞列を形成していくことになりますし、

菌類の一種であるカビが形成する細胞集団であるコロニーは、一種の細胞群体のようなものと捉えることができるほか、

同じく菌類の一種に分類される酵母は、基本的には、単独の細胞の状態で活動する単細胞生物に分類されることになります。

また、生殖のあり方についても、

菌類であるカビやキノコなどの多くの種族は、胞子生殖によって増殖していくケースが多いほか、

同じく菌類の一種である酵母は、出芽細胞分裂によって増殖していくことになるというように、

藻類が有する性質のうちで、コケ植物とは異なるものとして挙げられるすべての性質は、基本的には、菌類の性質と一致することになると考えられることになるのです。

このように、藻類菌類は、

葉状樹枝状糸状単細胞細胞群体といった生物体の構造のあり方や、

胞子生殖細胞分裂出芽といった生殖方法のあり方といった多くの点において互いにピタリと一致する共通の性質を持っていると考えられるのですが、

しかし、その一方で、

菌類には、藻類を含めたすべての植物に共通する最も主要な性質の一つである光合成を行うという能力が欠けているので、

そうした点においては、やはり、藻類と菌類の間には、上述したような大きな共通点が見られると同時に、決定的な相違点も存在すると考えられることになるのです。

・・・

以上のように、

藻類と呼ばれる生物の一群は、

根と茎と葉の明確な区分が存在せず、全体が葉っぱのように広がった葉状の生物体の構造を形成することが多い点や、胞子生殖によって増殖するものが多いといった点においては、

コケ植物と共通する性質を持っていると考えられることになるのですが、

その一方で、

葉状樹枝状糸状単細胞細胞群体といった多様な生物体の構造のあり方や、胞子生殖細胞分裂出芽といった多様な生殖方法のあり方といった点においては、それはむしろ、

菌類と共通する性質を持っていると考えられることになります。

つまり、そういう意味では、

藻類とは、他の植物の種族のなかではコケ植物に最も近く、植物以外の生物の種族のなかでは、カビやキノコといった菌類に最も近い存在、

すなわち、コケ植物と菌類の中間に位置する生物として捉えることができると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:藻類と一般的な陸上植物とを区別する四つの具体的な特徴の違いとは?藻類とは何か?③

前回記事:藻類なのに陸上で生育する植物と陸上植物なのに水中で生育する植物、藻類とは何か?①

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