藻類なのに陸上で生育する植物と陸上植物なのに水中で生育する植物、藻類とは何か?①
藻類(そうるい)とは、一言でいうと、
種子植物やシダ植物、コケ植物といった一般的な陸上植物の定義にあてはまらない植物のうち、主に水中や湿地などで生育する植物の総称として用いられている言葉であると考えられることになります。
しかし、その一方で、これから今回の記事で詳しく考察していくように、
こうした藻類と呼ばれる植物のグループの中には、極めて少数ではあるものの陸上で生育する種類が存在し、
その反対に、
種子植物といった本来、陸上植物に分類されるはずの植物のグループの中にも、一般的な藻類と同様に、水中で生育する種類も存在すると考えられることになるのです。
陸上植物なのに水中で生育する植物とは?睡蓮や金魚藻が陸上植物に分類される理由とは?
生物学的な定義における陸上植物とは、陸上で進化した一連の植物群のことをを指す言葉であり、
こうした陸上植物には、具体的には、種子植物・シダ植物・コケ植物という三つの植物の種族が分類されることになります。
しかし、
そうした本来、陸上で生育する陸生植物であるはずの種子植物に分類される植物のなかにも、スイレン(睡蓮)などのように池や沼の中などで生育する水生植物や水草なども存在するほか、
さらには、
一般的にはキンギョモ(金魚藻)と呼ばれることの多い、マツモ(松藻)や、フサモ(房藻)、オオカナダモ(大カナダ藻)といった水草や、
クロモ(黒藻)、イバラモ(茨藻)、セキショウモ(石菖藻)といった水草の種類も、
藻類ではなく、陸上植物のなかの種子植物に分類される植物の種類として挙げられることになります。
これらの植物は、水中で生育し、さらには、「~藻」といった名称でさえ呼ばれていながら、
植物の生態としては、花を咲かせて種子をつくる種子植物のなかでも、種子のもととなる胚珠が雌しべの中の子房に収められている被子植物と呼ばれる植物のグループに分類されることになり、
被子植物は種子植物に分類され、さらに、種子植物は陸上植物に分類されることになる以上、
こうした生物学的な定義に基づくと、睡蓮や金魚藻といった植物たちは、その生態においては、一般的な藻類と同様に水中や湿地で生活する植物でありながら、陸上植物に分類されることになると考えられることになります。
つまり、
動物において、本来、陸生動物であるはずの哺乳類が、再び海へと戻って水生動物となったクジラやイルカといった動物たちが魚類のグループに含まれることがないのと同様に、
植物においても、本来、陸生植物であるはずの種子植物が、再び水中での生活へと適用して水草となり、さらに、見た目の形状などからキンギョモ(金魚藻)やセキショウモ(石菖藻)などというように「藻」という言葉が用いられた名称で呼ばれることになったとしても、
それらの種子植物に分類される水生植物は、生物学的な意味においては藻類に分類されることはあり得ず、
そうした植物たちは、必然的に、種子植物が分類されている陸上植物に分類されることになると考えられることになるのです。
藻類なのに陸上で生育する植物とは?樹皮上や岩盤上で生育するスミレモ(菫藻)の生態
その一方で、反対に、
本来、水生植物であるはずの藻類のグループに分類される植物のなかにも、陸上で生育する植物の種類もあり、そうした陸上で生育する藻類としては、
例えば、スミレモ(菫藻)といった藻類の種類が挙げられることになります。
スミレモ(菫藻)は、緑色の光合成色素を持つ藻類である緑藻類に分類される植物なのですが、
通常の場合、スミレモは、スギやヒノキといった他の陸生植物の樹皮上や、日の当たりにくい崖地などの岩盤上といった陸上で生育していると考えられ、
そういう意味では、
こうした藻類なのに陸上で生活するスミレモ(菫藻)と、
陸上植物なのに水中で生活するスイレン(睡蓮)といった植物たちは、
互いに好対照な関係にあると考えられることになるのです。
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以上のように、
藻類という言葉は、一般的に、
種子植物やシダ植物、コケ植物といった一般的な陸上植物に分類されない水中や湿地などで生育する植物の総称として用いられている言葉であると考えられることになるのですが、
その一方で、
そうした藻類のなかには、スミレモ(菫藻)のように陸上で生活する藻類の種類も存在するほか、その反対に、
陸上植物である種子植物のなかにも、スイレン(睡蓮)やキンギョモ(金魚藻)のように水中で生活する植物の種類が存在すると考えられることになります。
したがって、
より厳密な生物学的な意味において、こうした種子植物やシダ植物、コケ植物といった一般的な陸上植物と、藻類との間の具体的な定義のあり方の違いを示すためには、
単に、それらの植物が陸上で生息しているのか?それとも水中で生息しているのか?といった生育場所の違いについてだけではなく、
生物体としての具体的な構造の違いや、生殖形態の違い、光合成の仕組みといった点にまで踏み込んで両者の間に存在する具体的な特徴の違いについて詳しく考察していくことが必要になると考えられることになるのです。
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次回記事:コケ植物と菌類の中間に位置する生物としての藻類の定義、コケ植物および菌類との間の共通点と相違点、藻類とは何か?②
前回記事:菌類の分類のあり方のまとめと真菌・粘菌・細菌という三つの菌類の種族に分類される代表的な菌類の名前
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