両性花は雌雄同株と雌雄異株のどちらに分類されるのか?両性花が広義の意味における雌雄同株に分類される理由とは?
前回書いたように、雌雄同株と雌雄異株という植物の分類のあり方は、
狭義の意味においては、単性花をつける種子植物においてのみ用いられるのに対して、
広義の意味においては、シダ植物やコケ植物といった花をつけることのない植物の分類のあり方にも広く適用されていくことになります。
それでは、
陸上に存在する一般的な植物のなかでシダ植物やコケ植物といった花をつけない植物でもなければ、単性花をつける植物でもない植物の種類、
すなわち、両性花をつける種子植物についても、それを雌雄同株と雌雄異株のいずれかの分類へと区分することは可能となるのでしょうか?
両性花が広義の意味における雌雄同株に分類される理由とは?
詳しくは「両性花と単性花の違いとは?」の記事で書いたように、
一つの花の内に雄しべと雌しべの両方が形成される花のことを意味する両性花をつける植物としては、
サクラ、バラ、イチゴ、リンゴ、ナシ、キク、タンポポ、コスモス、ヒマワリ、ユリ、チューリップ、タマネギ、アサガオ、ヒルガオ、サツマイモ、アブラナ、キャベツ、ダイコン、ブロッコリー、エンドウ、ソラマメ、インゲンマメ、アヤメ、ツツジ、スイセン、スミレ、ホウセンカ、イネ、コムギ、ライムギ、ナス、トマト、ジャガイモ
といった数多くの被子植物の種類が挙げられることになり、
現在、地球上に存在する花のだいたい7割程度は、こうした両性花をつける植物に分類されることになると考えられることになります。
そして、前回書いたように、広義の意味においては、
雌雄同株とは、雌と雄の性質が同じ株、すなわち、同一の個体の内に共に存在する植物のことを意味する言葉であり、
雌雄異株とは、雌と雄の性質が異なる株、すなわち、別々の個体に分かれて存在する植物のことを意味する言葉として捉えることができると考えられるのですが、
こうした広義の意味における雌雄同株と雌雄異株というそれぞれの言葉の定義に基づくと、
同じ一つの花のうちに、雄しべと雌しべの両者が同居している両性花をつける植物においては、
一本の木や草における雌雄の性質のあり方を問題とする以前に、そうした木や草に咲いている一つ一つの花の段階において、すでに、雄しべと雌しべという雌雄両者の性質の共存が成立していることになるので、
こうした両性花をつける植物は、広義の意味においては、雌雄異株ではなく、雌雄同株に分類される植物として区分することができると考えられることになります。
つまり、
両性花をつける植物においては、
一つの木や草において咲いている一つ一つの花という個々の器官のレベルにおいてすでに雌雄両方の性質の共存が成り立っていることによって、
一本の木や草という個体レベルにおける雌雄の性質の共存も自動的に確保されることになるという意味において、
それは、広義の意味における雌雄同株に分類される植物として定義されることになると考えられることになるのです。
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以上のように、
両性花をつける種子植物は、
個体の内に存在する一つ一つの花の段階において、すでに雌しべと雄しべという雌雄両者の性質の共存が成立しているという点において、
広義の意味においては雌雄同株に分類される植物として区分することができると考えられることになります。
そして、詳しくは、また次回以降の記事で改めてまとめて考察していくように、
今回取り上げた両性花をつける種子植物や、前回取り上げたシダ植物やコケ植物といった植物を含むあらゆる植物は、
それが雌しべと雄しべ、雌花と雄花、雌株と雄株といった雌雄の性別の区別をもつ存在である限り、
広義の意味における雌雄同株か雌雄異株のいずれかの分類へと区分することができると考えられることになるのです。
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次回記事:
前回記事:雌雄同株と雌雄異株の広義と狭義における意味の違いとは?シダ植物とコケ植物における雌雄同株と雌雄異株の分類
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