日食は一年に何回観測されるのか?部分日食も含めた最大の回数と皆既日食と金環食のみをカウントとした場合の回数
このシリーズの初回から前回までの一連の記事のなかでは、日食という言葉自体の定義のあり方から、皆既日食と部分日食と金環食と呼ばれる三つの日食の具体的な特徴の違い、さらには、日食と新月との関係のあり方などについて順番に詳しく考察してきましたが、
それでは、
こうした日食と呼ばれる現象は、地球上における実際の観測においては、だいたい一年に何回ほど観測されることになる天体現象であると考えられることになるのでしょうか?
皆既日食か金環食が観測される可能性のある年に2回の機会
そうすると、まず、前回の記事でも詳しく考察したように、
天球上における太陽と月の位置関係のあり方においては、
太陽の側は、天球上における太陽の通り道にあたる黄道上を約365.24日というほぼ一年の周期で反時計回りに移動していくことになるのに対して、
月の側は、天球上における月の通り道にあたる白道上を約27.32日という周期で同じく反時計回りに移動していくことになると考えられ、
日食と呼ばれる現象は、太陽と月がそうした黄道と白道の交点付近に同時に位置するときに観測される天体現象として位置づけられることになると考えられることになります。
そして、上記の図において示したように、
こうした天球上における黄道と白道の交点としては、黄道に対して白道が天の北極の側へと向けて上向きに交差していくことになる昇交点と、天の南極の側へと向けて下向きに交差していくことになる降交点と呼ばれる二つの交点が存在することになり、
太陽の側は、そうした二つの交点を含む黄道上をほぼ一年かけて一周していくことになるため、
日食が観測される機会は、天球上における太陽の年周運動において太陽がそうした黄道と白道の二つの交点のうちのいずれかの交点付近に位置するときに、月がそれと同じ交点付近を通過していく瞬間に訪れることになると考えられることになります。
そして、その時に、
天球上における黄道と白道の交点からの太陽と月の距離が十分に近ければ、地球上のいずれかの地点において、
太陽の姿がそれとほぼ同じ大きさの月の姿によって覆い隠されていくことによってその姿が完全に見えなくなるという皆既日食か、
太陽の姿がそれよりは一回り小さい月の姿によって覆い隠されていくことによって黒い月の周囲に太陽の縁だけが金色の環のように輝いて見える金環食かのいずれかの日食が完全な形で観測されていくことになると考えられることになるのですが、
このように、
少なくとも一年に2回は、地球上のいずれかの地点において日食が観測される機会が生じることになると考えられることになるのです。
部分日食が観測される可能性のある最大で年に5回の機会
また、その一方で、
一つの黄道と白道の交点付近において一度目の日食が起こった後で、太陽の側がまだ同じ黄道と白道の交点付近にとどまっているうちに、そのちょうど1か月ほど後に、二周目の月が同じ交点付近へと近づいていくことによって二度目の日食が起こるといったケースもあり、
そのようなケースにおいては、太陽と月の位置は一度目の日食のときも二度目の日食のときも交点の位置からは少しずれているギリギリの位置で日食が起こることになると考えられることになるため、
このように、
一つの黄道と白道の交点付近において1か月おきに連続して2回の日食が起こるケースにおいては、日食の回数自体は多くなる代わりに、皆既日食や金環食といったより完全な形での日食は観測することができずに、部分日食のみが観測されることになると考えられることになります。
また、前述したように、
天球上における太陽と月の位置関係においては、太陽の側は黄道上を約365.24日という周期で一周していくことになるのに対して、月の側が白道を一周する周期は約27.32日であると考えられることになるのですが、
この時、実際の天球上における太陽と月の位置関係においては、月が地球の周りを一周している間には、太陽も少しずつ黄道上を移動していってしまうことになるため、
地球からの観測において太陽と月が同じ方向に来る周期、すなわち、月の満ち欠けの周期にあたる周期は、月が白道を一周する周期にあたる27.32日よりも少し長い約29.53日の周期になると考えられることになります。
そして、
黄道を一周する太陽の年周周期にあたる約365.24日という周期を、こうした月の満ち欠けの周期にあたる約29.53日の周期で割ると、
365.24÷29.53≒12.37
となり、
月の満ち欠けの周期の約3分の1、すなわち、約11日ほどの余りが出てしまうことになるのですが、
こうしたことから、
そうした一年の終わりの11日ほどの余りの期間に再び日食の機会が訪れるケース、具体的には、例えば、上記の図において示したように、
1月の初旬に1回目の日食が起こった後で、その1か月後の2月に2回目の日食が起こり、その後、6月と7月に3回目と4回目の日食が起こったのちに、さらに、12月の下旬に5回目の日食が起こるといったケースも実際に起こることがあると考えられることになるのです。
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以上のように、
こうした日食と呼ばれる現象が地球上における実際の観測において一年の中で実際に観測されることになる回数としては、
皆既日食と金環食といった完全な日食のみをカウントする場合には、一年で最大で2回の観測される機会があると考えられるのに対して、
部分日食も含めた場合には、少なくとも一年に2回、非常にまれなケースではあるものの一年で最大で5回の日食が観測される可能性があると考えられることになるのです。
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次回記事:月食とは何か?①英語とフランス語とドイツ語の月食の表現と「一時的な消失」あるいは「暗闇」や「暗黒」としての大本の意味
前回記事:日食と新月の違いとは?天球上における太陽と月の位置関係の違いのあり方に基づく両者の具体的な特徴のまとめ
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