桿菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑥インフルエンザ菌と軟性下疳菌というヘモフィルス属に属する細菌の具体的な特徴
このシリーズの前回の記事では、桿菌と呼ばれる細菌のグループに分類されることになる代表的な細菌の種類のなかでも、
結核菌とらい菌というマイコバクテリウム属に分類される代表的な二つの細菌の種類について詳しく考察してきましたが、
今回の記事では、それに引き続いて、
インフルエンザ菌と軟性下疳菌というヘモフィルス属に分類されることになる二つの細菌の種類の具体的な特徴と、それぞれの桿菌によって引き起こされることになる細菌感染症の具体的な症状のあり方について、順番に考察していきたいと思います。
小型の多形性桿菌の種類としてのヘモフィルス属の位置づけ
まず、こうした
インフルエンザ菌と軟性下疳菌と呼ばれる二つの桿菌は、どちらもヘモフィルス属と呼ばれる同じ細菌の種族に属する細菌の種類であり、
こうしたヘモフィルス属と呼ばれる細菌の種族には、細菌本来の基本的な形状は、桿菌と呼ばれる細長い棒状の形状をした細菌のグループに分類されることになるものの、
実際には、球形や糸状といった様々な形状へと変化していく多形性を示すグラム陰性の小型の桿菌の種族として位置づけられることになると考えられることになります。
インフルエンザ菌の具体的な特徴とインフルエンザウイルスによるインフルエンザ罹患後の肺炎などの二次感染の原因菌としての位置づけ
そして、
こうしたインフルエンザ菌と軟性下疳菌というヘモフィルス属に分類されることになる二つの細菌の種類このうち、前者の
インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae、ヘモフィルス・インフルエンザ)とは、長さ1~1.5マイクロメートルほどの棒状や球形といった様々な形状を示す多形性で小型のグラム陰性嫌気性桿菌の一種であり、
こうしたインフルエンザ菌と呼ばれる細菌は、飛沫感染などを通じて、咽頭や鼻腔といった上気道を中心に感染を広げていくことによって風邪の原因となる病原菌の一種としても位置づけられることになるほか、
細菌による感染が気管支や肺といった気道のより深い領域へと進行していってしまった場合などには、気管支炎や肺炎、あるいは、中耳炎や副鼻腔炎さらには髄膜炎といった呼吸器系を中心とする多様な症状を引き起こしていってしまう危険性があると考えられることになります。
ちなみに、
こうしたインフルエンザ菌という呼び名自体は、ウイルスと呼ばれる病原体の存在自体がいまだ明確には認知されていなかった1892年当時、
この細菌が、インフルエンザを発症した患者の体内からインフルエンザの病原体の候補となる細菌として検出されていたことから、そうした呼び名が付けられることになったと考えられることになるのですが、
こうしたインフルエンザ菌と呼ばれる細菌は、インフルエンザウイルスによって引き起こされるさるウイルス感染症であるインフルエンザに感染したのちに、引き続いて罹患する危険性のある肺炎などの二次感染の原因菌となる細菌の種類としても位置づけられることになるのです。
軟性下疳菌の具体的な特徴と「軟性下疳」という病名の由来
そして、それに対して、後者の
軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi、ヘモフィルス・デュクレー)とは、前述したインフルエンザ菌と同様に長さ1~1.5マイクロメートルほどの多形性で小型のグラム陰性嫌気性桿菌の一種として分類される細菌であり、
こうした軟性下疳菌と呼ばれる細菌は、主に性的な接触によって感染を広げていくことになるため、主に、性感染症の原因となる細菌の種類として位置づけられることになります。
そして、
こうした軟性下疳菌を原因とする軟性下疳(なんせいげかん)と呼ばれる細菌感染症においては、陰部を中心とする粘膜やリンパ節などの部位に紅色の丘疹や潰瘍などが形成されていくことになるのですが、
こうした「軟性下疳」という病名のうちに含まれている「疳」(かん)という言葉は、もともと、皮膚や粘膜に形成される小さな腫物(はれもの)のことを意味する言葉であり、
つまりは、
陰部を中心とする下半身において現れる柔軟な性質をもった小さな腫物という意味で、こうした「軟性下疳」という病名が付けられることになったと考えられることになるのです。
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このシリーズの前回記事:桿菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑤結核菌、らい菌というマイコバクテリウム属に分類される二つの細菌の具体的特徴
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