カリニ肺炎の病原体が原虫ではなく真菌に分類し直された具体的な理由とは?
以前に「真菌症の代表的な種類」などの記事でも書いたように、エイズ(AIDS)に代表されるような免疫不全の状態にある患者に対して重篤な症状を引き起こすことになる原虫を原因とする日和見感染症の種類の中には、
かつては、クリプトコッカス症やクリプトスポリジウム症などと共に、カリニ原虫を病原体とするカリニ肺炎と呼ばれる感染症の種類も分類されていたのですが、
こうしたカリニ肺炎の病原体とされていたカリニ原虫と呼ばれていた生物の種族は、その後の病原体に対する遺伝子解析技術の進展によって、
現在では、ニューモシスチス・イロベチイと呼ばれる真菌の一種であることが明らかとなっていて、
それに伴って、
こうしたカリニ肺炎と呼ばれる原虫感染症も、ニューモシスチス肺炎と呼ばれる真菌感染症の一種として分類し直されることになっていったと考えられることになります。
それでは、
具体的にはどのような生物学的な特徴の違いに基づいて、かつてはカリニ原虫と呼ばれていたカリニ肺炎の病原体となる生物の種族が、新たに真菌の一種として分類し直されることになったと考えられることになるのでしょうか?
カリニ肺炎の病原体がカリニ原虫と呼ばれるようになった理由とは?
まず、
こうしたカリニ肺炎と呼ばれる感染症の原因となる現在ではニューモシスチス・イロベチイと呼ばれている病原体は、
1909年に、ブラジルの細菌学者であったカルロス・シャーガスによってはじめて発見されることになるのですが、
光学顕微鏡などにおける通常の観察においては、こうした現代ではニューモシスチス・イロベチイ、当時はニューモシスチス・カリニと呼ばれていた病原体は、
冒頭でも挙げたクリプトコッカスなどのほかの原虫感染症の病原体となる原虫の種族などと非常によく似た形態をしていたため、新種の原虫の一種として捉えられていくことになります。
さらに、その後の病理学的な研究においても、
こうしたニューモシスチス・カリニと呼ばれていた病原体に対しては、真菌に対して効力を発揮するはずの一般的な抗真菌薬の多くが無効であるのに対して、
ペンタミジンやアトバコンといった抗原虫薬が効力を発揮することが明らかとなっていったため、
当時の医学界においては、こうしたカリニ肺炎の原因となるニューモシスチス・カリニと呼ばれる病原体は、カリニ原虫と呼ばれる原虫の一種として分類されていくことになっていったと考えられることになるのです。
カリニ肺炎の病原体が原虫ではなく真菌として再分類されるまでの具体的な経緯
しかし、その後、
1931年に、ドイツの物理学者であったマックス・クノールとエルンスト・ルスカによって世界ではじめて電子顕微鏡が開発され、
1950年代頃からこうした電子顕微鏡が多くの分野において活用されていくようになると、次第に、それまでカリニ原虫と呼ばれてきたカリニ肺炎の病原体についても、それまでよりも詳細な細胞構造が解明されていくことになり、
こうしたカリニ肺炎の病原体においては、原虫においてしばしば見られるような鞭毛や仮足といった運動器官が一切存在せず、原虫の細胞には本来存在しないはずの細胞壁といった構造が存在することなどが明らかになっていくことによって、
次第に、こうしたカリニ肺炎の病原体は、原虫よりも真菌の一種として分類するほうがより適切な分類のあり方ではないか?という疑問が呈されていくことになります。
そして、その後、
冒頭でも述べた遺伝子解析の進展による十分な裏付けも経たうえで、
1999年に、こうしたかつてはニューモシスチス・カリニあるいはカリニ原虫と呼ばれていた病原体が、新たにニューモシスチス・イロベチイとして命名し直されると同時に、
こうしたカリニ肺炎すなわちニューモシスチス肺炎の病原体であるニューモシスチス・イロベチイは、原虫ではなく真菌に分類される病原体の種族として、正式に再分類されることになったと考えられることになるのです。
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つまり、
こうしたカリニ肺炎の病原体となる生物の種族が、カリニ原虫と呼ばれる原虫の一種から、ニューモシスチス・イロベチイと呼ばれる真菌の一種として分類し直されることになった具体的な理由について、
一言でまとめると、
1909年におけるカリニ肺炎の病原体の発見から現代に至るまでの電子顕微鏡の開発や遺伝子解析技術の発達といった科学技術における大きな進展を経たうえで、
こうしたカリニ肺炎と呼ばれてきた感染症の病原体には、
細胞自体が運動性を持たない代わりに細胞壁を持つという原虫ではなく真菌においてのみ見られる生物学的な特徴が存在することが明らかとなっていったため、
こうしたかつてはカリニ原虫と呼ばれてきた病原体が、新たにニューモシスチス・イロベチイと呼ばれる真菌の一種として分類し直されることになったと考えられることになるのです。
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