世界の究極の構成単位である17の素粒子と4つの種族と2つのグループへの分類、世界はいくつの元素からできているのか?④
このシリーズの前回で書いたように、
デモクリトスに始まる原子論の思想は、
ルネサンス期以降の近代科学の発展を通じて
近代原子論という新たな形で復活することになり、
近代科学においては、化学元素としての原子こそが
物質を構成するそれ以上分割不可能な究極の単位とされることになります。
しかし、
現代物理学においては、
そうした物質を構成する基本単位としての原子は
陽子と中性子、電子から構成され、
それらの陽子や中性子といった粒子も
さらに素粒子から構成されていることが分かっていき、
素粒子こそが世界に存在するあらゆる物理的存在を構成する
究極の構成単位であることが明らかとなります。
十七の素粒子の種類と二つのグループへの分類
そして、
現代物理学の標準理論(Standard Model、通称SM)においては、
以下の17種類の素粒子によって
世界に存在するするあらゆる物理的存在が構成されることになります。
その17種類の素粒子とは、すなわち、
アップクォーク、チャームクォーク、トップクォーク、
ダウンクォーク、ストレンジクォーク、ボトムクォーク、
電子、ミュー粒子、タウ粒子、
電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノ
光子、Wボソン、Zボソン、グルーオン
そして、ヒッグス粒子
という全部で17の粒子です。
そして、
世界の究極の構成単位であるこれらの17の素粒子は、
それぞれの粒子がもつ性質と機能にしたがって、大きく分けて、
ボソン(ボース粒子)とフェルミオン(フェルミ粒子)という
二つのグループに分類されることになります。
物質を構成するボソンと力を伝達するフェルミオン
こうした大枠における素粒子のグループ分けにおいては、
フェルミオン(fermion、フェルミ粒子)には、
直接物質を構成することに関わる素粒子が分類され、
もう一方のボソン(boson 、ボース粒子)には、
光などの電磁力や、粒子同士を結合させる一種の引力である核力などの
素粒子同士の間で働く力を伝達することに関わる素粒子が分類されることになります。
例えば、
人間の脳においては、
神経細胞であるニューロンが具体的な情報処理を行うのに対して、
細胞同士の接合部分であるシナプスが情報を伝達するという関係において
脳全体の情報処理システムが成立していると考えられますが、
いわば、こうした脳における
ニューロンとシナプスの関係のように、
素粒子の分類である
ボソンとフェルミオンの間には、
フェルミオンが具体的な物質を構成するに対して、
ボソンが電磁力や核力といった様々な力を伝達するという
一種の役割分担のような関係があり、
こうしたボソンとフェルミオンの相互関係において、
宇宙全体の物理的秩序が成り立っていると考えられることになるのです。
ボソンとフェルミオンに属する合わせて四つの素粒子の種族
そして、さらに、
物質を構成する素粒子のグループであるフェルミオンは
クォークとレプトンという二つの下位種族に分類されます。
クォーク(quark)には、
陽子や中性子といった比較的質量の大きい複合粒子を構成する素粒子が
分類されるのに対して、
レプトン(lepton)には、
レプトンの語源がギリシア語の”leptos(レプトス、軽い)”から来ているように、
電子などの比較的質量が小さい粒子や
ニュートリノといった質量がほとんどゼロに近い粒子が
分類されることになります。
また、
もう一方の素粒子のグループである、
力の伝達を担う素粒子のグループであるボソンは
ゲージ粒子とスカラー粒子という二つの種族に分類されます。
ゲージ粒子(ゲージボソン、gauge boson)には、
電磁波の一種である光を伝達する光子と
核力を媒介するWボソン、Zボソン、グルーオンが分類され、
スカラー粒子(スカラーボソン、scalar boson)には、
素粒子に質量を与える働きを持つ
ヒッグス粒子が分類されることになります。
ちなみに、ヒッグス粒子は、
2012年にCERN(セルン、欧州原子核研究機構)がついに
その粒子の存在を実証したと発表したことで話題となった粒子でもありますが、
この2012年におけるヒッグス粒子の発見によって、
標準理論における17の素粒子の存在が理論面だけではなく、実証面においても
すべて確認されたことになったので、
ヒッグス粒子は、標準理論の素粒子論の完成における
一つの重要な指標、メルクマールとなった粒子でもあります。
・・・
以上のように、
現代物理学の標準理論における全17の種類の素粒子のそれぞれは、
アップクォーク、チャームクォーク、トップクォーク、
ダウンクォーク、ストレンジクォーク、ボトムクォーク、
という6つの素粒子はクォークという種族に、
電子、ミュー粒子、タウ粒子、
電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノ
という6つの素粒子はレプトンという種族に、
光子、Wボソン、Zボソン、グルーオン
という4つの素粒子はゲージ粒子という種族に、
ヒッグス粒子
という1つの素粒子はスカラー粒子という種族に
それぞれ分類されることになります。
そして、
これらのクォーク、レプトン、ゲージ粒子、スカラー粒子という
素粒子の四つ種族は、さらに、
クォークとレプトンは
フェルミオンという物質の構成を担う素粒子グループに
ゲージ粒子とスカラー粒子は
ボソンという粒子間の力の伝達を担う素粒子グループに
それぞれ分類されることになりますが、
以上のような
クォーク、レプトン、ゲージ粒子、スカラー粒子という四つ種族と、
フェルミオンとボソンという二つのグループという分類において把握される
17の素粒子によって
世界に存在するあらゆる物理的存在と宇宙全体の物理的秩序が成り立っている
と考えられることになるのです。
・・・
このシリーズの前回記事:原子論の二千年におよぶ暗黒時代と近代原子論の萌芽と進展、世界はいくつの元素からできているのか?③
このシリーズの次回記事:現代物理学における四つの根源的な力の統一と万物理論、世界はいくつの元素からできているのか?⑤
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