動物性の自然毒の代表的な種類とは?①テトロドトキシを原因とする食中毒の具体的な症状および毒素としての性質と予防対策
「植物性の自然毒の代表的な種類」についての一連の記事で考察してきたように、植物性の自然毒には、トリカブトに含まれるアコニチンや、チョウセンアサガオやベラドンナといったナス科の有毒植物に含まれるアトロピン、さらには、ジャガイモの芽や皮などに含まれるソラニンなどといった多様な毒性成分の種類が挙げられることになるのですが、
それに対して、
動物性の自然毒に分類される代表的な毒性成分の種類としては、
テトロドトキシンやサキシトキシン、コノトキシン、シガトキシン、さらには、マイトトキシン、スカリトキシン、シガテリン、パリトキシン、ブレベトキシン、ペクテノトキシン、オカダ酸、アザスピロ酸、ドウモイ酸といった、主に海洋生物などに多く含まれている毒性成分の種類が挙げられることになります。
それでは、
こうしたテトロドトキシンに代表されるような動物性の自然毒に分類される毒性成分は、それぞれ具体的にどのような特徴を持った毒物の種類であると考えられ、
そうしたそれぞれの毒素は人体に対してどのような食中毒の症状を引き起こすことになると考えられることになるのでしょうか?
テトロドトキシンを含む生物の代表的な種類と引き起こされる食中毒の具体的な症状
①テトロドトキシン
このうち、はじめに挙げたテトロドトキシン(Tetrodotoxin)は、一般的には、トラフグやマフグ、クサフグといったフグ科に属する魚が持つ毒として有名な毒成分であると考えられることになりますが、
その他にも、こうしたテトロドトキシンと呼ばれる毒素を体内に蓄積する生物の種類としては、ヒョウモンダコやツムギハゼ、カブトガニ、スベスベマンジュウガニといった海洋生物の種類などが挙げられることになります。
そして、
こうしたテトロドトキシンと呼ばれる毒素は、人体に対しては神経毒として働くことによって、中枢神経や運動神経における神経伝達を遮断して全身に麻痺の症状を引き起こしていくことになり、
摂食後から数十分から数時間で唇や舌先、あるいは、手足のしびれといった症状が現れたのち、意識は比較的明瞭なまま、全身の骨格筋の麻痺や、呼吸器系の麻痺が進行していってしまうことによって、
通常の場合は、24時間以内に、呼吸困難や血圧の低下から、呼吸停止や心停止へと至ることになってしまうという冒頭で挙げた様々な種類の動物性の自然毒のなかでも、極めて危険性の高い毒素の種類として位置づけられることになると考えられることになるのです。
テトロドトキシンの毒素としての耐熱性の高さと食中毒の予防対策
それでは、
こうしたテトロドトキシンによる食中毒を避けるためには、具体的にどのような予防対策をとることが有効であるのか?ということについてですが、
こうしたテトロドトキシンと呼ばれる毒素は、熱に対する耐性が非常に高く、300 ℃以上に加熱してもほとんど分解されないため、通常の細菌やウイルスを原因とする食中毒などの場合とは異なり、
煮る・焼く・揚げるといった通常の調理方法によって解毒を行うことはほとんど不可能であると考えられることになります。
したがって、
こうしたテトロドトキシンを原因とする食中毒の発生を未然に防止するためには、そもそもテトロドトキシンを含んでいる海洋生物を食べること自体を避けることが一番確実な方法であると考えられることになるのですが、
それでも入念な注意を払ったうえで、そうしたテトロドトキシンと呼ばれる毒素を体内に蓄積している可能性のある海洋生物を食材として用いる場合には、
フグの卵巣のようなテトロドトキシンが多く蓄積している部位をあらかじめ安全に切除しておいてうえで、食用とする部位との接触や混入を避けるといった処置や、
石川県の郷土料理でもある河豚の糠漬け(ふぐのぬかづけ)などのように、フグの卵巣を2年以上の工程にもわたって塩漬けおよび糠漬けにすることによって徹底的に毒抜きをするといった特殊な加工処理などを行うことが必要となると考えられることになるのです。
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