理性とは何か?⑤アリストテレスの「論理学」における三段論法に代表される演繹的推論を中心とする論理的な思考のあり方としての理性の定義

前回の記事で書いたように、プラトンの哲学においては、人間の心における理性の働きのあり方は、

通常の学問における演繹的推論などの論理的思考に基づく認識のあり方のことを意味するディアノイア(間接的認識)と、真なる実在としてのイデアそのものの存在を直観的に把握していく心の働きであるノエーシス(直知的認識)と呼ばれる

二つの認識作用のあり方へと区分されていく形で捉えられていくことになるのですが、

こうした人間の心における知的な認識の働きのあり方を示す理性の概念は、

その後のアリストテレスの哲学体系の内において、その概念自体がもつ意味内容と位置づけのあり方に大きな変化が生じていくことになると考えられることになります。

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アリストテレスの「論理学」における理性の定義

アリストテレスの哲学体系の内においては、

「自然学」「倫理学」「政治学」、さらには、「形而上学」といった多様な学問分野についての探求が進められていくことになり、

そうしたそれぞれの学問分野の区分の名前自体も、もともとはアリストテレスの著作集の名前に由来しているものが多いと考えられることになるのですが、

こうしたアリストテレスによって探求が進められた数多くの学問分野の一つである「論理学」と呼ばれる研究領域も、

その学問分野の存在自体がアリストテレスによって基礎が築き上げられた学問分野であると考えられることになります。

日本語における「論理学という言葉がその訳語となっている英語におけるlogic(ロジック)ドイツ語におけるLogik(ローギック)といった言葉は、

その大本の語源においては、

ギリシア語において理性や言葉あるいは原理や理法といった意味する言葉であるlogos(ロゴス、あるいは、その形容詞形にあたるlogikos(ロギコス)という言葉に由来すると考えられることになるのですが、

こうしたことからも分かる通り、

アリストテレスの「論理学」の議論においては、人間の心における理性の働きに基づく論理的思考のあり方や言語を用いた論理展開のあり方についての詳細な研究と分析が進められていくことになります。

そして、特に、

『分析論全書』と呼ばれる著作集などを中心に進められていくアリストテレスの哲学における論理学の議論においては、

ギリシア語におけるsyllogismos(シュロギスモス)、すなわち、日本語でいうところの三段論法に代表されるような演繹的推論のあり方を中心として、

こうした人間の認識における理性の働きのあり方についての探求が進められていくことになるのです。

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アリストテレス哲学における知性(ヌース)と理性(ロゴス)の区別

以上のように、

アリストテレスの「論理学」の議論においては、

人間の認識における理性の働きのあり方は、三段論法と呼ばれる推論形式に代表されるような前提からの必然的な論理展開によって結論を導き出す演繹的推論を中心とする論理的な思考の働きのあり方として位置づけられていくことになると考えられることになります。

そして、その一方で、

こうしたアリストテレス哲学における人間の心における知的な認識作用のあり方についての一連の学問的探求においては、

前述したような論理的な推論としての理性の働きのうちには含まれないようなより高度な知的認識作用のあり方、

すなわち、

前回の記事でも取り上げたプラトン哲学においてノエーシス(直知的認識)として位置づけられている論理的な推論の過程を経ずに、対象そのものの本質を直観的に把握していく認識作用のあり方は、

人間における通常の理性的な認識のあり方を超える認識作用として捉えられていくことによって、

それは、すべての存在を一挙に把握する神における認識のあり方へも通じる認識作用のあり方のことを意味するヌース(nousと呼ばれる知のあり方として捉え直されていくことになります。

こうしたギリシア語におけるヌース(nousという言葉は、通常の場合、日本語においては「知性」と呼ばれる概念として訳されていくことになるのですが、

そういった意味では、

こうしたアリストテレスの哲学体系の内においては、

演繹的推論を中心とする論理的な思考の働きのあり方のことを意味するロゴス(logosとしての理性の働きのあり方から、

対象そのものの本質を直観的に把握していくプラトン哲学における直知的認識や知的直観と呼ばれるような神の認識へも通じる認識作用のあり方を含むヌース(nousとしての知性の働きのあり方が区別され、

知性(ヌース)理性(ロゴス)の両者がそれぞれ別の認識作用のあり方を意味する概念として捉え直されていくことによって、

人間の心における理性の働きのあり方が新たな形で位置づけ直されていくことになると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:理性とは何か?⑥カントの認識論哲学における人間の意識における最上位の認識能力としての理性の存在の位置づけ

前回記事:理性とは何か?④プラトンの認識論における間接的認識と直知的認識の区別と人間の理性が向かう究極の探求対象としてのイデア

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