『風の谷のナウシカ』で主人公の服の色が赤から青へ変わった理由とは?②王蟲の血の守りによってコーティングされた青き衣
前回書いたように、映画版の『風の谷のナウシカ』のクライマックスの場面においては、
ナウシカの服の色がペジテの少女と交換した胸に紋章の描かれた赤色の服から王蟲の流した青い血の色によって染め上げられることによって服全体も真っ青に染まり、青き衣をまとったナウシカの姿が現れるという赤から青への印象的な色彩の変化が描かれていくことになります。
そして、
こうした映画版におけるナウシカの服の色の変化は、通常の場合、青い服に赤い血がついて血まみれになっても、服自体の色まで真っ赤になってしまうということはあまり考えられないように、
赤い色の服が王蟲の青い血を浴びただけで、そのまま真っ青に染まってしまうというのも通常の場合は少し考えにくい現象であると考えられることになるのですが、
それについては、以下で考えていくように、
腐海の森を守る神聖な生き物である王蟲の力がその青い血を通じてナウシカの服、そして、彼女自身へと流れ込むことによって、
通常とは異なる色の染まり方で、服の色が変わったという形で説明することが可能であると考えられることになります。
クシャナとナウシカの旅での蟲たちとの邂逅と王蟲の血の不思議な力
漫画版の『風の谷のナウシカ』においては、おとりにされていた王蟲の子の命を自らの身を挺して救うことによって、故郷である風の谷を腐海に飲み込まれてしまう危機から救い出したナウシカは、
その後、
蟲たちの群れが何か重大な異変を感じ取ってさらに南へと移動していった謎を解き明かすために、一時は敵対関係にあったトルメキアの皇女であるクシャナと共に、広大な腐海の森を越えて、南方の土鬼(ドルク)の地へとおもむく長旅へと出発することになるのですが、
そうした南方へと向かう旅の途中で、蟲たちに襲われていたトルメキア兵を助け出そうとしたナウシカが、兵たちの身代わりになって羽蟲(はむし)に食べられてしまいそうになる場面が出てくることになります。
そして、
こうしたナウシカが羽蟲に襲われる場面では、ナウシカを捕まえて食べてしまおうとした羽蟲は、ナウシカを丸ごと口の中に入れてしまった後で、
しばらくして動きを止めると、せっかく捕えたはずの獲物を飲み込むのをやめて、口を開いてナウシカを優しく元の場所へと押し戻し、そのまま何もせずにその場を去っていくことになります。
そして、そのすぐ後の場面では、
このことを不可解に思ったナウシカがしばらく考えて、このような不思議な現象が起こった理由にはたと思い当たり、
「服を青く染めた王蟲の血に蟲たちの怒りを鎮めてくれる力があるなんて。」
(『風の谷のナウシカ』第三巻、47ページ。)
とつぶやく場面が出てきます。
そして、この場面では、
すでにナウシカのことを口の中に入れてしまっていた羽蟲に服の色を判別する手段はないので、
ナウシカを捕食しようとした羽蟲は、単に服の色が王蟲の血の色と同じ青い色をしていたという理由から彼女を捕食することをやめたわけではなく、
自らの口の内側に触れる服の表面の感触、あるいは、その服自体に込められた何らかの超常的な力によって、それが自分が口にしてはいけない神聖な存在に関わるものであるということを判別するに至ったと考えられることになるのです。
王蟲の青い血の守りのコーティングによって塗り替えられた赤い服
以上のように、
ナウシカが王蟲の子の命を自らの身を挺して救うことによって全身にその血を浴びて、王蟲との交流を結んだ時、
そこでは、単にナウシカが着ていた服の色が赤から青へと変わるという単なる色彩の変化を超えるような何らかの根本的な変化が、ナウシカの服とその服を着ているナウシカ自身の身にもたらされていたと考えられることになり、
こうしたナウシカの服の色が青へと変化していった際には、それと同時に、王蟲の血に浸されたナウシカの服と、それを着ているナウシカ自身に対して、
腐海の森に生きるすべての生物のなかで最も神聖な生き物である王蟲の血に込められた強い守りの力が備わるに至ったとも考えられることになります。
そして、こうしたことを踏まえて考えると、
映画版の『風の谷のナウシカ』のクライマックスの場面において、ナウシカが着ていた服の色が赤から青へと変化するという印象的な色彩の変化のあり方は、
単に、ナウシカの服が王蟲の血に含まれる青い色素によって色付けがなされたということだけを意味しているわけではなく、
それは言わば、人知を超える超常的な力を持った神聖な生き物である王蟲の青い血の守りによって服全体がコーティングされているような状態へと変化したと解釈することができると考えられることになります。
つまり、
こうしたナウシカの服の赤から青への色彩の変化においては、通常の人間の手による服の染め方と同等の条件によって赤い服の色に青い色の染料が混ざったということが意味されているわけではなく、
本来の赤い色をした服の上に、守りの呪文や装甲のようなバリアが張られるような形で、王蟲の青い血の守りによって服全体がコーティングされることで、
そうした王蟲の青い血の色そのままに服全体が真っ青に塗り替えられるに至ったと考えられることになるのです。
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次回記事:腐海の森が生まれた本当の理由とは?旧世界の人類の壮大な計画によって造られた人工の浄化装置としての腐海の森の真実の姿
前回記事:『風の谷のナウシカ』で主人公の服の色が赤から青へ変わった理由とは?①映画版と漫画版におけるナウシカの服の色の違い
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