四凶と四罪の違いとは?神に近い存在と人に近い存在としての中国神話における両者の位置づけのあり方の違い

前々回前回の記事で書いたように、中国神話においては、天下に災厄と害悪をもたらす存在として、四凶四罪と呼ばれる悪しき者の名が挙げられていくことになります。

そして、一般的には、

四凶としては、渾沌(こんとん)・窮奇(きゅうき)・檮杌(とうこつ)・饕餮(とうてつ)の四者が挙げられるのに対して、

四罪としては、共工(きょうこう)・驩兜(かんとう)・三苗(さんびょう)・鯀(こん)の四者が挙げられることになるのですが、

それでは、

こうした四凶あるいは四罪と呼ばれる存在の神話や伝承のなかにおける位置づけのあり方には、それぞれ具体的にどのような違いがあると考えられるということになるのでしょうか?

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神に近い存在としての四凶と人に近い存在としての四罪の位置づけの違い

四凶と四罪のそれぞれに分類される四者同士の間に存在する共通点と相違点について考えていくと、

まず、

四凶として挙げられている渾沌・窮奇・檮杌・饕餮の四者も、四罪として挙げられている共工・驩兜・三苗・鯀の四者も、

両方とも、背信反逆怠惰暴力性といった人間の心に生じる様々な悪徳を体現する存在として示されているという点では互いに共通していると考えられることになるります。

しかし、その一方で、

神話と伝承の世界における両者の姿の描かれ方には大きな差異があり、

まず、

四罪として挙げられている共工・驩兜・三苗・鯀の四者については、

共工は古代中国の伝説帝王である神農(しんのう)の血を引く炎帝氏(えんていし)の子孫であり、

驩兜は古代中国の聖君である五帝のうちの一人である堯(ぎょう)の子孫

三苗は古代中国の南西部に居住していたとされる南方の異民族の名前

は古代中国の聖君である五帝のうちの一人である顓頊の子孫にあたる人物であるとされるように、

これらの者たちは、基本的には、氏族における血統までもが比較的に明確な形で示されている人間の姿形を持った歴史上の現実的な存在として描かれていると考えられることになります。

それに対して、

四凶として挙げられている渾沌・窮奇・檮杌・饕餮の四者については、

渾沌は、全身が長い毛によって覆われた犬のような体に爪のない熊のような大足が付いた姿をしていて、

窮奇は、ハリネズミのような鋭い毛が生えた牛や、翼の生えた虎のような姿をしていると伝えられ、

檮杌は、長い尾が生えた虎のような力強い体に、猪のような長く鋭い牙の生えた人間の頭を持ち、

饕餮は、羊や牛のような体に、大きな口羊のような曲がった角が生えた頭を持ち、頭部と爪は人間のようでありながら脇の下に目を持つとされているように、

これらの存在は、通常の人間の姿形とはかけ離れた妖怪や霊獣、すなわち、人間を超えた超常的な存在という意味において、人間というよりはむしろ神に近い存在として描かれていると考えられることになります。

つまり、

四罪として挙げられている四者は、基本的には人間の身でありながら人並み外れた悪しき行いに手を染めてしまったがゆえに、国と社会に害悪を及ぼす源となる存在として断罪されることになったという意味で神よりも人間に近い存在として位置づけられていると考えられるのに対して、

四凶として挙げられている四者は、四罪と同様に、人民を苦しめ害悪を及ぼす天下に災厄をもたらす元凶となる存在ではあるものの、それは、人ならざる姿形をした超常的な悪しき力を持った存在であるという意味で人間よりも神に近い存在として位置づけられているという点において、

両者の間には大きな違いがあると考えられるということです。

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以上のように、

四凶四罪のそれぞれに分類される悪しき存在の神話や伝承の世界における具体的な位置づけのあり方の違いとしては、

四罪に分類される共工・驩兜・三苗・鯀の四者は、

基本的には人間の身でありながら、人並み外れた悪しき行いによって国と社会に害悪を及ぼす源となる悪人や罪人の代表格として位置づけられているのに対して、

四凶に分類される渾沌・窮奇・檮杌・饕餮の四者は、

人間を超えた超常的な存在としての神に近い存在であり、その悪しき力によって天下に災厄をもたらす元凶となる妖怪や悪神として位置づけられているといった点に、

こうした両者の間に存在する神話と伝承の世界における位置づけのあり方の違いを見いだすことができると考えられることになるのです。

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次回記事:中国神話における七つの大罪とは?四凶と四罪に含まれる七つの悪徳の選別のあり方

前回記事:四罪とは何か?中国神話において国と社会に害悪を及ぼす源とされた共工・驩兜・三苗・鯀という四人の罪人の名

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