相利共生と片利共生の違いとは?生態系における具体的な共生関係の例と地球上のすべての生物同士の間に成立する共生関係
共生(きょうせい)とは、一言でいうと、
異なる種類の生物同士が同じ場所で相互に影響を及ぼし合うような密接な関係を営みながら一緒に生活している状態のことを意味する言葉として定義することができると考えられることになります。
そして、
こうした共生と呼ばれる生物学的な関係のあり方は、大きく分けて、
相利共生と片利共生と呼ばれる二つの共生関係のあり方へと分類されていくことになると考えられることになるのですが、
今回の記事では、こうした相利共生と片利共生と呼ばれる二つの共生関係のあり方の具体的な特徴の違いと、それぞれに分類されることになる代表的な生物同士の共生間の例について改めてまとめて考察していきたいと思います。
相利共生の具体的な特徴と生態系における代表的な相利共生の例
まず、はじめに挙げた
相利共生(そうりきょうせい)とは、共生関係にある二つの種類の生物同士が相互に利益を得ていて、互いに有益な関係を結んでいる状態のことを意味する言葉として定義することができると考えられることになります。
そして、
こうした相利共生と呼ばれる共生関係のうちに位置づけられる生態系における生物同士の具体的な共生関係の例としては、
例えば、
アリとアブラムシ、ヤドカリとイソギンチャク、あるいは、虫媒花と昆虫の関係や、人間と腸内細菌などの関係といった生物同士の関係性や結びつきのの例が挙げられることになります。
そして、このうち、はじめに挙げた
アリとアブラムシの関係においては、アリの側がアブラムシの天敵となるテントウムシなどの外敵を追い払ってあげる代わりに、アブラムシの側は尾部から分泌されるアリの好物である甘い分泌物を供給するという関係、
ヤドカリとイソギンチャクの関係においては、ヤドカリの側がイソギンチャクのことを栄養が豊富な海域へと速く運んでいってあげる代わりに、イソギンチャクの側は自分の体に備わった刺胞と呼ばれる毒針を射出する器官の働きによってヤドカリの天敵となるタコなどの外敵の襲撃から保護するという関係、
虫媒花と昆虫の関係においては、サクラやアブラナといった虫媒花の側がチョウやハチなどの昆虫に花の甘い蜜を吸わせてあげる代わりに、昆虫の側はそうした採蜜の際に付着した花粉の運び手となるという関係、
人間と腸内細菌の関係においては、人間の側が腸内に常在する乳酸菌やビフィズス菌といった腸内細菌に自分が摂取した食物の一部を栄養源として供給する代わりに、腸内細菌の側は外部から侵入してくる病原性の強い細菌の種族が増殖するのを防いで腸内環境を適切な状態に保つことに貢献するといった関係が成立していると考えられるように、
上述したような二つの互いに異なる生物の種類同士の間で成立する共生関係の例においては、相利共生の関係に基づく共生生活が営まれていると考えられることになるのです。
片利共生の具体的な特徴と生態系における代表的な片利共生の例
そして、それに対して、もう一方の共生関係にあたる
片利共生(へんりきょうせい)とは、
共生関係にある二つの種類の生物のうちどちらか一方の側だけが利益を得ていて、もう一方の側は何の利益も損害も受けていない状態のことを意味する言葉として定義することができると考えられることになります。
そして、
こうした片利共生と呼ばれる共生関係のうちに位置づけられる生態系における生物同士の具体的な共生関係の例としては、
例えば、
カクレウオとナマコ、コバンザメとクジラといった動物同士の共生関係や、コケ類や地衣類と一般的な樹木との間に成立する植物同士または植物と菌類の間の共生関係の例などが挙げられることになると考えられることになります。
そして、このうち、はじめに挙げた
カクレウオとナマコの関係においては、カクレウオの側はナマコの腸内を自分の隠れ家として利用することによって利益を得ているのに対して、ナマコの側は腸内に入り込んだカクレウオはじっと休んでいるだけで、とくに栄養を奪われたり腸内を傷つけられたりすることもないため何の利益も損害も受けていないという関係、
コバンザメとクジラの関係においては、コバンザメの側はクジラが食べ残したエサのおこぼれにあずかることによって利益を得ているのに対して、クジラの側はそれによってとくに何の利益も損害も受けていないという関係、
コケ類と一般的な樹木の関係においては、コケ類の側は樹木の表面に取り付くことによって日照条件の良い場所を確保してより効率的に光合成を行いやすくなるといった利益を得ているのに対して、樹木の側はそれによってとくに何の利益も損害も受けていないという関係、
また、
もう一つの地衣類と呼ばれる生物は、そもそも菌類と藻類の共生体にあたるそれ自体がある種の相利的な共生関係を営んでいる生物の種族として位置づけられることになるのですが、
そうした地衣類と一般的な樹木の関係においても、前述したコケ類の場合と同様に、地衣類の側だけが樹木の表面に取り付くことによって日照条件の良い場所を確保してより効率的に光合成を行いやすくなるといった利益を得ているという関係が成立していると考えられることになるように、
上述したような二つの互いに異なる生物の種類同士の間で成立する共生関係の例においては、片利共生の関係に基づく共生生活が営まれていると考えられることになるのです。
・・・
以上のように、
こうした相利共生や片利共生といった関係性のあり方へと区分されていくことになる生物同士の共生関係は、
アリとアブラムシといった昆虫同士の関係や、コバンザメとクジラといった動物同士の関係、コケ植物と樹木といった植物同士の関係、さらには、人間と腸内細菌といった人間と細菌との関係に至るまで、
自然の生態系や日常生活の様々な場面において見いだしていくことができる生物が生きていく生活のあり方において最も一般的で基本的な関係性のあり方であると捉えることができると考えられることになります。
そして、さらに言えば、
結局、すべての生物は、地球という同じ場所に存在していて、多かれ少なかれ互いに影響を及ぼし合って生きていると考えられることになるので、
そういった意味では、
こうした地球上に存在するすべての生物は、互いにそうした広い意味における何らかの共生関係の内に結ばれている存在として捉えることができるとも考えられることになるのです。
・・・
次回記事:寄生の定義とは?外部寄生と内部寄生と細胞内寄生の違いとそれぞれに分類される寄生者となる生物の具体例
前回記事:片利共生の具体的な仕組みとは?コバンザメとクジラにおける片利共生と同じテーブルで食事をとる小人と巨人との関係
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