『風の谷のナウシカ』と「虫愛ずる姫君」の共通点とは?①漫画版のあとがきにおけるナウシカと虫愛ずる姫君の関係性の記述

以前に蟲愛づる姫君や蠱毒における虫の概念の記事もで書いたように、

平安時代後期の代表的な短編物語集である『堤中納言物語』においては、「蟲愛づる姫君」と題される話の中で、

姿形は美しい姫君なのに、虫を取り集めたり、観察したりすることが大好きで、籠の中に、奇妙な姿をした虫を入れては、その虫たちを一日中眺めてこれを愛でているために、

周りの人々から気味悪がられて、貴族の男性たちも寄り付かないようになってしまっていることをからかわれたり残念がられたりしているお姫様の話が語られているのですが、

こうした『堤中納言物語』における「蟲愛づる姫君」の姿は、

1984アニメ映画化されたことで有名な『風の谷のナウシカ』の主人公であるナウシカの姿とも、そのイメージが大きく重なる存在として捉えることができると考えられることになります。

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漫画版の『風の谷のナウシカ』のあとがき部分における「虫愛ずる姫君」の記述

そもそも、

『風の谷のナウシカ』の主人公であるナウシカと、日本の古典文学のヒロインである虫愛ずる姫君との関係性については、この物語の作者自身の手によっても、ある程度詳しく説明されていて、

例えば、

映画版の『風の谷のナウシカ』の原作にあたる漫画版の『風の谷のナウシカ』のあとがき部分においては、

この物語の作者である宮崎駿自身の言葉として、以下のような形で、この物語の主人公であるナウシカと虫愛ずる姫君との関係について語られています。

・・・

ナウシカを知るとともに、私はひとりの日本のヒロインを想い出した。…虫愛ずる姫君と呼ばれたその少女は、さる貴族の姫君なのだが、年頃になっても野原をとび歩き、芋虫が蝶に変身する姿に感動したりして、世間から変わり者あつかいにされるのである。

…私の中で、ナウシカと虫愛ずる姫君はいつしか同一人物になってしまっていた

(『風の谷のナウシカ』第一巻のあとがき部分より抜粋)

『風の谷のナウシカ』と「虫愛ずる姫君」との共通点とは?

そして、

こうした作者自身の言葉を踏まえたうえで、ナウシカ蟲愛ずる姫君の両者の間に存在する共通点について考えていくと、

ナウシカと蟲愛ずる姫君の両者は、

二人とも、一般の人々は、気味悪がって、あまり近づいたり、詳しく観察してみたりしようとは思わないような存在、

すなわち、

鳥や魚や獣、あるいは、木や草花といった普通の動植物とは異なる異形の姿をした生物である虫たちに興味を持って、それらの存在を詳しく探求しようとする強い好奇心を持った少女であり、

そうした一般の人々とは異なる一風変わった美的感覚を持っているがゆえに、周りの人々とは少し違った物の見方をして、そのために周りから孤立してしまいかねない危うさのようなものも持った人物として描かれていると考えられることになります。

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・・・

つまり、一言でいうと、

宮崎駿作の『風の谷のナウシカ』の主人公であるナウシカと、『堤中納言物語』に出てくる「蟲愛づる姫君」との間には、

両者とも、強い好奇心と、優れた観察眼を持つと同時に、一般の人々の価値観とは少し異なる美的感覚を持って生まれた少女であり、

そのような性質を持っているがゆえに、人とは違うものの見方をすることができるという強みがあるものの、そのために周りの人々から理解されずに孤立してしまう危険性もはらんでいるという強い個性を持った人物であるといった点に共通点が存在すると考えられることになるのです。

それでは、

より具体的には、『風の谷のナウシカ』の物語のなかのどのような場面において、そうした『堤中納言物語』の中に出てくる「虫愛づる姫君」との共通点を見いだすことができると考えられることになるか?ということについてですが、

それについては、また次回の記事で、改めて詳しくまとめていきたいと思います。

・・・

次回記事:『風の谷のナウシカ』と「虫愛ずる姫君」の共通点とは?②腐海の森の植物学者としての風の谷の姫君の生物学的探究

前回記事:王蟲の血が青い本当の理由とは?旧世界の軛から王蟲を解放し、青き清浄の世界を蟲たちへと明け渡す解放者としてナウシカの姿

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