キノコは植物なのか動物なのか?①日常的な意味における動物と植物の区別とキノコの分類のあり方

キノコ(茸とは、一言でいうと、

胞子から発芽した菌類が糸状の細胞列である菌糸(きんし)を形成し、そうして寄り集まった菌糸が密に集合してできた塊状の組織である子実体(しじつたい)のことを意味する日常的な言葉であり、

キノコには植物や動物の遺体を養分として成長していく種族の他に、木に取り付いて寄生あるいは共生することによって生活している種族も多いことから、木の子という意味でこうした言葉が用いられるようになっていったと考えられることになります。

そして、一般的には、

この地球上に存在するすべての生物は、大きく分けて植物か動物のいずれか一方へと分類されると考えられることになるわけですが、

それでは、

こうしたキノコと呼ばれる生物体の存在は、こうした植物と動物という二つの区分のどちらに分類されると考えられることになるのでしょうか?

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日常的な意味における動物と植物の区別とキノコの分類のあり方

まず、

動物と植物というそれぞれの言葉自体の意味について考えてみると、

例えば、

動物性器官という言葉が、運動・感覚・神経といった動物体の運動能力に関わる器官のことを意味する言葉として用いられていて、

それに対して、

植物性器官という言葉が、呼吸・消化・生殖といった運動能力に関わらずに、動物と植物の両者を含む生物体の生命の維持に関わる器官のことを意味する言葉として用いられるほか、

本来動物であるはずの人間についても、脳の機能障害などによって意思の疎通や自力での移動などができない状態にある人のことを指して植物人間という言葉が用いられることなどもあるように、

一般的に、

動物とは、運動能力を持って自由に動き回り他の生物を食べることによって栄養を摂取して生活する生物のことを意味するのに対して、

植物とは、運動能力を持たずに一定の場所に固着して生活する生物のことを意味すると考えられることになります。

つまり、

動物と植物という二つの概念の字義上の意味について考えていくと、こうした動物性器官や植物性器官、あるいは、植物人間といった言葉の用法に見られるように、

その生物体が自分の意思で自由に動き回る運動能力を持つのか持たないのか?という運動性の有無という点に、両者の概念を区別する最も大きな相違点があると考えられることになるのです。

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以上のように、

日常的な意味においては、動物と植物という二つの言葉が持つ意味の違いは、

動物は運動能力を持って自由に動き回るのに対して、植物は運動能力を持たずにずっと一定の場所に固着しているという点に、

両者の言葉が持つ意味の最も大きな違いがあると考えられることになります。

そして、

こうした日常的な意味における動物と植物という二つの言葉の定義に基づくと、

キノコは、それが運動器官を持たずに、他の動植物の遺体や、生きている木々などに取り付いて、じっとその場にとどまったまま成長していくという生活を営んでいる生物体であることからも分かるように、

そうしたキノコと呼ばれる生物体の存在は、それが運動能力を持って自由に動き回ることができるという動物の最も主要な定義に該当する生物ではない以上、少なくとも、動物には分類することはできないと考えられることになります。

つまり、

この世界に存在するすべての生物は、動物か植物かいずれか一方のグループへと分類されるべきであるという観点に立った場合、

キノコと呼ばれる生物体は、それが動物には分類することができない生物である以上、それは、消去法的に植物に分類する方がより適切な生物であると考えられることになるのです。

しかし、その一方で、

今回取り上げたような日常的な意味における動物と植物という言葉の意味においてではなく、より厳密な生物学上の定義における動物と植物というそれぞれの概念の定義のあり方に基づくと、

キノコは植物なのか動物なのか?という冒頭で述べた問いに対しては、今回取り上げたものとはまったく異なる答えが導き出されることになると考えられることになります。

・・・

次回記事:キノコは植物なのか?②三つの生物学的な定義に基づくキノコの分類のあり方

このシリーズの前回記事:種子と胞子の違いとは?両者を区別する七つの具体的な特徴、四つの外面的な特徴の違いと生殖形態における三つの相違点

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