種子と胞子の違いとは?両者を区別する七つの具体的な特徴、四つの外面的な特徴の違いと生殖形態における三つの相違点
胞子とは、シダ植物やコケ植物、藻類、菌類などにおいて形成され、次世代の個体の源となる一種の生殖細胞のことを意味する概念ですが、
その一方で、
植物において、こうした次世代の個体の誕生の源となる存在としては、胞子の他に、種子という存在も挙げられることになります。
それでは、
こうした植物における種子と胞子と呼ばれる存在には、それぞれ具体的にどのような特徴があり、両者はどのような点において異なっていると考えられることになるのでしょうか?
種子と胞子を区別する四つの外面的な特徴とは?
種子と胞子の両者を区別する具体的な特徴について挙げていくと、
例えば、まず、外見的な特徴として、
種子は、種皮と胚乳、胚軸、子葉といった多様な器官に分かれる多細胞によって構成される比較的大きくて複雑な構造をしているのに対して、
胞子は、単細胞または少数の細胞によって構成される比較的小さくて単純な構造をしている場合が多いという点が挙げられることになります。
そして、こうしたことと関連して、
一般的に、
種子植物においては、一つの花には一粒か比較的少数の種子しか形成されないのに対して、
シダ植物やコケ植物、藻類、菌類などの場合には、胞子のうなどの器官において、無数の小さな胞子が形成されたうえで、そうした多数の胞子がまとめて散布されることになると考えられることになります。
また、
種子の外側は、一般的に、雌しべの子房壁に由来する果皮や、莢(さや)、種皮といった堅い殻のような構造によって覆われていて、その内にある胚乳において、発芽後に一定期間単独で成長していくことができる栄養分なども十分に蓄えられていると考えられるのですが、
それに対して、
胞子の外側も、一般的に、厚い膜のような構造によって保護されていて、温度変化や乾燥に対して一定の耐久性を有する状態にあるとは考えられることになるのですが、種子ほどの堅い殻のような構造は持たないほか、種子の胚乳にあたるような栄養分を蓄えておく組織も存在しないと考えられることになります。
生殖形態や生活環における種子と胞子の両者の三つの相違点
そして、次に、
種子と胞子の両者の生殖形態および生活環(ライフサイクル)における違いのあり方についても考えていくと、
まず、
種子は、雌しべと雄しべの間に受粉が成立し、二つの個体の生殖細胞が一つに合わさる有性生殖によって形成されることになるのに対して、
胞子は、胞子のうや担子器などにおいてつくられた生殖細胞から、別の個体の生殖細胞を必要とせずに、そのまま胞子が形成されるという意味において、無性生殖によって形成されると捉えることができるという点に、
両者の生殖形態における相違点があると考えられることになります。
また、一般的に、
動物や植物といった生物の細胞は、同じ形をした染色体を2個ずつ対となって持っている複相(2n)と呼ばれる核相の状態にあると考えられ、
通常の場合、生殖細胞が形成される際に、減数分裂が行われることによって、花粉の中の精細胞や、胚珠の中の卵細胞といった一般的な生殖細胞は単相(n)と呼ばれる同じ形をした染色体を1個ずつしか持たない状態にあると考えられることになるのですが、
種子植物においては、こうした減数分裂によって生じた花粉の中の精細胞(n)と胚珠の中の卵細胞(n)との接合によって、複相の染色体を持った種子(2n)が形成されることになると考えられることになります。
しかし、それに対して、
シダ植物とコケ植物の胞子生殖においては、胞子のうにおける減数分裂によって生じた胞子(n)は、そうした単相の染色体の状態のまま次の世代の植物体へと成長していくことになるほか、
藻類や菌類においては、そうした単相の胞子(n)のほかに、減数分裂を経ずに、通常の体細胞分裂によって生み出された複相の胞子である栄養胞子(2n)によって増殖するケースや、
一つの細胞の内に同じ形をした染色体を一個ずつ持った二つの核が同時に存在する重相(n+n)と呼ばれる状態にある胞子が存在するケースも存在するように、
胞子の場合には、単相(n)、複相(2n)、重相(n+n)といった極めて多様な染色体の構造が存在すると考えられることになります。
そして、最後に、
こうした種子と胞子の両者を区別する最も重要な特徴としては、
種子植物においては、雌しべにおいてつくられた胚珠の中の卵細胞と、雄しべにおいてつくられた花粉の中の精細胞の両者が受粉を通じて一つに合わさることによって種子が形成されるのに対して、
シダ植物やコケ植物、藻類、菌類などの胞子生殖においては、胞子のうや担子器と呼ばれる器官においてつくられた胞子は、そのまま単独の状態で新しい植物体へと育っていくことが可能であるという点が挙げられると考えられることになります。
つまり、
種子の場合には、雌しべと雄しべという二つの互いに異なる器官に由来する二つの個体の生殖細胞の接合によって新しい個体が形成されることになるのに対して、
胞子の場合は、他の個体の生殖細胞との接合を必要とせずに、自分自身だけの単独で新しい個体を形成することが可能であるという点に、
両者の存在を区別する根本的な特徴の違いがあると考えられることになるのです。
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以上のように、
種子と胞子の両者を区別する具体的な特徴としては、
①種子は多細胞によって構成される大きくて複雑な構造を持つのに対して、胞子は単細胞または少数の細胞によって構成される小さくて単純な構造を持つ。
②種子は一つの花の内に一度に一つまたは少数しか形成されないのに対して、胞子の場合は、一度にかなり多数のまとまった数の胞子が形成されることが多い。
③種子の外側は堅い殻のような構造によって覆われているのに対して、胞子の外側も厚い膜のような構造によって覆われているが、種子ほどの耐久性は持たない。
④種子の内部には胚乳と呼ばれる栄養分を蓄える組織があるが、胞子の内部にはそうした栄養分を蓄えるための組織が存在しない。
⑤種子は有性生殖によって形成されるのに対して、胞子は別の個体の生殖細胞を必要としないという意味において無性生殖によって形成される。
⑥種子の核相は常に複相(2n)であるのに対して、胞子の核相は単相(n)、複相(2n)、重相(n+n)といった極めて多様な染色体の構造へと分かれる。
⑦種子の場合には二つの生殖細胞の接合によって新しい個体が形成されるのに対して、胞子の場合は他の個体の生殖細胞との接合を必要とせずに、自分自身だけの単独で新しい個体を形成することができる。
という全部で七つの相違点となる具体的な特徴を挙げることができると考えられることになります。
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次回記事:受精卵と胞子の違いと中世ヨーロッパの錬金術における古典的な人造人間(ホムンクルス)の製造方法
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