あらゆる宗教に共通する神の普遍的な性質とは何か?「永遠性」すなわち「不死なる存在」としての神の定義

前回書いたように、三段論法と呼ばれる演繹的推論のあり方がその効用を発揮する場面としては、主に、学問的あるいは形而上学的な議論の場面が想定されることになりますが、

今回からは、前回取り上げた生物学などの一般的な学問における三段論法を用いた推論のあり方の具体例に続いて、

神や魂といった極めて理念的で思弁的な存在を取り扱う形而上学的な議論における

三段論法を用いた推論の具体例について考えていきたいと思います。

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あらゆる宗教に共通する神の普遍的な性質とは何か?

三段論法を用いた推論においては、形式的に可能な256通りの三段論法の格式のうちから選ばれた24通りの妥当な三段論法の形式のうちのいずれかの格式を用いることにより、

推論の形式のみによって、論理展開の妥当性が保証され、前提が真であれば結論も真であることが必然的に決定づけられることになるので、

こうした三段論法を用いた推論が有意義なものとなるためには、予め、前提となる概念についての厳密な定義と吟味をおこなっていくことが重要となります。

前回取り上げた「生物」や「ウイルス」といった生物学的な概念の場合とは異なり、「神」や「魂」といった形而上学的な概念については、そうした概念を専門的に考察する哲学者や宗教家といった人々の間でも共通する認識や理解が必ずしも定まっておらず

こうした形而上学的な概念は、その概念自体を具体的に定義していくこと自体が難しいと考えられることになるのですが、

それでも、例えば、

という概念の定義、つまり、一般的に神の属性として捉えられることが多いと考えられる様々な要素や性質について列挙していくとすると、

善性完全性絶対性無限性永遠性唯一性創造主

といった性質が挙げられることになると考えられることになります。

そして、人々が神に対して抱いているこうした一般的なイメージのうち、

まず、創造主唯一性といった概念は、キリスト教などの一神教における神に対しては適用できるものの、

ギリシア神話や神道などの多神教における神々には適用することができない性質であると考えられることになるので、

これらの概念は、あらゆる宗教に広く共通する「神」という概念の一般的な定義からは排除することができる要素であると考えられることになります。

また、こうしたギリシア神話における神々のことを念頭に置くと、ギリシア神話に出てくる神々は、必ずしも全員が全知全能(すなわち、知力と能力における完全性と無限性)というわけではなく、

クロノスとゼウスの戦いのように、神々同士で争っては、一方の神が負けてしまったり、本来の地位から追い落とされてしまったりすることもあるので、

完全性絶対性無限性といった概念も、あらゆる神が有する普遍的な性質からは排除されることになると考えられることになります。

さらに、善なる神という一見すると神についてのイメージの筆頭に挙げられそうな性質についても、ギリシア神話のなかでは、相手を騙して権力を奪い去るような神々の姿も描かれているほか、

ゾロアスター教などの善悪二元論を根本原理とする宗教においては、善の対極にある悪を司る神として、悪神アーリマンの存在が示されているように、

善性という概念についても、それは、あらゆる宗教に共通する神の普遍的な性質とは認めることができないと考えられることになるのです。

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「永遠性」すなわち「不死なる存在」としての神の定義

それでは、いったいどのような要素があらゆる宗教に共通する神の普遍的な性質として認めることができると考えられるのか?ということについてですが、

上記の善性完全性絶対性無限性永遠性唯一性創造主という一般的な神のイメージとして取り上げることができると考えられる神の七つの属性のうち、

「創造主」と「唯一性」「完全性」と「絶対性」および「無限性」、そして、「善性」という六つの性質については、ギリシア神話神道ゾロアスター教における神々の存在のあり方を例に挙げることによって、そうした性質を有さない神の例を示すことができると考えられるので、

上記の神の七つの属性のうちでは、ただ一つ、永遠性という性質のみが、あらゆる宗教におけるすべての神に共通する性質として認めることができると考えられることになります。

例えば、

ギリシア神話においては、かつて古代の宇宙を統べていたクロノスを筆頭とする古代の神々である巨神族ティターン(Titan、タイタン)は、

ゼウスを筆頭とするオリンポス十二神によってその支配を打ち破られ、滅ぼされることになりますが、

こうして新しい神々によって滅ぼされた古代の神々も、彼らが神である以上、その存在自体が消滅してしまったわけではなく

古代の神々であるクロノスたちは、ゼウスの手によって奈落の底の暗黒世界であるタルタロスへと幽閉されることによって、その力を封印されていると説明されることになるのです。

・・・

以上のように、キリスト教ギリシア神話、さらには、ゾロアスター教神道といったあらゆる宗教に広く共通する「神」という概念の一般的な定義についての吟味を進めていくと、最終的に、

不滅性や永遠性、すなわち、不死なる存在であるという性質こそが、あらゆる宗教に共通すると考えられる神の普遍的な性質として捉えることができると考えられることになります。

そして、詳しくは次回改めて考察していくように、

こうした「不死なる存在」としての神の定義からは、三段論法を用いることによって、「偶像は神ではない」あるいは「人間は神ではない」といった形而上学的な命題の論証へと結びつける議論を展開していくことが可能となると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:三段論法に基づく「偶像は神ではない」という命題の形而上学的な論証、妥当な三段論法の形式を用いた推論の具体例②

前回記事:三段論法を用いることの具体的な効用と妥当な三段論法の形式を用いた推論の具体例①、ウイルスが無生物であることの論証

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