DNAウイルスの代表的な種類とは?アデノウイルスやヘルペスウイルスが引き起こす症状とウイルスの特徴、DNAウイルスとRNAウイルス④
DNAウイルスとRNAウイルスの違いは、
遺伝子を構成するDNAとRNAの遺伝子の構造の違いと、そうした構造上の違いに基づく遺伝子の安定性とウイルスが変異するスピードの速さの違いにあると考えられることになるのですが、
それでは、こうした構造上と性質上の違いのあるDNAウイルスとRNAウイルスには、それぞれどのような種類のウイルスが分類されることになるのでしょうか?
今回は、まずはDNAウイルスについて、このウイルスの種族には具体的にどのような種類のウイルスが分類されるのか?ということについて考えていきたいと思います。
DNAウイルスに分類される代表的なウイルスとは?
DNAウイルスに分類される代表的なウイルスとしては、その筆頭としてまずは、天然痘ウイルスの名が挙げられることになります。
天然痘ウイルスは、非常に強い感染力と20%から50%程度にものぼる致死率の高さなどから古来から20世紀に至るまで長きにわたって人類を苦しめ続けてきたウイルスですが、
このシリーズの初回でも取り上げたように、天然痘ウイルスは、DNAウイルスとしての構造上の安定性を逆用して、人類が自然界から完全に撲滅することに成功した最初のウイルスでもあります。
そして、
人間に比較的関係の深い代表的なDNAウイルスの種類としては、
天然痘ウイルスの他に、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、B型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス(HPV)、サイトメガロウイルスなどのウイルスの名が挙げられることになります。
アデノウイルスとヘルペスウイルスが引き起こす症状とウイルスの特徴
アデノウイルスとは、いわゆるのど風邪の原因となるウイルスであり、
扁桃腺に感染してのどの強い痛みや高熱を引き起こす咽頭結膜熱(プール熱)や、流行性角結膜炎を引き起こすウイルスとしても知られています。
次のヘルペスウイルスは、非常に多くの下位分類が存在するウイルスであり、細かく分けると80種類ものウイルスがヘルペスウイルスに分類されることになりますが、
その中でも、人間に関りが深いヘルペスウイルスとしては、水痘・帯状疱疹ウイルスや単純ヘルペスウイルスの名が挙げられることになります。
水痘・帯状疱疹ウイルスとは、その名の通り、水痘いわゆる水ぼうそう(水疱瘡)や帯状疱疹の原因となるウイルスですが、
小児期に感染して水ぼうそうを引き起こしたヘルペスウイルスは、水ぼうそうが治癒した後も全身を巡る感覚神経などの神経節の内部に潜伏し、
宿主である人間の免疫力が低下した際に、胸や腹、背中や手足、首や顔などの感覚神経に沿って痛みの強い水ぶくれや発疹が帯状に広がっていく帯状疱疹を引き起こすことになるのです。
一方、単純ヘルペスウイルスの方は、帯状疱疹と同様に、宿主となる人間の免疫力が低下した時に症状を引き起こす、いわゆる日和見感染症に分類されるウイルスであり、一般的には、成人のうちおよそ7割がこのウイルスを保有していると考えられています。
通常の健康的な日常生活が営まれている際に、この種のウイルスが悪さを起こすことはあまりないのですが、
風邪をひいた後などに免疫力が低下した際には活動を開始し、唇の角などに吹き出物のような水疱をつくる「風邪のはな(風邪の華)」や「熱のはな(熱の華)」と呼ばれる症状の原因となるウイルスでもあります。
ヒトパピローマウイルス(HPV)の特徴とワクチンの副反応の問題
そして、
次のヒトパピローマウイルス(HPV)は、子宮頸癌の原因となるウイルスとして知られているウイルスであり、
女性の子宮頸癌に対する予防医学の観点から、日本では2013年からHPVワクチンの定期接種が女子中学生などを対象として定められるようになりました。
しかし、
その後のワクチン接種後の副反応を巡った議論の錯綜により、積極的なワクチン接種の勧奨は一時的に差し控えられるようになるなど、社会的な問題となったウイルスでもあります。
サイトメガロウイルスの特徴とエイズ患者への日和見感染
最後のサイトメガロウイルスは、前述の日和見感染症に分類されるウイルスであり、日本では成人の6割から9割もの人が保有しているウイルスなのですが、
そのほとんどが不顕性感染(病気の症状が全く現れない感染形態)であり、ほとんどの人が感染してもウイルスによる影響を一切受けないまま一生を終えることになるので、一般的には、馴染みが薄いウイルスでもあります。
しかし、
がん治療で抗がん剤などの化学治療を受けた際や、自己免疫疾患に対するステロイド治療、他のウイルスによる感染などで、免疫力が著しく低下した際には、肺炎や髄膜炎、腸炎などの重篤な疾患を引き起こしてしまうウイルスでもあり、
特に、AIDS(エイズ、後天性免疫不全症候群)患者における主要な死因となるサイトメガロウイルス肺炎を引き起こすことで有名なウイルスともなっています。
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以上のように、
DNAウイルスに分類される代表的なウイルスの種類としては、
天然痘ウイルスの他に、のど風邪の原因となるアデノウイルスや、水ほうそうなどの原因となるヘルペスウイルス、ウイルス性肝炎を引き起こすB型肝炎ウイルス、
さらには、子宮頸癌の原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)や、日和見感染症として免疫力低下時に肺炎などを引き起こすサイトメガロウイルスといったウイルスの名が挙げられることになるのです。
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次回記事:人類史上最悪のパンデミックを引き起こしたウイルスとは?RNAウイルスの代表的な種類①、DNAウイルスとRNAウイルス⑤
このシリーズの前回記事:HIVウイルスの変異スピードが速い理由と多剤併用療法(HAART療法)の仕組み、DNAウイルスとRNAウイルス③
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